第12回防災まちづくり大賞(平成19年度)

【消防科学総合センター理事長賞】「かた昼消防団」の活動

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
「かた昼消防団」の活動

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大分市消防団賀来分団・大分市立賀来小中学校(大分県大分市)

事例の概要

 賀来(かく)地区は、大分市中心市街地から南西に5.4kmの大分川中流域に位置し、周辺に賀来駅や大分大学医学部があり、大分市のベットタウンとして急速に発展している人口約9,600人の地域である。
 かた昼消防団は、青少年の防災教育の実践、普及のため中学生を対象として訓練・防火パレード等の消防団活動を経験させることにより地域防災の必要性を理解してもらうことを目的として、平成12年11月から自治会、中学校、消防団が連携して発足した。『かた昼』とは、大分弁で半日のことで、地元の賀来中学校(19年4月より賀来小中学校に改称)の生徒を自治会長が半日(かた昼)消防団員に任命している。
 具体的な取組として、防災活動にあっては、年2回の火災予防週間中の防火広報や、規律訓練、消防団員と合同の中継放水訓練を行っている。平成19年6月には、市の主催する水防訓練に参加して土のう積工法を体験した。また防災活動のみならず、毎年2月は消防団員と、5月には自治会と合同で河川敷の清掃活動も行っている。こういった活動実績を評価され、平成19年2月19日、市長室にて法被、帽子(60着)の貸与式が行われた。
 発足から7年、かた昼消防団も男子生徒24名から男女生徒59名に増員するとともに、第1期生が地元消防団に入団するといったような嬉しいニュースも飛び込んできている。
 今後も、子供達が楽しみながら、消防団や郷土愛護に関心を持ってもらえるよう継続して活動していく予定である。

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法被・帽子貸与式

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放水訓練の様子

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河川清掃活動

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水防訓練への参加

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法被・帽子貸与式

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救急救命訓練の様子

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放水訓練に挑戦

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土のう積工法を体験

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かた昼消防団、いざ出陣

苦労した点

  • ・ 発足当初、生徒が訓練や行事に参加してくれるのだろうか、団の活動を理解してくれるのだろうかと不安であった。
  • ・ 訓練に参加させる際、怪我をしないよう団員が付き添いで配慮している。

特徴

  • ・ 地域社会の中で生活しているということを自覚できるうえ、社会生活を営むうえでの規範やルールを学ぶことができる。
  • ・ 普段の生活ではできないような、救急法の講習や、放水訓練、防火パトロール等が経験できる。
  • ・ 消防団活動の難しさ、大変さが理解できる。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

 この取組を行っている大分市立賀来小中学校の「かた昼消防団」は、青少年の防災教育の実践を目的とし、経験を通して地域防災の意識高揚を目指して平成12年に発足した。「かた昼」とは大分の方言で半日を言い、午前8時から13時までの半日の団員である。生徒に無理をさせずに、体験を通して防災意識を植え付けるユニークな発想がある。団員は7,8年生(一般の中学1,2年生)62名である。活動は2月と11月の火災予防週間中に地元消防団員の指導を受けて、男子生徒は放水訓練、女子生徒は消防車に分乗してマイクで防災を呼びかけ広報活動にあたる。活動当日は、団員との挨拶、訓練を通して、作業の手順を学ぶ。8班の編成で、女子生徒も含めた班長はまとめ役。班長は大声で指示を出し、その指示に従って団員が一斉に行動する。学校教育で少なくなった集団活動を体得する機会にもなっている。いい加減にすると怪我をするので消防団員から叱られる。親が叱らなくなった現在、これも貴重な経験であろう。消防団の運営に学校側は深くは関与せず、消防団員と生徒の主体性に任せている。この活動を通して消防団員と生徒との連帯感、信頼感が醸成され、町内で出会うとお互いに声をかける間柄になっているという。班長8人に面会し、「かた昼消防団」と染め抜いた法被と帽子を身につけてもらった。なかなかりりしい。体験した感想を聞くと、8台の消防車に分乗し、マイクで防災を呼びかけた女子生徒は、人前でも話ができるようになったとうれしそうに話し、男子の団員は放水の体験を熱っぽく語ってくれた。また、このすばらしい取組の結果は別の形で成果を出している。団員経験者2名が地元の消防団に入団し、親と子が消防活動に参加している事例もあるという。このような実際の体験を通した取組は、昼間、活動が制限される地元の消防団に代わっての活動もできるであろうし、自分の父親の年齢の消防団員との共働は生徒に地域社会の一員である自覚と社会性の形成に大きく貢献する結果になっている。他の見本となる素晴らしい取組である。

団体概要

  • ・ 大分市消防団賀来分団 団員88名
    (平成19年4月1日現在)
  • ・ 大分市立賀来小中学校の中学生1・2年生を「かた昼消防団」に任命
    地域防災の必要性を理解させ、啓発、普及に関する将来の担い手として活動していける人材の育成をめざし平成19年4月現在59名で構成されている。

実施期間

平成12年11月~