第10回防災まちづくり大賞(平成17年度)

【総務大臣賞】学生災害救援ボランティア隊

【総務大臣賞】学生災害救援ボランティア隊

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特定非営利活動法人
国際ボランティア学生協会
(東京都世田谷区)

事例の概要

■経緯

 学生の持つパワーや感性を社会のために生かしたい。国際ボランティア学生協会(通称:IVUSAイビューサ)は1992年ラオス小学校建設隊、北海道南西沖地震災害救援活動隊に参加した学生達を中心に結成。国際協力・環境保護・社会福祉・災害救援の4つの部門を中心に活動を行う。災害救援活動としては前述の北海道南西沖地震災害救援隊以降、平成17年夏の宮崎県、杉並区水害への救援ボランティア隊派遣まで4ヶ国27地域39回、延べ参加者人数1,089人の救援活動を行った。

■内容

  • 1.平常時(研修・訓練活動)
     年に数回行われる研修合宿にて、コンセンサスゲームや想定訓練、避難所運営や集団行動のロールプレイングを行っている。また、救命救急士の卒業生に、簡単な応急救命法や止血法・三角巾の使い方など、日常生活にも活かせるスキルの定着を図っている。現在は任意で上級救命講習を受講させているが、将来的には資格取得までの体系的講習プログラムを開発中。
  • 2.災害発生時(情報収集・派遣是非の判断)
     学生幹部・災害救援部を中心に本部が立ち上がり、会員専用WEB掲示板を中心に情報交換が行われる。また、被災地域出身者は地元地縁者からのヒアリングを行う。気象庁・消防庁等の公共情報と、被災地域の行政機関から収集した情報、要望を鑑み、派遣是非を検討する。
  • 3.救援ボランティア隊派遣決定(隊員募集・装備調達)
     派遣決定状況に合わせ、会員内から参加者を募集。現地へは大型バスやレンタカー、公共交通機関での移動。トラックやワゴン車で、スコップや一輪車など災害状況に応じた装備も搬送。被災地の状況によっては、炊き出し道具や食料、テントといった自活装備も準備。派遣期間中は本部に常駐者を配置し、種々の情報伝達業務に従事。なお、本部での情報収集に限界がある場合は、48時間以内に先遣隊を出発させる。
  • 4.救援ボランティア活動(被災規模、状況により対応は変わるが概ね以下のとおり)  事前のオリエンテーションは現地への移動中に行う。主に災害の発生状況から実際の作業形態まで多岐に渡り、過去行った同種の災害救援ボランティア活動で起きた事例説明、リスク認識の徹底と指揮・連絡体制の徹底。何よりも、限られた期間内で行うボランティア活動であること、被災者の自立へのお手伝いしかできないと言うことをしっかり認識させ、現地に入る。
     受入機関(行政、災対、ボラセン等)の指揮下に入って作業に従事することを原則としている。

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床下のヘドロを掻き出す(平成16年新潟豪雨)

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木造家屋の倒壊(新潟県中越地震)

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濁流に飲み込まれた様子(平成16年台風23号(兵庫県)

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家屋が流され傾いた様子(平成16年台風23号(兵庫県))

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被災して使えなくなった家具(平成17年台風14号(宮崎県))

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帰島を迎える島民達(平成17年三宅島)

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復興活動の様子(スマトラ沖地震)

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降灰の除去(平成17年三宅島)

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災害時応急救護訓練

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津波の被害(スマトラ沖地震)

苦労した点

  • ・ 毎年学生が入れ替わるため、現場での判断、規模の拡大と会員増加に伴う危機管理意識の低下への対応が難しい。指揮を行う学生リーダーも育成し続けなければならない。
  • ・ 派遣活動資金が参加費100%の形態から、国内の災害救援活動に限り、「(財)車輌競技公益資金記念財団」の支援を受けられるようになった。
  • ・ 自立のお手伝いという一時的な支援しかできない現実と、継続派遣の要請との間で行う撤収時期の判断。
  • ・ 救援ボランティアの活動形態に幅を持つことができた。(例:マンパワーの必要性だけでなく、ボラセンの運営補助や炊き出し部隊の派遣)

特徴

  • 1.自分たちが被災者になる。そのときに学生時代に行った災害救援ボランティア活動の経験を生かせる地域のリーダーを、一人でも多く育成するために継続してきた。
  • 2.活動に対して、スキルも資格もない学生にも出来ることがある。お手伝いさせて下さいという意識を徹底することを継続してきた。
  • 3.活動後・復興後も現地の方と学生同士が文通やメール等、連絡し会うケースが多い。こうした、被災者救援者ではなく、一人の学生と住民としての出会いであり、関係となる活動を継続してきた。
  • 4.活動に参加したことで、防災意識の向上、災害に対する情報を共有する意識が醸成される。
  • 5.年に数回、活動報告会を開催。参加者以外の会員へのフィードバック、一般市民への周知を促している。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 東尾 正((財)日本消防設備安全センター専務理事))

 3月1日世田谷区の国士舘大学柴田記念会館において、代表者の下村誠先生、理事の藤本行和さん(東京消防庁勤務)ほか、会を運営している方々にインタビューした。また、当日は、ちょうど次の日からインドの住宅建設支援に赴く学生ボランティア20名ほどが、同会館で災害時の応急救護のための訓練をしているところも見学させていただいた。(写真参照)
 このNPOは創設以来15年、当初は首都圏の大学生を中心に組織されたが、その後関西支部も創立され、急速に質量両面で充実強化されてきている。機関誌「WE DO MORE」やニュースレターを定期的に発行するなど、広報面でも、財政面でも、しっかりしている。訓練では、救急救命士のリーダーのもと、安全管理スタッフをきっちり配置するなど、プロ級のレベルを目指す姿に感銘を覚えた。
 被災地支援では、大学生など若い力の投入が不可欠だ。学生防災支援ボランティアとしては、本格的な唯一の組織である当NPOの活動を「防災まちづくり大賞」受賞を通じ、広く国民一般に周知することは、大変有意義であると感じた。

団体概要

 2002年5月に、東京都よりNPO法人(特定非営利活動法人)として認証される。現在までに、約500以上の事業を実施し、2005年10月現在、首都圏を中心に参加大学51校(法政、フェリス女学院、駒沢、国士舘、青山学院、二松学舎、早稲田、昭和薬科、濁協、東京農業、東京、慶應義塾、東京家政等)、学生会員488名。専従事務局員3名、非常勤事務局員8名。

実施期間

 平成5年~