第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【消防科学総合センター理事長賞】行き止まり道路の緊急避難路整備事業

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
行き止まり道路の緊急避難路整備事業

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東京都板橋区

事例の概要

■背景と経緯

 阪神・淡路大震災を教訓に、大規模地震などにより建物が倒壊し道を塞いだ際に、被災者が行き止まり道路から他の道路へ避難できる通路を確保するために、平成9年から職員自らが提案して始めた事業である。
 区内には多くの行き止まり道路があり、1方向の避難路では、その方向の道路が塞がれてしまうと避難できなくなるため、もう一方の緊急避難路を確保することで、2方向避難を可能にする。
 事業開始時は、区内の木造密集地域等に限定していたが、順次、建物倒壊・火災危険度の高い地区を加え、平成20年10月1日からは区内全域を対象として、災害に強いまちづくりを進めている。

■内容

  • 1. 職員による住宅地図上および現地での調査、また区民の要望により整備箇所を抽出する。
  • 2. 行き止まり地点の土地・建物権利者への事業説明を行ない、理解を得る。
  • 3. 事業に賛同を得たものについて、避難者が緊急時に協定者の庭先や建物の間を通ることを認める協定を締結する。
  • 4. 必要な場合は、区の費用で、ブロック塀の一部を門扉に改修するなどし、緊急避難路表示板(消火器ボックス)の設置工事を行う。
  • 5. 「2方向避難が可能となった旨」のお知らせを対象世帯へ配布する。
  • 6.

■実績

 平成9年10月~平成21年9月に、62ヶ所の緊急避難路を確保し、849世帯の2方向避難を可能にした。

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避難扉ステップ付き

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壊せる壁

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既存の扉を利用した避難扉

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壊せる壁ステップ付き

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段差のある避難路にタラップを設置

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避難扉

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避難路表示板(消火器ボックス-支柱設置型)

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緊急避難路のイメージ図

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避難路表示板(消火器ボックス-ブロック塀設置型)

苦労した点

  • 1. 担当職員1名で、区内全域に実際に何度も足を運んで候補を探し出し、交渉にあたっていること。
  • 2. 事業の趣旨は理解いただけるものの、防犯上の問題、近隣との関係、協定を締結するわずらわしさなどから区民の説得が難しいこと。
  • 3. 権利者が多数の場合、意見の調整が難しいこと。

特徴

  • 1. 他のまちづくりの手法と違って土地・建物の買収を伴わず、費用・時間をかけずに避難路を確保できること。(事業開始時からの平均では、避難路協定整備一箇所当たり21万円、2方向避難を可能にした1世帯あたりで1万6千円のコストである。)
  • 2. この手法による緊急避難路の確保は、全国初の取組みである。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男((株)マヌ都市建築研究所所長))

 東京都区部など、大都市の家屋が密集した市街地の一部には、いわゆる袋小路、通り抜けの出来ない「行き止まり道路」が少なからず存在する。行き止まり道路の問題点は、地震や火災などの緊急時に二方向避難が出来ないことだ。出口が塞がれてしまうと逃げ場を失う。ことに道路延長の長い行き止まり道路はその危険性が高い。この行き止まり道路の危険性を解消するためにはどうしたらよいか。問題意識を持った板橋区都市整備部の職員が一つのアイディアを提案し、そして「板橋区行き止まり道路の緊急避難路整備事業」が生まれた。行き止まり道路から他の道路に避難するためにはその途中の民家の庭先や建物の間を通り抜けていかねばならない。その通り抜ける路を確保するためにはその民家の同意と協力が必要とされる。調査や協定のための折衝を区の担当職員が手分けしてすすめ、平成9年より12年の間に65カ所849世帯の二方向避難を確保した。
 現地に伺い様々なケースを案内された。避難扉付きの通路、壊せる壁、タラップ付きの避難路、また、ブロック塀の一部を壊し、隣接するアパートの通路と接続させ、買い物や通勤など日常の通行路となっている避難路など、場所や建物の状況に応じて実に様々な創意工夫が見られた。この事業は、安全性だけでなく住環境の改善や利便性の向上、コミュニティの醸成にも役立っているように思えた。しかし、防犯問題上の制約もあって、設置場所等の情報は開示されず、目立たない事業となっている。ともあれ、住民福祉の理念にのっとり、日の当たりにくい事業を粛々と進めている行政当局の真摯な取り組みに敬意を表したい。土地の買収もなく、地域住民の無償協力での避難路確保は全国でも例を見ない。この板橋方式は、同じような密集市街地の行き止まり道路問題を抱えている多くの都市に応用できるだろう。事業の普及・展開を図るために、大学や研究機関等が追跡調査を行い、住民評価など事業の意義や効果を検認してみたらどうか。

団体概要

構成人員
都市整備部市街地整備課28名

 安全で快適なまちづくりを進めるため、指定された市街地の防災機能や住環境の向上を目的とする道路・公園などの公共施設の整備、住宅共同化の推進、住宅地区改良法に基づく改良事業等を行っている。また良好な生活環境を整備するため、大規模建築物等建設に関する指導・調整、建築基準法第42条2項に該当する道路で、幅員4m未満の道路の拡幅等の協議ならびに整備、助成を行なっている。

実施期間

 平成9年10月~