第10回防災まちづくり大賞(平成17年度)

【消防科学総合センター理事長賞】地域ぐるみの防災行動力の向上を目的とした防災訓練等の実施

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天沼地区町会連合会
(東京都杉並区)

事例の概要

■経緯

 天沼地区は、荻窪駅北側に位置した道路狭隘な住宅密集地域であり、火災発生時の延焼拡大危険度が高い区域である(第6回東京都の地震時における地域別延焼危険度測定結果では9段階中ランク6~8)。このため、天沼地区の8町会が一体となり地域ぐるみで災害に立ち向かうという意識が非常に強く、毎月1回定例的に8町会合同の町会長会議を開催し、地域防災の諸問題、防災訓練計画、各種行事等について審議している。
 また、同会議には、荻窪消防署員(天沼出張所長)及び杉並区の防災担当者等が同席し、意見交換する等して、地域と行政が連携を密にし防火防災を推進している。

■内容

  • 1.防災訓練
    • (1)当会は、地域の防災行動力向上を目指し、昭和52年から秋の火災予防運動に併せ年1回、平成5年からは火災予防運動に併せ春・秋の年2回、荻窪消防署、荻窪消防団、杉並区役所の協力を得て、天沼8町会合同の防災訓練を行っている。場所は、地区内の私立高校、区立小学校で、参加者は常に300名を超えている。
    • (2)訓練内容
      ①地域に根ざした自助、共助体制確立のため、市民消火隊による可搬ポンプ取扱訓練、震災対策用救助資器材取扱訓練、仮設トイレ設営訓練、炊き出し訓練等、震災を想定し実戦的な訓練を行っている。
      ②体験型訓練として初期消火訓練、応急救護訓練、煙体験、起震車体験を実施している。
      ③消防ふれあいコーナーを設け、レスキュー隊の演技や救助器具の取扱、はしご車の体験搭乗、消防演習の見学等により、消防と地域の一体感を醸成している。
      ④住宅用火災警報器、家具転倒防止器具等の展示やAED取扱訓練など、タイムリーな防災器具の普及促進等に努めている。
      ⑤防災知識の普及啓発のため、写真パネル展示、防災講話、ビデオ放映を実施した。
  • 2.行政機関への提言等
    • (1)阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、いざという時に助け合える地域の絆を強めておくことが大切であると考え、そのためには、地域の防災ネットワークの核となる組織が必要であることを杉並区当局に訴え続け、平成9年に地域の様々な団体や組織による防災のための連絡協議機関である学校防災連絡会(杉並区内公立小学校44校)を設立させた。(平成17年からは拡大・改編し震災救援所運営連絡会となっている。)
    • (2)杉並区内への救命救急病院の誘致や医療情報システムの構築について、区当局に要望等を重ねたことが、平成17年1月、杉並区急病医療情報センターを設立させることとなった。
    • (3)震災時の避難場所となる震災救援所の運営連絡会の設立については、本会が中心となって準備を進め、杉並区内においていち早く立ち上げ、他のモデルとなった。
  • 3.震災関係資料の作成
    • (1)「大震災を想定した我々の心構え」について
       阪神・淡路大震災の教訓をもとに、災害発生前に諸問題を討議し、災害発生時に混乱が生じないようにするため独自に作成した。(平成14年8月25日)
    • (2)「大震災時における避難者数と収容能力について」について
       震災救援所(区立の中小学校)に収容できる能力と避難者の割合等について個々に算出し、行政が示したものと比較検討した。(平成15年8月31日)

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初期消火訓練

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レスキュー隊とのふれあいコーナー

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心肺蘇生法

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消防演習見学

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レスキュー隊とのふれあいコーナー

苦労した点

  • 1.防災訓練は、年々工夫をして行い参加者も多いものの、参加する年齢層は高齢者の割合が高く、先に発生した千葉県北西部地震を踏まえ、首都直下型地震の発生が現実的なものであることを訴え、特に若い方の訓練への参加を呼びかけていきたい。
  • 2.行政機関への要望・提案は、実現までにかなりの紆余曲折があったが、辛抱強く折衝した結果、区当局を動かすことができた。

特徴

  • 1.天沼地区8町会合同の防災訓練は27年間と歴史が長く、地域に根ざした行事として定着している。杉並区内でも町会合同で継続して訓練を行っているのは天沼地区のみである。
  • 2.毎月行う定例町会長会議は、防災についての意見交換のみならず、行政機関への提言や情報提供の場として、また、相互理解と親睦を深める意味で非常に有意義な会議である。
  • 3.当連合会区域は、住民の防火防災に対する意識が非常に高い地域である。(1世帯あたりの出火率(=3年間の建物火災件数/世帯数)は荻窪消防署管内全体の0.14%に比較し、0.11%と低い。)

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 益本圭太郎((財)消防科学総合センター常務理事))

 天沼地区の調査に際し、地域内8町会の会長が集合され、各会長の防災活動に関する熱いお話を伺うことができた。連合会では、地域の生活に根ざした協議がされ、必要な施策は行政への提言、そして実現したものもある。この連帯、地域を思う情熱が活動の源であると強く感じた。
 天沼地区の防災活動の特色の第一は、毎月開催している町会長会議に、荻窪消防署天沼出張所長と杉並区防災担当者が出席し、防災に関する情報を共有するため、町内会との意見交換を行っていることである。
 第二には、昭和52年から防災訓練を、8町会合同で続けていることである。合同訓練では、内容も単なる消火訓練に止まらず、仮設トイレの設営訓練、AEDの取扱訓練など特色のある実践的な訓練を行うほか、多くの参加を得るために消防署とタイアップして、レスキュー隊の演技やはしご車の体験搭乗などアトラクションにも工夫を凝らしている。また、合同訓練の他、各町会でも独自に防災訓練を実施している。
 第三に、地震災害に備え、町会連合会自ら「大地震を想定した我々の心構え」を作成し、地域内の避難所に予測される避難人数が収容できるのかを分析している。特に、避難所の運営に当たり、町会長は地域内の避難所の責任者となるほか、行政、学校、町会の三者からなる「震災救援所運営連絡会」の設立を杉並区に呼びかけ、区全体での連絡会体制が平成17年度にできあがっている。また、避難所ではペットの扱いなど予想される細かな事項に対しても配慮され、手作りの避難所運営が可能な状況となっている。
 天沼地区の手作りできめ細かな防災活動が、高齢化社会の中でも今後とも継続され、杉並区、そして全国に広まることを期待する。

団体概要

 天沼地区町会連合会は、町会相互の親睦、連絡を図り、共同の福祉増進に寄与することを目的に、杉並区町会連合会(昭和34年11月発足)17地区の1つとして昭和41年に発足し、天沼地区の8町会(天沼一丁目町会、天沼二丁目町会、天沼二丁目三よし会、天沼尚和会、天沼三丁目あかるい町会、天沼三丁目西町会、本天沼東町会、本天沼西町会、合計14,501世帯27,778人)で構成されている。

実施期間

昭和52年~