第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【消防科学総合センター理事長賞】東海豪雨を契機に発足、平成20年8月末豪雨で実践活動をするなど、区民とともにますます成長を続ける「名古屋きたボラ」

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
東海豪雨を契機に発足、平成20年8月末豪雨で実践活動をするなど、区民とともにますます成長を続ける「名古屋きたボラ」

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名古屋きた災害ボランティアネットワーク
(愛知県名古屋市)

事例の概要

■経緯

 名古屋市は、昭和34年9月の伊勢湾台風、平成12年9月の東海豪雨を経験し、平成14年4月には東海地震の「地震防災対策強化地域」の指定を受ける等、地震・水害に対する市民の危機感は非常に高いと言える。
 特に平成17年の国勢調査によれば、北区は市内16区中65歳以上が同居する高齢者世帯が24,606世帯と市内トップであり、そのうち高齢者の単身世帯も7,553名(市内の9.5%)とトップとなっている。また名古屋城が構築された時代から河川、用水路、軟弱な地盤に古い木造家屋が密集し、狭い路地が多いと言う地域特性を持っている。
 また床上・床下の浸水被害については、平成3年9月の台風18号、平成6年9月の秋雨前線豪雨、平成12年の東海豪雨及び平成20年8月末豪雨とたびたび被害を受けており、区内19小学校区すべてで毎年自主防災会の訓練を実施する等、防災に対する住民意識は非常に高く、住民のコミュニティ形成が進んでいる地区と言える。
 このような中、東海豪雨を契機に区内15名の有志が愛知県・名古屋市のボランティア養成講座を修了し、平成16年6月22日に「名古屋きた災害ボランティアネットワーク」(以下「きたボラ」と略す。)を結成し、平時の活動を続ける中、平成20年8月末豪雨において初めて実践活動を経験した。

■内容

  • 1. 東海豪雨を契機に結成した「きたボラ」は、平成17年6月18日に名古屋市と、地域防災計画に基づく市、区が設置する災害ボランティアセンターの運営協力及び平常時の防災活動に資するための「災害時における一般ボランティアの受入れ活動に関する協定書」を締結した。
  • 2. 結成以降、平時は区民の防災意識の啓発のため、毎年町歩き、防災講座、PR広報活動、各種防災訓練等に参加して地道な活動を続け、現在は32名までになっている。
     平成20年度の活動については、総会(臨時総会を含む。)2回、定例会10回、役員会11回、企画会19回、連絡会15回をはじめとして、町歩き、防災講座PR広報活動、実災害でのボランティア活動、区民まつり参加、研修会の開催や講習会受講等の実績がある。
  • 3. 際立った活動としては、平成20年8月末豪雨・水害において、全体の被害状況が把握できない中、翌朝から北区柳原地区の被災地域の一軒一軒に丁寧に声を掛けるローラー作戦を実施し、高齢者世帯、一人暮らしを中心に片付け清掃奉仕等を行う等、初めて実践的な災害ボランティア活動を9日間14名で実践した。
  • 4. 平成20年8月末豪雨災害の実践を経験以降、その活動の反省点を含め、10月の区民まつりでは、防災コーナーの運営、防災展示、防災紙芝居の実施、家具の固定・レイアウトの紹介等を実施。11月には、聴覚障害者への防災講座としてDIG、防災頭巾の作成等を実施した。
  • 5. 平成21年度に入ってからは、北区柳原商店街の子育て支援施設において防災訓練を実施、また各地域での防災講座では、①地域防災講座(家具転倒防止等)、②公開講座(A講座:いざと言う時我が家は、まちは、B防災運動会:走らないで)、③防災講座(液状化)、④防災講座(DIG)を実施している。
  • 6. 平時の活動として、行政側から区全体の訓練である北区総合水防訓練(5月)および北区総合防災訓練(9月)への参加の誘いを受け、土のう作りを経験するとともに、①車椅子、視覚障害者の避難誘導訓練、②布担架による救助搬送訓練、③ボランティアセンター設置運営訓練を実施している。

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聴覚障害者対象講座(DIG)

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水防訓練

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ボランティアセンター運営訓練

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避難誘導訓練(車椅子の方)

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防災講座-液状化の説明

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避難誘導訓練(視覚障がい者)

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浸水により家財を搬出(平成20年8月末豪雨)

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泥のかき出し(平成20年8月末豪雨)

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浸水により畳を搬出(平成20年8月末豪雨)

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床下の補修(平成20年8月末豪雨)

苦労した点

  • 1. 日頃から、行政との連絡がうまくいくよう、講座などにも情報交換を常に持つように心掛け、いざボランティアセンターを立ち上げる際、スムーズに行えるよう準備をしている。
  • 2. 名古屋市を襲った平成20年8月末豪雨では、北区内で初めて被災者宅を訪れ活動したが、マニュアルにない事が多数あった。しかし、会員皆の知恵と経験、努力で活動を終えることができ、被災者から大いに感謝された。
  • 3. 聴覚障害者団体とのマニュアル作りから、次(今後)への課題探しとして、DIGと防災頭巾作りを行い、手話通訳の方の参加・協力を得て、参加者に大変喜ばれた。
  • 4. 歴史ある商店街の防災訓練では、子育て支援活動を行うにあたり、施設運営者、利用者、商店街、地域委員の方々に、どのように関わっていただけるかが心配であったが、事後、報告ポスターを掲示していただき、周知していただいた。

特徴

  • 1. 平成20年度においては、地域の防災訓練等には積極的に参加し、町歩き、防災講座、各種訓練等を実施して地域住民との連携を密にし、地域事情により明るくなるなど、その活動は年間60回にも及んだ。また定例会、役員会等の会合57回を含めると、年間の活動は約120回と実に3日に一度は何らかの活動をしてボランティアの輪をますます広げている。
  • 2. 平成20年8月末豪雨災害の実践を経験後、約3月後の11月29日に、被災者宅を再訪してアンケート調査を実施、その結果を踏まえて会員相互で話し合い、今後の活動の教訓を得た。
  • 3. 災害時の要援護者対策として、障害者団体との接点を持つように心掛け、コミュニケーションを通じて各々の障害に合わせた手作りの防災啓発講座を実施している。
  • 4. 名古屋市の災害ボランティアセンターは、区役所総務課が設置、区社会福祉協議会及び「きたボラ」が運営・活動することになっている。そのため、警察署、消防署等とも連絡・情報交換を行い、区挙げての防災訓練・水防訓練に参加している。また各小学校区で実施する自主防災訓練にも積極的に参加しており、広く区民にその存在をアピールでき、また区民から期待されている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 室崎 益輝(関西学院大学総合政策学部教授))

 名古屋きたボランティアネットワーク(以下「きたボラ」)が高く評価される点は、継続性、多様性、福祉性、手作り性といったキーワードで要約できる。
 継続性というのは、イベントや会合などの活動が年間120回という数字に示されるように、ボランティア活動を日常生活の一部に取りこんで持続的に展開していることである。多様性というのは、非常時の救援活動から平常時の予防活動まで、極めて多彩な活動を展開しているということである。日常時では、講座や訓練はもとより、街並みの探検、家具の転倒防止、防災頭巾の作成など、思いついたことをすべて行っている。
 福祉性というのは、高齢者や障害者の目線にたった活動を積極的に行っていることである。車椅子利用者や視覚障害者の避難誘導訓練に取り組んでいる。最後の手作り性というのが、「きたボラ」を最も特徴づけるポイントである。ユニホームから始まって液状化の学習装置に至るまですべて手作りである。手作りの装備ゆえに訓練や学習が身近で親しみのもてるものになっている。
 以上より、誰もが参加でき、誰もができる地域密着型あるいは日常活動型の防災ボランティアの手本となるべき、先駆性のある事例と評価したい。

団体概要

構成人員
会員32名

 本会は、災害が発生した時、被災地住民の速やかな自立を支援し、また災害救援に携わるボランティア団体等の各種団体と互いに協力し、被害者の救援・復興支援を行政機関等と連携を取りながら行う。
 また平時は、区民の防災意識の啓発・向上に努めることを目的としており、会員自ら日々研鑽・努力している。

実施期間

 平成16年6月~