第15回防災まちづくり大賞(平成22年度)

【総務大臣賞】被災後の「災害にも強い地域づくり」とその伝承~鳥取県西部地震の災害復興活動経験から~

総務大臣賞(一般部門)
被災後の「災害にも強い地域づくり」とその伝承 ~鳥取県西部地震の災害復興活動経験から~

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日野ボランティア・ネットワーク(ひのぼらねっと)
(鳥取県日野町)

事例の概要

■経緯

 平成12年鳥取県西部地震で大きな被害を受けた日野町は、過疎高齢化が進んだ中山間地だった。日野町内外から災害ボランティアセンターに集まり復旧・復興活動に携わったボランティアは、(1)高齢者を中心とした被災者に継続的なケアが必要なこと、(2)支援を受けることへの遠慮や見知らぬボランティアへの警戒が復旧・復興の妨げともなったことから、誰もが気軽に助け・助けられる地域にしていくことが大切、(3)地域内でのつながりを強め、地域の外との交流を大切にして地域力を高めることが必要、といった問題意識を高めた。
 地震から半年後、日野町内外のボランティアで日野ボランティア・ネットワークを結成。日野町で被災後の地域づくり活動に取り組むとともに、長期にわたるケアや復興活動の経験を研修・講演等で県内外に伝え、また他地域で大規模な災害が発生した際には、全国的なネットワークにより、経験をいかした支援活動を行っている。

■内容

  • 1. 平成14年4月より毎月第2土曜日、誕生日を迎える70歳以上だけで暮らす高齢者を、手作りのプレゼントを持って訪問(対象約600名)。誕生祝いと共に生活状況や困りごとを聞き、要援護者や生活課題の把握をして課題解決につなげる「高齢者誕生月プレゼント企画」を継続、平成22年7月に訪問は100回を数えた。
  • 2. 高齢者からは「いつも気にかけてくれてありがとう」と見守られている実感を持つ言葉をいただいている。訪問で把握した生活課題は、ボランティア活動で解決したり必要な機関につないだりしており、最近は福祉・医療等関係者等のボランティア参加も図り、訪問後のケアも強化しつつある。こうした積み重ねによる住民との緩やかな信頼感により、平成18年豪雪時には、支援ニーズの把握、除雪支援活動がスムーズに行えた。
  • 3. 誕生プレゼントは毎月町内の異なる団体や個人に協力を得て、様々な人や団体とのつながり作りを果たしている。また協力者にとっては、プレゼントが高齢者に喜ばれることにより活動が社会化している面もある。
  • 4. 訪問に参加するボランティアは、町内の子どもから高齢者まで多世代、町外の高校生や地震以降継続している方、県外から活動を経験してみたい方など様々で、多様な人と関わり学び合う交流機会になっている。特に弱者と括られることも多い子ども、高齢者、障がい者、不登校の若者などもボランティアとし参加することで、「支援者としての自分」を経験し、学ぶ機会となっている。
  • 5. 平成12年鳥取県西部地震の被災資料の収集、語り部の育成、活動記録の冊子発行などにより、震災の記録や記憶の保存及び伝承に取り組む。平成18年10月から鳥取県の委託により「鳥取県西部地震展示交流センター」を運営し、資料展示、視察研修受入れや講師派遣等によって県内外に伝承する取り組みをしている。
  • 6. 大規模災害が発生した際、現地でボランティア活動をしたり、災害ボランティアセンター運営スタッフを派遣(社会福祉協議会・共同募金会・企業・NPO等による「災害ボランティア活動支援プロジェクト会議」派遣など)し、支援活動を実施。それらの経験を活かし、県内外で開催される研修等での講師や委員などを務めて活動の指導及び助言等を行うとともに、全国の社会福祉協議会やNPOなどとネットワークを形成している。

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わが家の非常持ち出し袋

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防災学習(米子市ひまわりの会)

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展示交流センター視察研修

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避誕生企画訪問の結果報告

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誕生企画プレゼント

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展示交流センター写真展

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展示交流センター
「平成12年鳥取県西部地震から9年フォーラム」

苦労した点

  • 1. 旧来からの結びつきが強い地縁型コミュニティから、地縁を基本としながら外部との交流も含めたひらかれたコミュニティへ転換するために尽力し、子どもの参加を促すなど世代間交流の促進に努めた。
  • 2. 訪問活動は、民生児童委員さんの協力で対象者を把握しているが、住民票に依らず生活実態をベースとしているため、状況把握に苦労した。また資金の安定的な確保に苦労した(9年間のうち7年間は鳥取県共同募金会から赤い羽根募金の配分が資金源)。
  • 3. 高齢化が進み、平成12年鳥取県西部地震の被災資料の収集、語り部となる人材掘り起こしや被災したものなどの収集に苦労した。

特徴

  • 1. 被災の教訓を踏まえて、地域の子どもたちと高齢者宅を訪問して見守り活動等に取り組み、信頼関係の構築及び要援護者の把握や生活課題の解決を行い、地域全体を活気づけるとともに、高齢者をはじめとする地域住民の安心の向上に貢献している。
  • 2. 高齢者のケア、ボランティア活動の推進、諸団体の連携などの活動をリンク。特に、弱者と括られることも多い子ども、高齢者、障がい者、不登校の若者などもボランティアとして参加し、支援者と受援者という関係を超えた「支え支えられる」地域づくりをしている。
  • 3. 大規模災害が発生した際、現地にスタッフ等を派遣し、支援活動を実施。それらの経験を活かし、県内外で開催される研修等での講師を務めるなど、県内外の防災体制の向上及び防災意識の高揚に貢献している。
  • 4. 日常の地域活動をベースに据えつつ災害時支援活動を行い、災害時の経験をいかして日常の地域活動や啓発活動を行う、この相互をいかした活動が最大の特徴である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

 日野町は鳥取県の西南部の中山間地に位置し、岡山県と境を接する人口約3,800名の過疎と高齢化が進んだ町である。そこを平成12年10月6日に震度6強、マグニチュード7.3の地震が襲い、町内の全所帯が全壊、半壊、または一部損壊するという大災害を受けた。復旧活動は各地から救援に訪れた多くのボランティアの協力もあり進められたが、これまで経験したことのない事態であり復興に向けた活動には苦労も多かったという。町内外から集まったボランティアは活動の中で、地域の高齢者が様々な問題を抱えていることを知り、暮らしを継続するためには住民全体で高齢者を見守り、精神的な面も含めた生活課題を解決することが必要であることを強く認識した。そのためにさまざまな活動をスタートさせたが、その中でもユニークな活動が町内に70歳以上だけで暮らす約600名の高齢者への誕生日プレゼントの開始である。持参するプレゼントも赤飯、桜餅などの食べ物から組み木細工やクリスマスリースなど季節感のある多彩なものを町内の諸団体や個人が集まり手作りで用意している。プレゼントはボランティアの人と小学生、中学生など子供達が班を作って届け、それには毎月30名以上が参加している。平成14年4月から開始したこの活動は平成22年7月で9年目を迎え、100回を超えた。人々の根気強い対応と優しさで、高齢者は「私を見ていてくれる人がいる」という安心感をもつようになり、今ではボランテイアの訪問を快く受け入れ、困りごとを話すようになったという。この活動は、高齢者がますます増加するこれからの時代において、他地域でも取り組むことのできる「地域の絆を深める」模範的な活動である。
 また、平成18年からは日野ボランティアネットワークが鳥取県の委託で「鳥取県西部地震展示交流センター」運営委託を受け、地震の資料の常時展示、研修者への対応を行っているが、活動はそれにとどまらず被災地に出かけての支援活動や各地で震災後の経験報告と現在の活動状況報告などを積極的に行っている。被害実態とその後の復興活動の詳細を「もし、中山間地で大地震が起こったら」という報告書にまとめている。これは災害実態のその後の経験を風化させないばかりでなく、将来、他地域で災害が発生した時にもすぐに役立つ重要な情報源としても大切な指導書になろう。
 日野ボランティアネットワークの活動は、当初の災害復旧活動を契機に、災いから多くのことを学び、「ゆるやかなつながり」で地域内にとどまらず、広範囲での幅広い「きずな」を構築した素晴らしい取り組みである。優しい人々の集まりである日野ボランティアネットワークの活動を高く評価し、ますますの発展を期待したい。

団体概要

日野ボランティア・ネットワーク(ひのぼらねっと)
 平成12年鳥取県西部地震をきっかけに結成。日野町を拠点とした被災後の地域づくり活動と、被災・復興活動経験をいかした活動(日常の啓発や災害時の支援)が活動の二本柱。平成18年10月より、鳥取県から委託を受け、「鳥取県西部地震展示交流センター」を運営。
構成人員
40名(日野町内外)
<鳥取県日野郡日野町>
人口
3,851名
世帯
1,503戸(平成22年8月現在)
高齢化率
40%(平成21年4月現在)

実施期間

 平成13年4月~