第7回防災まちづくり大賞(平成14年度)

【消防科学総合センター理事長賞】「カレッジ防災士」事業の展開(地域防災活動におけるコラボレーションの実践)

【消防科学総合センター理事長賞】「カレッジ防災士」事業の展開(地域防災活動におけるコラボレーションの実践)

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北九州市立大学・小倉南消防署・小倉南区役所・小倉南区市民防災会連合会 (福岡県北九州市)

事例の概要

■経緯

 北九州市では、平成5年4月から小学校区単位に「地域福祉のネットワーク」づくりを推進しており、平成9年7月に従来の防火協会(自治会単位)を母体とした「市民防災会」(小学校区単位)が設立され、それぞれの小学校区の「市民福祉センター」を拠点とした防災訓練、研修会及び防災資機材の整備なとが行われている。
 市内7区のうち小倉南区は170k㎡の面積に21万人を超える人々が暮らし、その中心部に位置する北九州市立大学北方キャンパスには1学年に約1,000人の学生が在籍している。彼らの中には、何らかの形で地域防災に関わっていきたいという意識があった。このような市民防災意識の高まりに対する環境整備として、市民防災会等と協働で通称「カレッジ防災士」事業をスタートした。

■内容

  • 1.大学生の防災知識修得
     平成14年度から、1回生を対象に防災講義(1コマ90分)、救命講習(2コマ180分)を履修。
     平成15年度から、2回生を対象に防災ボランティア講義(1コマ90分)を履修。
  • 2.防災意識の高揚及び活用
     1の履修者を「カレッジ防災士」として位置付け、区総務課、消防署及び市民防災会に登録し、うち多数を占める区内居住者を防災マップにプロットした。
  • 3.「カレッジ防災士」の役割
     市民防災会単位に登録された学生は、担当区域の発災現場における初動時の救助活動、初期消火、避難誘導及び区災害対策本部への現場情報送信などを担う。
  • 4.事業の継続的展望
    • (1) 毎年度1回生を対象とし、平成15年度からは正規カリキュラムに組み入れられることから、平成17年度以降は1回生~4回生延4,000人が登録される。
    • (2) 平日の日中には、そのうちの大多数が学内に所在することから、大規模災害発災時においては大学施設を活用した「ボランティアセンター」を開設する人的・物的体制を整える。
  • 5.防災資機材の整備
     市民防災会(市民福祉センター)ごとに配置されている資機材のほか、大学キャンパス内に救助救急用品、炊き出し用品、その他の用品などを設置している。

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カレッジ防災士マップ

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カレッジ防災士育成状況

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救命講習

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救命講習

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講義風景

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受講風景

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プロジェクターを用いた説明

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地域防災との関り

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防災訓練(搬送)

苦労した点

  • 1.カレッジ防災士にかかる講義を大学正規カリキュラムに取り入れ、大多数の学生が履修できるようにした。
  • 2.履修者を登録する際に携帯電話を登録するため、プライバシーの保護を図るとともに、通信費用弁償等を調整する必要がある。
  • 3.登録マップを年度ごとに更新する必要がある。

特徴

  • 1.防災の基礎知識を習得・実践した卒業生が全国に巣立つことから、それぞれの社会生活の場においても防災にかかる地域との協働に即戦力として携わることができる。
  • 2.北九州市において大災害が発災した場合、地理や防災に精通したカレッジ防災士の卒業生が全国から駆けつけてもらえ、ボランティアリーダーの役割を果たせる。
  • 3.在学生の故郷に災害が発生した場合においても、地域防災活動の実践経験を生かした適切な救援活動につながる。
  • 4.毎年度1回生~2回生を対象とするため、恒久的な継続性を有する事業である。

委員のコメント (防災まちづくり大賞選定委員 長澤純一(独立行政法人消防研究所理事))

 「市立大学として地域貢献を重視しています。」全国で初めて防災講座を大学の正規の授業に取り入れ、単位も与えることを英断した理由を私に聞かれた時、学長は胸を張ってこう答えた。この大学の方針と北九州市消防局の熱意ある働きかけとがうまくマッチしたのだ。今の学生も、方法を教え機会さえ与えれば地域社会への貢献に熱心で、指導を受ける学生は、目の輝きが違うという。
 私が現地調査に赴いた平成15年1月17日、阪神・淡路大震災を教訓に行われた小倉南区防災総合訓練で、「カレッジ防災士」と書かれた揃いのヘルメットを被った若者達のきびきびした動きは、ひときわ目を引き、訓練後自然発生的に拍手が起きた。この日の多くの訓練で拍手が起きたのは、後にも先にもこの時だけだった。
 7割が市外からという学生達は、卒業後全国に巣立ち、それぞれの地域で防災に貢献するともに、北九州市に災害があれば大学内に設置されるボランティアセンターに駆けつけボランティアリーダーとなることが期待される。若者に地域貢献の喜びを与え、地域社会には頼もしがられる素晴らしい取組みだ。このような芽が全国に広まることを期待する。

団体概要

 北九州市立大学北方キャンパス学生数:約4,000人
 小倉南区市民防災会:26団体

実施期間

 平成14年度~