第12回防災まちづくり大賞(平成19年度)

【総務大臣賞】震災・学校支援チーム(EARTH)-災害により避難所となった学校の復興支援活動にあたる教職員の組織-の活動

総務大臣賞(一般部門)
震災・学校支援チーム(EARTH)-災害により避難所となった学校の復興支援活動にあたる教職員の組織-の活動

h19-006-map

震災・学校支援チーム(EARTH)
〔事務局:兵庫県教育委員会〕(兵庫県)

事例の概要

■経緯

 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、地震直後から兵庫県内の被災地の多くの学校に、被災した地域住民が多数避難してきた。避難所となった学校においては、教職員は児童生徒の安否確認を行うとともに、避難所運営にも従事しなければならず混乱を極めた。このため、教職員は交替で避難所となった学校に泊り込み、24時間体制で避難所運営にあたらざるを得なかった。そうしたなか、避難所となった学校では、多くのボランティアが活動したが、兵庫県内外の教育関係者の支援者は延べ8千人にも及んだ。兵庫県教育委員会では、平成12年4月、こうした震災の教訓を生かし、災害時に避難所となった学校の復興支援活動にあたる教職員組織として、震災・学校支援チーム(EARTH : Emergency And Rescue Team by school staff in Hyogo)を発足した。

■内容

  • 1.構成
    平成19年9月現在、構成員(以下「EARTH員」という。)は148名で、心のケア班、学校教育班、避難所運営班、学校給食班、研究・企画班の5班編成で活動している。
  • 2.訓練・研修
    EARTH員のスキルアップを図るために、年に2回訓練・研修会を実施している。
  • 3.活動実績〔災害時の支援派遣〕
    県内外で災害が発生した場合、その要請に基づいてEARTH員を派遣し、被災した学校において、(1)学校教育応急対策と教育活動の早期再開、(2)児童生徒の心のケア、(3)学校における避難所運営支援、を主な内容として、学校の支援活動にあたった。
    平成12年度 北海道有珠山噴火に係る支援派遣(3名)
    鳥取県西部地震に係る被災地への支援派遣(4名)
    平成15年度 宮城県北部地震に係る調査(2名)
    平成16年度 台風23号による但馬地域の水害に係る支援派遣(29名)
    新潟県中越地震に係る先行調査(3名)
    新潟県中越地震に係る被災地への支援派遣(6名)
    平成17年度 スマトラ沖地震によるインド洋大津波への派遣(4名)
    平成19年度 新潟県中越沖地震に係る調査(3名)
  • 4.活動実績〔講師派遣〕(平成18年度、19年度県外のみ)
    (平成18年度 県内講師は自校を含め、のべ216名以上)
    平成18年度 愛知県豊橋市立松山小学校親子防災サバイバル訓練(2名)
    名古屋市天白区避難所リーダー養成講座(2名)
    三重県高等学校生徒指導担当者会議(1名)
    平成19年度 高知県養護教員夏季研修会(1名)
    高知県防災教育研修会(3名)
    名古屋市天白区避難所リーダー養成講座(1名)

h19-006-01

EARTH結成式

h19-006-02

スマトラ沖地震津波派遣

h19-006-03

リラクセーション演習

h19-006-04

研修(心のケア)

h19-006-05

語り継ぎ活動

h19-006-06

中越地震調査派遣(避難所)

h19-006-07

避難所開設訓練

h19-006-08

中越沖地震調査派遣(柏崎小)

h19-006-09

中越地震調査派遣(小千谷)

苦労した点

 阪神・淡路大震災から10年以上が経過し、震災の経験や教訓の風化が進む中で、経験や教訓をどのように語りついでいくかが、EARTHとしての大きな課題となった。そのため、2年間にわたり下記の取組を行った。
 (平成17年度)
 被災時に、学校や教職員が行うことができる子どもたちへの心のケアや学校での避難所運営のノウハウなどをまとめた「EARTHハンドブック」を作成し、全国の都道府県教育委員会、図書館に配布するとともに、兵庫県教育委員会ホームページにおいて内容を公開。
 (平成18年度)
 研修会での講師など、EARTH員が防災教育や震災の経験や教訓を伝えるための資料を集めた「災害を語り継ぐ素材集」(CD・DVD各1枚)を作成。

特徴

 発足以来、県内外を問わず、避難所となった学校の復興支援を行い、平素においても、震災の記憶や教訓を県内外の研修会等で、講師として語り継いでいる。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 中林 一樹(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授))

 阪神・淡路大震災(1995)は、その後の世界の震災対策に沢山の教訓を残してきた。このEARTHチーム(Emergency And Rescue Team by school staff in Hyogo)とその活動は、「生きた教訓」である。震災後、被災児童生徒の心のケアを担当する「復興担当教員」を配置するとともに、兵庫県教育委員会では、1997年度より防災教育推進指導員養成講座を設置して防災教育研修事業を開始した。初級1泊2日+中級2日+上級1泊2日の6日間の研修を経て「防災教育推進指導員」となり、県内地域(教育事務所)ごとに防災教育を推進してきた。1999年のトルコマルマラ地震、台湾921大震災には県から教育復興担当教員を派遣した。この機運の高まりから、「災害によって避難所となった学校の復興をどうすればいいのか」の教訓を生かして、県内外の被災地で、避難所となった学校の復興支援活動を展開すべく、研修修了者の有志で結成されたのがEARTHチームである。研修は年2回、初級・中級・上級各30人で、校長会を通して各市町村から2~3名の教員が参加している。150人を定員とするEARTHチームは2000年4月に発足し、有珠山噴火(2000)、鳥取県西部地震(2001)、宮城県北部地震(2003)、台風23号水害・中越地震(2004)、インド洋大津波(2005)、新潟県中越沖地震(2007)への災害支援派遣とともに、2006年度からは「心のケア班」「学校教育班」「避難所運営班」「学校給食班」に加えて「研究・企画班」を設置(各班30人)し、県内での防災教育は各校で実施しているが、県外への講師派遣要請に応じて、小学校から高等学校までの防災教育・訓練指導の講師派遣を進めている。現在148名の教員でEARTHチームを構成しているが、阪神・淡路大震災に教員として被災体験した教員は少なくなっているという。しかし、阪神・淡路大震災では延べ8千人を超える教育関係者からの支援を受けた兵庫県からの「恩返し」としての防災教育活動が継承され、発展している。その鍵は兵庫県の小中高の校長先生の理解と、現場で実践される先生方の熱き思いである、その志気が伝わってきた。

団体概要

  • ・ 震災・学校支援チーム(EARTH)
    ① 阪神・淡路大震災時に受けた全国からの支援に報いるために、災害により避難所となった学校の復興支援活動にあたる教職員組織
    ② 兵庫県内の公立小・中・高校・特別支援学校の教諭、養護教諭、栄養教諭、事務職員等及びカウンセラー、大学教員等の専門家により構成
    ③ 平成19年9月現在、148名

実施期間

 平成12年4月~