第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【消防科学総合センター理事長賞】災害時に備えた施設・施設利用者と地域自治会の連携した取り組み

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
災害時に備えた施設・施設利用者と地域自治会の連携した取り組み

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みのり会地域ふれあいボランティアの会
(長崎県長崎市)

事例の概要

■経緯

 平成15年9月に、地域自治会の行事に福祉ホーム利用者が奉納踊りを行い賛美され、以後、障がいを持つ利用者自身が「自分達でできることで地域のために奉仕したい」との思いから「みのり会地域ふれあいボランティアの会」を結成し、地域の除草・清掃活動や節分祭などの地域自治会が行う行事への協力をボランティア活動として行っている。ボランティア活動を通し、自治会との連携が深まるにつれ、坂と高齢者の多い地域の災害時の応援対策に目を向けるようになり、災害時における防災・減災に関する様々な活動にも取り組んでいる。

■内容

  • 1. 災害ボランティア研修会の開催  災害ボランティア研修会を開催し、自治会や地域住民の方と一緒に「災害時におけるボランティア活動」について学んだ。
  • 2. 「よってかんね」だれもが住みよい町づくり支援事業  地元の自治会と合同で実行委員会を立ち上げ、独立行政法人福祉医療機構の助成を受け、「よってかんね」だれもが住みよい町づくり支援事業を実施している。この事業では、住みよい環境づくりや、施設利用者と地域住民との交流の促進により地域の活性化を図ることに加え、災害ボランティア活動の推進にも力を入れている。その中で、「過去の教訓に学ぶ、災害への備え」というテーマで研修会を開催し、阪神・淡路大震災など過去の災害をもとに“なぜ高齢者や障がい者などの方々に被害が集中するのか”や“災害時要援護者支援のポイント”などを学ぶことによって防災・減災に関する意識の啓発に尽力している。また、実際に地域住民と一緒に町歩きをして確認した情報をもとに避難路案内板(町全図)を作成し、地区内に設置した。その他にも、災害時に備えて非常食や避難用具の確保や保管も行っている。さらに、災害時を想定した避難訓練を地域住民と合同で行う予定である。
  • 3. 施設を災害時の避難所として提供  以前、坂の頂上にある市の指定避難所まで行けない高齢者や障がい者は、災害時、ホテルに泊まるかやむを得ず自宅で過ごさなければならなかったが、そのような事態を回避するため、施設を災害時の避難場所(20名程度収容)として提供することで防災上の課題の一つを解決した。(施設まで歩いて行けない要援護者については、避難補助活動も併せて行う)
  • 4. その他、日頃から自治会との協働活動  地域では、災害時のみの協力体制が整っていれば良いというわけではなく、普段からどれだけ地域間で交流があるかということが大切になってくる。みのり会では、地域清掃活動や自治会行事への参加など、日常から積極的に地域への奉仕活動や協働活動を行っている。

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災害ボランティア研修会

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避難路案内板の設置

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支援実行委員会

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子供たちによる休憩用ベンチの作成

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石垣の除草作業

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地域の除草作業

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地域と合同の納涼花火大会

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避難所案内板の内容検討

苦労した点

  • 1. 要援護者情報の把握  災害時に備えて、要援護者情報の把握をするにあたって、個人情報保護の兼ね合いから苦労している。個別に理解を求める活動を民生委員や児童委員等と連携して地道に行っている。
  • 2. 地域住民の理解  当初、障がいを持っているということで多少偏見を持つ人もいた。しかし、活動を続けていき交流が深まるにつれてそのような意識はなくなり、いかに地域を活性化させるか、災害に強いまちを作っていくか等を模索していくようになった。

特徴

  • 1. 施設を利用している障がい者の自主活動であり、探究心を持って地域自主組織や住民と連携した災害ボランティア活動である。
  • 2. 施設を災害時の一時避難所として提供し、避難補助活動を行うことで地域が長年抱えてきた防災課題の一つを解決した。
  • 3. 年々事業が拡大しており、それに併せて施設利用者・地域住民とも防災・減災に対する意識が高まり、今後の防災まちづくりにも大きな効果が期待できる。
  • 4. 施設と自治会との積極的な連携はとても有効であるが、実際に取り組めていない地域はたくさんあると思われるので、他の地域の模範となる活動である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

 長崎市十人町一の組は地域の7割を斜面地が占める坂の街である。しかも、住民の3割以上が65歳以上の高齢者であることから、災害時の対応が悩みで、自治会はさまざまな防災対策を進めてきた。この地区には社会福祉法人「みのり会」があり、地区の中央部には就労可能な知的障がい者に独立自活を支援するために設けられ、常時20名以上が生活する「まどか寮」がある。寮の生活者は、地域の清掃、夜警、高齢者の荷物の運搬など、長年にわたって奉仕活動を続けてきた。平成15年には「みのり会地域ふれあいボランティアの会」を結成して活動を組織化し、さらに、平成20年には(独)福祉医療機構から「「よってかんね」だれもが住みよい町づくり支援事業」への助成を受けて活動に一層弾みがついた。寮の生活者は、奉仕活動の他、自治会行事に参加していたが、祭時に「エイサー」を奉納したことでより密な関係になり、それを契機に地域全体の防災活動へと輪が広がった。協働した取り組みは多いが、そのうちでも、詳細な内容を含む要介護者一覧、避難経路と要介護者宅、必要事項を記入した「災害たすけあいマップ」の作成、歩行困難な人を若い寮生活者が二人で担いで移動させる避難補助具「ほいさっさ」配置などは、高齢者が多く、坂の街であるこの地域の特殊性を熟知して生まれた取り組みである。また、特筆したいのは、「みのり会」が地域の中央部に位置する寮の施設を災害時の一時避難場所として提供していることである。畳敷きの部屋は広く、非常用具はもちろん、風呂、台所もある。このような設備は寮であることの特徴が生かされたもので、高齢の避難者にとっては多いに役立つものと思われる。八木自治会長は、若い彼らとの協働で「災害が起こっても強い安心感を得ている」と感謝している。一方、「みのり会」と寮の生活者は、これまで以上に地域との関係が密になり、一層地域社会に溶け込み、貢献できるようになったことを喜んでいる。この取り組みは、施設と施設利用者と自治会がそれぞれの持つ良さを生かして連携し、協力して総合的に地域防災に取り組んだすばらしい例であり、その具体的活動の確実性が高く評価されるところである。この事例は、防災に関する新しいスタイルの取り組みであり、他の地域の模範になるものである。

団体概要

構成人員
30名
団体概要
平成15年9月に、地域自治会の行事に福祉ホーム利用者が奉納踊りを行い賛美され、以後、障がいを持つ利用者自身が「自分達でできることで地域のために奉仕したい」との思いから「みのり会地域ふれあいボランティアの会」を結成し、災害時における防災・減災に関する様々な活動にも取り組んでいる。

実施期間

 平成15年9月~