第7回防災まちづくり大賞(平成14年度)

【消防科学総合センター理事長賞】地域の防災ひとづくり(都心部における消防団の地域貢献)

【消防科学総合センター理事長賞】地域の防災ひとづくり(都心部における消防団の地域貢献)

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名古屋市御園消防団(愛知県名古屋市)

事例の概要

■経緯

 御園消防団は、戦前から設置されていた名城消防団から、昭和36年に分割設置された。現在では、市内有数の商業地で、空洞化現象により中区でも最も人口が少ない小学校区を管轄している。
 従前から、火災予防広報及び災害現場活動といった本務以外に、地域防災リーダーとして地域防災力の向上のための地域貢献活動を展開している。中でも、平成12年1月に改定された「消防力の基準」で、消防団の業務として「地域住民等に対する協力、支援及び啓発に関する業務」が明文化されたことは、自らの活動方針の妥当性を再認識するとともに、今後、活動を展開する上で大いに励みになった。
 このような状況下において、平成14年4月24日に大震法に基づく「地震防災対策強化地域」に本市が指定されたことから、御園消防団は大都市でありながら地域に根付いた充実した地域防災コミュニティ形成支援を展開しているところである。

■内容

  • 1.地域貢献活動の主な実績
    • (1) 学区自主防災組織の実践的リーダー養成支援(昭和56年~)
    • (2) 防災イベント等における応急手当指導(平成13年~)
    • (3) 学区運動会における消火競技指導(平成13年~)
    • (4) 子ども会と連携した学区内放火危険箇所チェック(平成13年~)
    • (5) 御園少年消防クラブ発足支援及び合同年末夜間巡回警備実施(平成13年~)
    • (6) 中学生を対象とした着衣泳と水難救助指導(平成9年~)
    • (7) 本市総合防災訓練における地域住民に対する消火、救助、救護等の技術指導
    • (8) 御園小学校の教諭及びPTA役員に対する「AHA心肺蘇生等救急血管治療のための国際ガイドライン2000」の講習支援
  • 2.地域貢献活動の支援体制の確保充実
    • (1) 平成5年自治省消防庁通知「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」の規定に基づく「応急手当指導員」の取得(24名中10名取得)
    • (2) 「AHA心肺蘇生等救急血管治療のための国際ガイドライン2000」技術の取得
    • (3) 日本赤十字社の水上安全法指導員の取得
  • 3.地域との連携
    • (1) 学区防災安心町づくり委員会への参画
    • (2) 御園女性の会等各種団体とのイベントの共催
    • ※ 平成13年には、本消防団発足40周年を迎えるにあたり、地元学区民が発起人となり、「御園消防団発足40周年記念行事」が開催されるなど、平素から住民と緊密な連携のもとに消防団活動が実施されている。
  • 4.その他
     本消防団員は消防団活動のみならず、町内会長、子供会の会長、交通少年団団長、体育指導員、少年補導員等の役職を兼ねるなど、公私を問わず社会貢献に努めている。

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放火危険個所チェック

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放火危険個所チェック

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少年消防クラブ発足式

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少年消防クラブ発足式

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学区民に訓練内容を説明

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三角巾取扱訓練

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三角巾取扱訓練

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救出・救護訓練

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救急救命講習会

苦労した点

  • 1.定住人口が極端に少ない学区のため、消防団の定数25名の確保が困難な状況だった。
  • 2.自主防災組織の訓練等の行事を行う場合、参加者集めに労力を費やした。
  • 3.事業所との連携を図るための会合や訓練を住民に都合のよい休日とすると、事業所側の協力が得られない状況が多く、この調整に困難を極めた。

特徴

  • 1.地域の連携が薄いと言われている都心の消防団員として、継続して防災ひとづくりに積極的に取り組み、地域防災コミュニティの形成を促進している。
  • 2.定住人口が少ない学区であるにもかかわらず、団員確保に努めている。
  • 3.強化地域指定に伴う自主防災組織の育成指導を実施し、地域防災力の向上に努めている。
  • 4.事業所に対して、地域活動に積極的に参画するよう働きかけている。
  • 5.御園女性の会(30人)の全面的な協力を得て、より効果のある訓練を実施している。
  • 6.中消防署とも常に連絡をとりあい、一体となった活動方針に基づき活動を行っている。

委員のコメント (防災まちづくり大賞選定委員 吉村秀實(富士常葉大学環境防災学部教授))

 「都心部における消防団の地域貢献」
 名古屋市の中心部、中区には11の学区があるが、中でも御園学区は定住人口2100に対して、昼間人口が25倍という極端な昼夜間人口格差が特徴の商業地である。こうした地域では市民と事業所、行政が一体となって如何に「防災安心まちづくり運動」を実効性のあるものにして行くかが大命題だが、その運動の中心的存在が御園消防団である。団員数は24名というごく少人数の消防団だが、「地域の防災活動のリーダーは消防団」という意識が極めて強く、自主防災組織など地域住民に対する初期消火訓練や応急手当の訓練などは一貫して消防団がリーダーシップを発揮している。また、新しい救命技術である「AHA心肺蘇生等救急血管治療のための国際ガイドライン2000」を各団員に習得させ、小学校の教師やPTA役員に講習会を実施したり、少年消防クラブの結成などにも寄与している。こうした日頃の防火・防災活動に加え、平成14年4月に名古屋市が東海地震の「地震防災対策強化地域」に新たに指定されたことから、大地震発生時における地域への協力や支援までも視野に入れた防災対策に積極的に取り組んでいることも特筆される。地域の連携が希薄と言われる都心の消防団が活躍できる背景には、消防団長をはじめとする団員の「ヤル気」もさることながら、消防団が学区(御園小学校)毎に編成されているため、各PTAや自主防災組織、女性の会などとの連携が比較的とりやすいことが上げられ、今後の全国の消防団組織の活性化対策の参考事例にもなろう。

団体概要

 御園学区人口:2,023人(平成14年現在)
 御園学区世帯数:1,148世帯(平成14年現在)
 昼間人口:約50,000人
 団員数:団長1名、副団長2名、部長3名、班長5名、団員13名、合計24名(平成13年4月から女性消防団員3名が入団)

実施期間

 昭和56年~