第8回防災まちづくり大賞(平成15年度)

【消防科学総合センター理事長賞】誰もが立ち上げられる対策本部~防災マニュアルBOXの作成~

【消防科学総合センター理事長賞】誰もが立ち上げられる対策本部~防災マニュアルBOXの作成~

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桜台4番街自主防災会 (千葉県白井市)

事例の概要

■経緯

 白井市は都心より30キロの距離にあり、東部は印西市と八千代市、南部は船橋市、西部は鎌ヶ谷市、北部は沼南町の4市1町に接している。昭和54年に北総開発鉄道が開通し、その沿線にあるニュータウン地区に入居が始まると人口は一気に増加し、平成9年には5万人を突破、平成13年4月には「白井市」が誕生した。この白井市の東側に北総線千葉ニュータウン中央駅があり、この駅からの徒歩圏内に桜台4番街がある。  低層・中層・高層住宅が混在し、居住者は比較的若い年代で構成され、多くの人が都心へ通勤をしている。平成6年に入居が始まり、もうすぐ10年が経過しようとしている。
 このような団地で平成9年に自主防災会が結成された。結成当初からの最大の目的は、「都心に通勤している人が多く、この団地でいざ地震が発生したらどうなるのだろう。特定の人がいなければ動けない防災組織では意味をなさない。災害が発生したときに、誰もが必要に応じて立ち上げられる防災会を作っていこう!」というものである。
 素人の集まりであるため、手探り状況でのスローペースな進展であったが、段階的に防災会を形成してきた。その甲斐あって、平成15年に「防災マニュアルBOX」が完成し、住民に周知することができた。

■内容

  • 1.防災マニュアルBOX

     災害が発生したときに、防災倉庫からこのBOXを持ち出して中身を出すと、災害対策本部が立ち上げられる。
  • 2.防災マニュアルBOXの中身

     防災マニュアル2002年度版、貼出シート、懐中電灯、ラジオ、腕章、軍手、筆記用具、ホイッスル
  • 3.防災マニュアル2002年度版

     大規模地震発生時にこの「防災マニュアル」を読めば、誰もが助け合いに参加できるような内容を記載している。防災マニュアルの構成は次のようになっている。

    • (1)初動マニュアル(発生から12時間以内を想定して)

       災害対策本部設置マニュアル、人員点呼マニュアル、被害把握マニュアル、避難誘導マニュアル、救出マニュアル
    • (2)住民行動基準

       マグネットシート貼出基準、住民避難基準
  • 4.貼出シート

     必要事項が模造紙に書かれたシート。内容は、本部編成版、119番要領版、避難勧告版、防災マップ等々がある。
  • 5.防災マニュアルBOXの使い方と効果
    • (1)防災マニュアルBOXは、防災倉庫の一番目につきやすい所に置かれている。大規模地震が発生したときに、防災倉庫を開け、目の前の防災マニュアルBOXを集会場の前に持ち出す。
    • (2)防災マニュアルBOXを開け、中から「防災マニュアル2002年度版」を取り出し、ページをめくり、書かれていることを順番に行っていけば地震発生から12時間はなんとか切り抜けられるようになっている。
    • (3)時間の経過とともに、都心から戻った人たちが合流し、より強力な共助体制が築きあげられる仕組みになっている。

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防災マニュアルBOXの内部

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貼出シート

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貼出シートの張り出し

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避難経路図

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防災マニュアルBOXの外観

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防災マニュアルBOXの中身

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防災マニュアルBOXの配置場所

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防災マニュアルBOXの搬出

苦労した点

 本防災会は、平成15年現在で結成6年とまだまだかけだしの組織である。そのため、全てが一からの積み重ねであった。住民はもちろん、役員にとっても、防災に対する意識・やる気が低下しないように、常に刺激を与え続けなければいけないことが一番の悩みである。
 また、防災訓練や防災イベント、帰宅困難を想定したサバイバルウォークなどの定期的なイベントをこなしながら、防災マニュアルBOXを作成した。役員の仕事もあり、集中的に作業を行うことができずに、ゆっくりとしたペースでしか作業を進められなかった。

特徴

 地震はいつ起こるかわからない。本防災会では、「消火活動や救助活動の要となる大人の男性がいないときに、大規模な地震が発生したらどうなるのだろうか?」と考えた。その結果、都心等へ働きに行っている人達が自力で自宅に戻ってこられるまでの間だけでも、有効に機能できる組織作りを目指してきた。その結果作られたのが、「防災マニュアルBOX」である。大規模地震が発生したときに、たまたま自宅にいた人たちが集まって、災害対策本部を立ち上げて共助組織を立ち上げることができる。空白を作らない自主防災対策を目指した。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 重川希志依(富士常葉大学環境防災学部教授))

 自主防災会の今年度の目標は、楽しいイベントを開催することと、防災まちづくり大賞に応募することであった。そして見事に防災まちづくり大賞を受賞し、これから盛大な祝勝会を行って、さらに活動をアピールしていきたいということである。
 当該地域では夏祭りや餅つき大会などのイベントを通じ、これまで積極的に住民相互の交流を図ってきた。当初は自治会の中に防災担当があったが、その後住宅の所有者で構成する管理組合と自治会の双方でワーキンググループをつくり、1~2年をかけて管理組合と自治会で年間10万円ずつの予算を支出し、自主防災活動を続けている。平成10年3月に居住者の年齢や通勤距離などの属性アンケート調査を実施し、それをもとに自主防災組織の運営のあり方を決めていった。
 活動の目標は、①誰もが立ち上げられる対策本部を目指したマニュアル作りを行うこと、②頑張りすぎず生き抜き程度にやれる活動にする、の二点である。遠距離通勤者が多いため、災害発生時にいる人たちだけで災害対策本部を立ち上げることができるように、具体的な行動手順を示したマニュアルは非常にユニークなものである。このマニュアル作成にあたっては、防衛庁のOBや現役の消防職員、建築の専門家など、様々な専門性を持つメンバーが知恵を出し合っているために、極めて質の高い内容となっている。またとかく防災というと堅苦しく思われ敬遠されがちであるが、ミーティングは月に1回2時間と時間を限定し、頑張りすぎて息切れがしないように工夫されている。自主防災会の会長は自治会長、副会長は管理組合の副会長が勤めることになっているが、その他の役員は自由意志で参加でき、いつでも誰でもが入りやすくお互いに好きなことの言い合える雰囲気づくりに努めていることも、活動の活性化に大きく貢献している。今後は地元の消防団との交流を深め、従来から居住する地元コミュニティとも協力しあえる関係を築いていくことを目指している。

団体概要

 桜台4番街:448世帯

実施期間

 平成9年~