第16回防災まちづくり大賞(平成23年度)

【総務大臣賞】みんなで守る歴史の町並み-防災まちづくりの実践-

総務大臣賞(一般部門)
みんなで守る歴史の町並み-防災まちづくりの実践-

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熊川区自主防災会
(福井県若狭町)

事例の概要

■内容

 熊川は、江戸時代の宿場町として発展した歴史的町並みが残る集落である。平成8年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、民家の修理や電線地中化などの景観整備が進み、観光客が増えてきた。一方で高齢化が進み、空き家が増加してきた。地域の高齢者からは不安の声が出始めた。そこで、歴史の町並みと暮らしを災害から守るため、平成21年3月に町と協働で「伝建地区若狭町の防災まちづくり計画」を策定した。計画策定には、専門家、行政機関、地元住民で策定委員会を組織した。通常、町がつくる防災計画は、行政がつくって住民に周知するというものが多いが、熊川には歴史や文化を活かして暮らすためのまちづくりの長い歴史がある。このまちづくりの活動の一環として計画策定に取組んでこそ、実効性のある計画になるのではないかと考えた。策定期間中に住民ワークショップを5回開催し、町歩きによる課題の発見、防災マップの作成、解決策の検討、優先順位の検討を行い、最後は住民が行う実行計画(住民アクションプラン)を創った。その内容を町の計画に取り込んで防災まちづくり計画とした。住民と行政が手を携えて、これまでのまちづくりの過程で育まれた人的資源を最大限に活かした防災計画を策定することを目指したのである。
 自分たちで創った防災まちづくり計画。その思いを持って次々と事業を進めた。まずシンポジウム、パンフレット、報告書によって区民に計画を周知した。次に高齢者向けの初期消火訓練、京都清水地区と祇園地区へ防災視察研修、町並み消火器収納箱の製作を行った。平成21年7月には「熊川区自主防災会」を設立。25歳以上の区民は、防災、避難誘導、情報伝達などのいずれかの班に所属することになった。平成22年3月には、防火用水の役割を果す前川の土砂上げ作業を実施する。8月には初めて熊川宿自主防災デーを開催。高齢者でも使用可能な小型消防ポンプを使った組対抗プチ操法大会を行う。そして、平成23年4月には、1年間の検討期間を経て集落全体に近隣火災通報システムを整備。国等の補助金をいただきながらの整備だったが、空き家を含め、ほぼ100%の導入率となった。計画ができて2年で、区民全体で大事業が成し遂げられたのも、計画の段階でこれまでのまちづくりの手法、資源を防災活動に活かした結果だと考えている。5月、初めて防災まちづくりに関する視察を京都から受け入れた。

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自主防災デーでの操法大会

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ワークショップ(防災マップづくり)

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防災視察(京都)

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防災まちづくりシンポジウムの様子

苦労した点

 近隣火災通報システムの整備は、全体で取組まないと効果がないので、各組ごと(1組10軒程度)の説明会を行うことになった。木造民家が近接して建ち並ぶ町並みなので、この事業の必要性は理解していただいたが、空き家への設置補助のこと、近隣通報先組み合わせのこと、義務化された箇所以外にも設置を求めたことなどについて、質問や意見があった。難しい問題については自主防災会の役員会で何度も議論した。約1ヶ月をかけ区内に888個の無線連動式警報器を設置し整備を完了した。

特徴

 熊川宿のまちづくりの歴史は長い。ここに楽しく快適に暮らし続けてこそ町並み保存があると考えているので、まちづくりの活動も多彩である。歴史の好きな人は語り部、踊りの好きな人は踊りの会、書くのが好きな人は新聞づくり、手先の器用な人は工芸品づくりなど、それぞれ自分の趣味や特技を活かしてまちづくりに参画し、お互いを尊重しあっている。これが「みんながよくなる」を目指した熊川のまちづくりのあり方である。今回「防災」がテーマのひとつに加わった。構えず自然体で、楽しく防災まちづくりを進めていくことが、長い目で見て災害に強いまちづくりにつながると考えている。まちづくりの中で防災に取組むことが熊川宿の大きな特徴である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男((株)マヌ都市建築研究所所長))

 若狭鯖街道で知られる宿場町・熊川宿は一度訪れてみたいまちだった。JR米原から敦賀と列車を乗り継ぎ小浜線上中駅から車で約10分、熊川宿の集落は残雪の残る山間にひっそりと佇んでいた。風雪に耐えた商家の街並みは、流通基地として隆盛を誇った往時の面影を伝えている。観光で訪れる人も少なくなく、暮らしの場、交流の場として活気が感じられた。若狭町でもこの文化財集落の保存と振興に力を入れている様子だった。平成8年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されて16年になるが、街並み保存運動が始まったのは昭和56年というから、住民による組織的なまちづくり活動は30年以上となる。今回の受賞の対象となった防災計画の策定とその計画に基づいた事業活動は昭和50年代以来のまちづくり活動の延長線上にある。先人たちの町に対する思いや志が次世代に引き継がれている。近隣火災通報システムの全戸導入や流水の防火用水への活用など新しい試みが随所にみられた。「暮らしを守る」、「文化を守る」というキャッチフレーズの基に多士済々の住民たちの防災に対する本格的な取り組みへの意気込みが感じられた。まちはつくり続けるものである。高齢化、後継者問題、マンパワー不足など、まちづくりの課題は多いようだが、国民の文化遺産でもある街並みをこれからもしっかり守り続けていってほしいと思う。

団体概要

構成人員
熊川区民全員 111世帯 282名

 熊川区の組織として平成21年7月設立。会長は区長、副会長は副区長、まちづくり委員会会長が務める。25歳以上の区民は、防災班、救出救護班、避難誘導班、情報連絡班、給食給水班のいずれかに所属する。

実施期間

 平成20年~平成23年