第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【消防庁長官賞】1000年の山古志

消防庁長官賞(一般部門)
1000年の山古志

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中越大震災山古志復興記録映画制作基金
(新潟県長岡市)

事例の概要

■経緯

 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震により、旧山古志村(現長岡市)は壊滅的な被害を受け、全村避難という事態に追い込まれ村の再建が危ぶまれた。
 そうした中、16年の歳月をかけて人の手だけで掘りぬいた長さ900mもの中山隧道貫通の村民の苦闘を描いた「掘るまいか」を施策した映画チームは、地震で破壊された山古志の惨状と人々の苦悩に接し、この苦境から山古志の人々が復活し、美しい里山の自然を取り戻しながら再生していくプロセスを記録すべく立ち上がった。
 そして、「1000年の山古志」と命名された映画を製作すべく「1000年の山古志」製作委員会が設立され、映画の資金集めのための基金「中越大震災復興記録映画制作基金」が設立された。
 映画は4年の製作期間を経て、平成21年5月に完成し、10月から首都圏劇場で公開されて大好評を博している。
 この映画を通じて、市民の防災意識の更なる醸成や普及啓発はもとより、災害列島で生きてきた日本人全ての防災意識の向上を図り、防災まちづくりの一助となるよう、上映活動の全国展開への活動を精力的に続けている。

■内容

  • 1. 地震発生後の行政、住民たちの動向を映像記録として撮影し、4年間延べ150時間に及ぶ映像記録を残した。
  • 2. 国、自治体、関係機関等の前代未聞の大工事を撮影した。
  • 3. 道路や住宅などの物理的な施設の復旧だけでなく、一番大切な人々の心の復興を記録した。大災害に襲われた人々の心の葛藤や苦悩そして希望を、地震では日本で初めての全村避難から帰村までの4年間にわたる時間の経過の中で捉えた。
  • 4. 道路や住宅などの施設だけでなく、中山間地での生活の重要なファクターである米や野菜、錦鯉などの生物相手の生業が立ち行かなくなった中、破壊した生業基盤がどのように復活していくかを克明に映像で記録し、地震災害のもう一つの側面をあぶり出した。

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雪の中での撮影

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墓参り

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墓参り

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墓参り

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錦鯉の池で

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再建なった神社前で

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さいの神

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新築祈願

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再開の闘牛場で

苦労した点

  • 1. 当初の帰村目標が、2年続きの豪雪やそれに伴う工事の遅れ等で大幅に修正され、それによって撮影計画も大幅な変更を余儀なくされ、完成時期が大きくずれこんだ。
  • 2. 被災者の心の問題を扱うためデリケートな撮影となったことや、プライバシー等の問題もあり、慎重かつ丁寧な撮影活動が必要であった。
  • 3. 予算の無い中、4年に及ぶ長期間の撮影で幾度も資金ショートという経済的危機に見舞われたが、村民、長岡市民、新潟県民のみならず、全国からの支援、さらには長岡市、新潟県をはじめとする関係機関の多大な支援、協力が寄せられたことにより映画はようやく完成をみた。

特徴

  • 1. 中山間地の地震災害の特徴が克明に描かれている。
  • 2. 中山間地の地震からの復興には、単にハード面の復旧・復興だけでなく、人と人、人と大地、人と生き物を含めたトータルな相互依存関係のなかで、ハート(心)の復旧・復興が何よりも重要であることを描いている。(中越大震災において、被災者の心のケアは重要な課題となり、県や市の地域防災計画上にも新たに記載された)
  • 3. 平常時の地域コミュニティの醸成こそが、災害時の声がけや助け合いにも繋がる。この映画に込められた「心と心のふれあい」を全市民に伝えることで、地域力がますます向上すると確信している。
  • 4. 単に新潟県中越地方の地震災害復興という意味を越えて、国土の70%を占める我が国の中山間地の新生・再生の方向を示しており、中山間地を抱える地方都市住民に対してだけでなく、大都市市民に対しても中山間地を守ることの重要性を強く訴えている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 吉村 秀實(ジャーナリスト))

 2004年10月23日、新潟県中越地方を襲った「新潟県中越地震」によって、美しい錦鯉や棚田、伝統行事の牛の角突きなどで知られる山古志村(現・長岡市)は壊滅的な被害を受けた。全村にわたって崩壊した小さな山里、全てを失った人々、人生の岐路、ふるさと再建に立ち上がる村人たちの想いと不屈の努力。震災後、4年に及ぶ復興の記録を描いたのがこの映画である。
 先祖から受け継ぐ棚田に水を引くために、急な斜面を鉈で切り開きながら水源から300mものホースをのばそうとする上田照枝さん(67歳)。震災の時、家の柱の下敷きになって死んでいった牛たちに涙した畜産業の関正史さん一家は、地震に強い新しい牛舎を建て、そこで初めての子牛の誕生を迎える。父親が錦鯉づくりの名人だった石原正博さんは、震災後に会社づとめを辞めて父親の後を継ぐが、分からないことばかりで、優秀な錦鯉を中々育てることができない。しかし、1000年の歴史を持つ村の人たちは災害に遭遇してもそう簡単にはへこたれない。そういう村人たちの心意気がひしひしと伝わってくる映画だ。
 2009年7月、ロードショーに先駆けて首都圏では初の試写会が川崎市内で開かれた。エンディングタイトルで拍手が起き、上映終了後に再び拍手喝采という映画には、そうそう出会えるものではない。「2時間という上映時間を感じさせない作品でした。山古志のように地域の人たちがみんな家族のような関係であるからこそ復興できたのではないかと思います」「一人ではなく、村全体で支え合い、先祖が作ってきた村を守ろうとする熱意が強く伝わって来ました」「自分の心の片隅にも山古志と共振する部分が若干でも残っているのを感じ、ほっとしました。心にしみる作品です」などが、映画を見た多くの人たちの感想である。映画づくりに携わった人たちは、災害列島・日本の防災意識のさらなる向上を図り、防災まちづくりの一助にするため、全国的に上映活動を展開して行きたい意向だが、日本だけでなく、数々の災害に見舞われてきた開発途上国の人たちにもぜひ見て欲しい映画である。

団体概要

構成人員
有志10人

 委員会は、「掘るまいか」上映推進委員に旧山古志村村民からなる。顧問・相談役には旧山古志村村長(現国会委員)、元新潟県職員などが就任している。

実施期間

 平成16年11月~