第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

「救命医療情報ポスト」の作成~震災・救急対策として

優良事例(一般部門)
「救命医療情報ポスト」の作成~震災・救急対策として

札幌市認可地縁団体 札幌里塚東部町内会
(北海道札幌市)

事例の内容

■経緯

 札幌里塚東部町内会は、特に災害弱者である高齢者に対して緊急時の対策に力を注いでいる。
 本町内会では、独自で緊急通報装置(ペンダント・専用電話)を希望する高齢者世帯に設置し、通報先を町内会役員にして、受けた役員が消防への通報を代理で行うシステムを導入している。
 平成21年度、更なる対策として大規模災害発生時の安否確認のための情報収集と併せて、高齢者などへの救急隊要請時の対応をスムーズに行うためのシステムとして「救命医療情報ポスト」の導入について消防機関と協議を進め、このたび、町内会独自の予算で作成し全312世帯に配布した。

■内容

  • 1. 「救命医療情報ポスト」は、プラスティック製の円筒容器で、中には、居住者全員の氏名及び生年月日などを記載した「救命情報安心家族カード」と個人のかかりつけ病院や既往症などの医療情報と緊急連絡先などを記載した「安心カード」を入れ、冷蔵庫に保管するものである。
  • 2. 大規模災害発生時に、倒壊建物の居住者を特定するためのデータとして活用する。
  • 3. 通常時は、緊急通報装置との連動により、救急隊を要請した場合、傷病者が自ら自分の医療情報を伝えられない状態の時に救急隊が活用する。
  • 4. 「救命医療情報ポスト」の情報は、個人情報であることから、取扱い及び閲覧等について、町内会独自の要綱を定めて厳正に取り扱うこととした。
  • 5. 各戸に配布を開始する時には、テレビや新聞の取材を受けた。また、報道された後には、他の町内会や各種団体から導入に向けた問い合わせが多数寄せられた。
  • 6. 実施開始日は9月1日の防災の日とし、また、全世帯における災害弱者情報を地域で共有可能となり、地域の防災意識を高くした。

救命医療情報ポスト

情報ポストを知らせるシール

シールの貼り付け状況(靴箱)

シールの貼り付け状況(冷蔵庫)

苦労した点

  • 1. 町内会全世帯へ配布するため、町内会の役員会等を数多く開催し、実施のための問題点や解決策など検討を重ね、住民説明を行い、理解を得ることができた。
     また、大きな問題であった個人情報の取扱いに関して、慎重に検討し、町内会独自で要綱を定めた。
  • 2. 救急隊へ出動した現場に「救命医療情報ポスト」の存在をどのように知らせるかについて、消防機関と協議を重ね、玄関付近及び冷蔵庫に独自のデザインのシールを貼付することとした。
  • 3. 救命情報安心カードの記載にあたって、高齢者で記載が困難な方については、民生児童委員が補助する協力体制を構築した。

特徴

  • 1. 救命医療情報ポストに入れている個人情報の取扱いについて、町内会独自で要綱を定めたことによって、取扱う人間が限定され安心である。
  • 2. 全戸配布であることから、大規模災害時には自主防災組織の活動や消防機関の救助活動時の基となる情報として期待できる。
  • 3. 各戸で情報を保管しているため、情報に変更が生じた場合には、迅速に変更ができリアルタイムな情報として期待できる。
  • 4. 地域一丸となった防災意識の向上に取組んだ結果、防火意識の向上にもつながり、町内会全世帯での住宅用火災警報器の設置率が90%となった。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部))

 川西地区は香川県丸亀市の中心街の南に位置し、土器川に沿う6平方キロ足らずの細長い地区である。ここでの組織的な防災活動は平成14年にはじまる。活動の発展はめざましく、今回2度目の受賞である。前回の訪問で発展する予感はあったが、これほど短期間にすばらしい取り組みへと進化したことは驚異的である。会員の努力に敬意を表したい。会では活動を「人づくり」、「物づくり」、「絆づくり」に分類し、それぞれの年間活動計画を策定、実行し、問題点をチェックして翌年に繋がる改善を行うPDCAサイクルを回して活動を展開している。このような体系的な取り組みはこれまでに例がなく、高く評価される。また、会の活動で得られた成果とノウハウをもつ会員を組織して「防災伝道師」として広く県の内外へ派遣し、出前講座を開いて情報発信していることもすばらしい取り組みである。その他にも、①救出用防災備品庫の設置を「火の見櫓の下」や「用水路の中」といった日常生活空間の中にありながらも生活の障害にならず、メンテナンスも容易な場所に配置し、建物は廃材を利用して木工技術をもつ会員と家族の協力で建設し経費の削減も図っている。②子供の防災教育に積極的に関与し、活動を経験した子供と共に他の学校に出かけ活動する。いわゆる大人と子供の伝道師ともいえる活動を行っている。④子供に人命救護の指導だけでなく、土嚢の作り方、ロープを用いた救助訓練などこの地区ならではの取り組みも行っている。これらは他の団体にも参考になるユニークな取り組みである。このように、この会では常にチェックを行い、新たな項目を組み込んで合理的、計画的に活動しており、その活動内容には他の模範となるものが多い。今回は2回目の訪問であったが、岩崎正朔会長のもとで会員一人ひとりが自分の特技を生かして元気で活動しているという印象を今回も強く受けた。今後は3回目の受賞に向けて活動にさらに磨きをかけ、その発展した活動状況を大賞選定委員会に示してほしいものである。

団体概要

 札幌里塚東部町内会は、昭和57年10月10日に設立し、平成5年4月1日認可地縁団体として登録した町内会である。

町内会の範囲
札幌市清田区里塚2条6丁目、3条6丁目、3条7丁目
全世帯数
312世帯(平成21年9月30日現在)

実施期間

 平成21年9月1日~