第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【消防庁長官賞】地域と連携した、障がい者主体による「防災運動会」

消防庁長官賞(一般部門)
地域と連携した、障がい者主体による「防災運動会」

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社会福祉法人岐阜アソシア
(岐阜県岐阜市)

事例の概要

■経緯

 当センターは日常的に岐阜県内はもとより全国の視覚障がい者に対する情報提供を行っている。文字情報を点字や音声訳、拡大文字等の媒体にして、主として図書や雑誌を提供している。こうした情報提供は平時の場合であり、有事の際の情報提供の手法は確立されていなかった。特に障がい者は要援護者という枠組みにあり、災害に対しては弱者であることを理解しながらもその情報提供方法について考察できていなかった。そこで自治体にすべてをお願いすることは困難であることから何か取り組むことができないかと考えた。

  • ① 地域には特別支援学校である岐阜県立岐阜盲学校があり、災害時には避難施設に指定されていること
  • ② 周辺自治会は高齢化率が40%を超え、高齢者中心で「要援護者である」障がい者を支援することができるのかという不安な心情を持っていること
  • ③ 防災訓練等はそれぞれが個別に行っているということなどが、調査から明らかになった。そこで当センターの防災まちづくりとして、ボランティア組織を活用し、さらに地域の情報提供施設であることを十分活用することにより、様々な協力関係のもとに取り組みが可能であることが実証できた。実践では障がい者が主体となる「防災運動会」を開催した。この目的は第一にともに楽しみながら行うこと、第二に障がいを持っていてもできることがある事を地域の方々に知ってもらうことであった。これにより地域に共生意識が生まれてきた。

■内容

  • 1. 地域の中の特別支援学校である岐阜県立岐阜盲学校に在籍する児童・生徒とともに楽しみながら防災活動を行う場を提供した。
  • 2. 障がいを持っていても、できることがあることを地域の方々に知っていただきながら、一緒にできたことの理解が共有できた。
  • 3. 地域の施設としての役割を考え、自治会連合会を主体として、どなたでも参加できるように、競技種目は混成チームとして行った。
  • 4. 防災運動会への取り組み前の活動として、難しい研修などではなく、楽しみながらできる活動とするために、「防災落語会」を地元出身の落語家により行った。
  • 5. 盲学校周辺及び中心地を視覚障がい者と晴眼者が一緒になって歩き、障がい者用設備や危険箇所の発見をする、「まち発見隊」を結成した。
  • 6. 防災運動会後、記念として記録した写真を公開して、自由に閲覧していただき、地域の参加者の方々の希望に応じて、写真を印刷し無償で配布した。

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バケツリレー

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昼食として食べた非常食

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地震体験

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救護者搬送

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地域の子供たちによる大声競争

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消防署員による簡易担架の作り方

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煙体験ハウス

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消防車展示

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防災運動会記念・写真展開催

苦労した点

  • 1. それぞれ個別に防災活動を行っていたため、地域力を高める方法として、まず自治会連合会を巻き込み、しかも回覧板やチラシの個別配布などを行う「協力していただく」手法を試みた。
  • 2. 時期的に防災活動が活発な時期で、休日ごとに開催されることが住民の負担となっているために、楽しんで行える競技種目を考える必要があった。
  • 3. 障がい当事者を中心とした防災訓練は例がなく、障がいを持っていても参加できることや、障がいの特性を考えた競技種目とする工夫が必要であった。
  • 4. 防災運動会の開催にあたり、資金面での苦労があったが、地域の会社のご協力をいただいた。

特徴

  • 1. 障がい者が積極的に参加できる「競技」を考えることができ、さまざまな障がいの方々も「できる」工夫を見いだせることができた。
  • 2. 地域の方、学校の児童・生徒、一般の障がい者がともにできる競技が楽しみながらできた。
  • 3. 防災に関しては要援護者、支援者という立場の壁を打ち破るために障がいを持っていても、できることがあることを地域の方々に啓発することができた。
  • 4. 障がいを持っている、いないにかかわらず、防災に関する知識を習得することができた。
  • 5. 特別支援学校を取り巻く地域住民の障がい者に対する心の不安を少しでも取り除くことができた。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 野村 歡(国際医療福祉大学大学院教授))

 本法人は、視覚障がい者への情報提供施設として、これまで文字情報を点字や音声訳・拡大文字等を媒体に図書や雑誌を提供してきたが、平常時の情報提供のみならず災害時の情報提供について考慮していなかったことを反省し、自ら取り組める事業として本活動に取り組んだ。
 本活動を実施する前に、地元落語家による防災に関する講座、街を歩きながら危険箇所の発見並びに具体的な対応を進めながら関係者の意識高揚を図った。本活動では、視覚障がい者を中心とした「防災運動会」を開催した。「楽しめること」「地域住民に理解をしてもらうこと」を目的に、競技種目は「ビニール袋で消火活動(的あて)」「おいしく非常食(物資の的確な配布)」「バケツリレー」など工夫をこらした。参加者は市内・県内の視覚障がい者約230名であり、当初の目的を十二分に達した。
 本活動の特徴は、これまでの防災活動の多くの事例では障がい者や高齢者は防災活動には参加するものの、傍観者の立場に置かれる場合が多かったが、本活動では主体者であったことにある。
 また、この活動が成功したポイントは、法人が日常から約400名のボランティアを擁していて協力が得られたこと、法人と近接する盲学校の協力を得て校庭を借りられたこと、運動会に使用した材料の提供を中心に地元企業の協力が得られたこと、等にある。
 この活動は、関係の会合で紹介され評価を得られているので、今後、各地で展開される可能性を秘めている。なお、平成20年にも同様の運動会が開催され成果を収めた。

団体概要

視覚に障がいを持つ方に対して点字・音声・拡大文字などの情報提供を中心に、各種イベントの開催や相談支援と、リハビリテーションを行っている。

実施期間

 平成19年10月14月~