第8回防災まちづくり大賞(平成15年度)

【総務大臣賞】災害ボランティアリーダー3千名の養成と地域での活動

【総務大臣賞】災害ボランティアリーダー3千名の養成と地域での活動

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災害救援ボランティア推進委員会 (東京都)

事例の概要

■経緯

 阪神・淡路大震災(平成7年1月17日)の教訓から、災害ボランティアのリーダーの重要性が明らかとなった。そこで、都市部で想定される大規模災害に備えるために、災害ボランティアのリーダーを養成する災害救援ボランティア推進委員会を平成7年7月17日に結成した。
 災害救援ボランティアの教育の内容については、自治省消防庁が平成7年10月に発表した「災害救援ボランティアの研修カリキュラム」を参考に、「わが身わが命は自分で守る」の基本理念とボランティア精神にもとづき、独自のカリキュラムを作成し、講座修了生をセーフティリーダーという名称で認定することにした。
 平成11年3月からは、上級講座も開始した。

■教育訓練

 平成7年12月に第1回の講座を東京で開始してから、平成15年8月までに70回の講座(東京で29回、神奈川で24回、千葉で11回、埼玉で4回、茨城、長野で1回)を行い、3,161名の認定者を世に送り出した。
 居住地別認定者では、神奈川県1,132名、東京都792名、千葉県530名、埼玉県305名、茨城県39名、その他関東、甲信越、東海、東北を中心に1道1府19県となっている。特に、神奈川県では平成14年秋に1,000名を達成し、山間部を除きすべての市町村にセーフティリーダーが居住するところまでになった。また、首都圏の主要な地域にはセーフティリーダーが居住している。
 会費制によるボランテイア登録制度には、認定者の86%にあたる2,705名が参加し、教育訓練活動を行うとともに、身近な行政単位毎にセーフティリーダーのネットワークを自発的な意思にもとづいて結成している。
 教育訓練は、本部事務局がよびかけたもので平成15年8月までに70回開催している。9月1日の合同防災訓練のような大規模な防災訓練をはじめ、ライフライン(電力、発電所、電気、ガス、水道、電話)・防災関係機関(自衛隊、警察、消防、防災センター)についての勉強見学会や専門家を招いての講演会、シンポジウムを開催してきた。

■具体的活動

 地域に根ざした活動は、自主防災会で、自治会で、大学で、企業で、学校でと実に多彩なものとなっている。これらの活動がNHK特集番組で「中高年は災害ボランティアをめざす」(平成15年9月1日放送)という題で取り上げられ、注目を集めた。
 被災地の支援活動では、日本海の重油流出回収活動、鳥取や広島での大地震、北海道有珠山や三宅島での噴火災害、名古屋市での水害、最近では平成15年夏の九州豪雨や宮城県北部地震でのボランティア活動にセーフティリーダーが自発的な意思で参加活動している。

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救出救助訓練

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電車での訓練

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自転車部隊訓練

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応急手当訓練

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小学校での訓練

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初期消火訓練

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避難所運営訓練

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避難所運営訓練

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応急手当訓練

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ロープワーク訓練

苦労した点

  • 1.講座の募集、参加者の確保
     当初、防災やボランティア講座を有料(実費分)で、しかも3日間実施するとなると、人が集まらないと心配されたが、募集の仕方を工夫したことで毎回なんとか参加者を確保してきたこと。
  • 2.講座を運営するための資金、人材確保
     議座を開催し、事務局を維持する資金、人材を会員企業を増やすことで維持してきたこと。
  • 3.講座修了者の登録と継続的な教育訓練
     3日間の講座だけでは不十分な点を、会費制による登録制度により、引き続き教育訓練する機会をつくり、知識・技能の向上に努めたこと。
  • 4.地域に根ざした地域ネットワークづくり
     災害ボランティアの日常的な地域活動をつくるために、身近な行政単位毎に災害セーフティネットを編成し、地域活動を行ったこと。

特徴

  • 1.阪神・淡路大震災の教訓となった災害ボランティアの日常的、継続的養成のしくみを民間団体として築いたこと。
  • 2.教育訓練を修了した人に登録制度をつくり、引き続き教育訓練の機会をつくるとともに、地域毎にネットワークをつくり、地域防災に協力するしくみを築いたこと。
  • 3.今まで地域防災に関心が薄いとされた会社員、企業OB、大学生等を災害ボランティアという個人参加の形で、地域防災のために組織し、今までにない活動をつくったこと。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野公男(東北芸術工科大学デザイン工学部教授))

 最近、首都圏各地の総合防災訓練などで、オレンジのユニホームを着た若者たちの救助訓練の姿がみられ話題となっている。この人たちは、SL(セイフティリーダー)と言われる災害救援ボランティアのグループである。東京圏で大きな地震が起こったら、そのときおそらく、このオレンジユニホームの人々の活動する姿があちこちで見られるに違いない。このSLの養成機関、災害救援ボランティア推進委員会の活動のユニークな点は、何よりもその活動の理念が軽やかで、肩肘を張ったところがない点である。すなわち、まず①災害より「我が身我が命を守ること」をモットーとし、自らが被災者とならないことを基本としていること、②救援活動は個人やグループの自発性に基づくこと、③草の根のネットワークをつくり、町内会、自主防災組織、企業、大学、社会福祉協議会などの自分の居住地の中で役割を演ずること、また、④物見遊山的に他地域に災害救援に行くことよりも、自分の居住地の足固めすることが大事と言う観点から、活動範囲が首都圏に限定されていること、などである。このような理念、センスが人々の共感を呼び、いろいろな年齢、階層の受講者を集め、活動を長続きさせている理由であろう。既存の地域活動を補完する新しい相互扶助形態の発生、21世紀の成熟した市民社会における新しい災害文化の開花といえないだろうか。すでに3000人以上のSLが世に送り出されていると言う。このSLがアメーバーのように、地域社会のいろいろなポジションに定着するようになったとき、地域の防災力は飛躍的に向上しているのではないだろうか。

団体概要

 阪神・淡路大震災を教訓に、平成7年7月、災害救援ボランティアのリーダーを養成し、地域ネットワークを作ることを主な目的に、民間企業、防災専門家が中心になって設立。会長は石原信雄(地方自治研究機構理事長)、協力会員は百数社、登録会員は2,705名(H15.8月現在)。
ホームページhttp://www.saigai.or.jp

実施期間

 平成7年~