第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【消防庁長官賞】後世に誇れる安全で快適なまちづくりに向けて-全国に、世界に情報発信-

消防庁長官賞(一般部門)
後世に誇れる安全で快適なまちづくりに向けて-全国に、世界に情報発信!-

h20-010-Map

泉町三丁目地区連合自治防災会
(東京都国分寺市)

事例の概要

■経緯

 泉町三丁目地区連合自治防災会は、泉町三丁目を構成する10自治会が「安全で住みよいまちづくり」を目的とし昭和58年9月に設立、昭和59年1月に国分寺市と「防災まちづくり推進協定」を締結し、「防災まちづくり推進地区」となって以来、広範囲な地域防災活動を積極的に推進している。「後世に誇れる安全で快適なまちづくり」を目指し、「泉町三丁目地区防災計画」「災害時要救出者名簿」等の整備を図るとともに、防災用倉庫、防災用資器材の整備を自主的に推進している。また、「泉町三丁目防災ニュース」により防災情報を発信して「自助・共助」等、防災意識の啓発を図っている。独自のユニークな「防災コンクール」、「親子防災映画会」等を、25年余に亘り継続実施している。

■内容

  • 1. 防災まちづくりアンケート、災害時要援護者の調査及び地域の危険箇所点検と消防施設点検(街頭消火器・消火栓・防火水槽等)を実施し、地域住民の防災意識、ニーズと地域の危険要因等を把握し、「泉町三丁目地区防災計画」、「災害危険地図」及び「災害時要救出者名簿」を作成し災害時の安否確認と救出救護を前提とした独自のシステムを構築した。地域の危険箇所点検と消防施設点検は、昭和60年から毎年継続している。特に、「災害時要救出者名簿」は、毎年該当者の家に出向し確認を実施し更新している。
  • 2. 防災倉庫、防災資器材の整備、購入を、市からの助成のほか町会費により実施している。特に、仮設トイレ、レスキューキャリーマット、把手付きベットパット等の購入整備と資器材搬送車の作成など実災害に即した整備がなされている。
  • 3. 昭和59年1月から「泉町三丁目防災ニュース」を毎月1回以上発行、会員世帯に配布し、身近な防災情報、国内外の災害の教訓や消火器(昭和61年から)、住宅用火災警報器(平成18年から)共同購入等について情報提供し、現在まで255号を発行している。
  • 4. 国分寺市総合防災訓練、水防訓練及び消防演習に積極的に参加するとともに、独自の防災訓練を毎年2回以上実施している。また、市、消防署、地域の事業所、商店会、PTA及び老人会等と連携し、昭和59年から「親子防災映画会」を、昭和61年から審査会形式の「防災コンクール」(地震発生時から初期消火、救出救護等一連の活動と炊き出し訓練)を開催し、幅広い年齢層に対応する防災行事の企画と防災意識の啓発を図っている。
  • 5. 平成17年度から3年間総務省消防庁の集団研修「火災予防研修」(JICA)の受け入れ、平成20年2月には消防大学校自主防災組織育成コースで講義を行った。
  • 6. NHK「こんにちは。1都6県」で、地域の防災への取り組み、活動が紹介された。

■成果

  • 1. 国の機関の研修等に協力する一方で、防災への取り組みが、マスコミに取り上げられるなど自主防災組織としての評価が高く、国内に留まらず海外(JICAを通じ)にも防災情報を発信している。
  • 2. 消火器の共同購入の成果で、一般住宅の普及率が100%を達成した。

h20-010-01

防災倉庫及び防災資器材の状況

h20-010-02

災害時行動マニュアルと災害危険地図

h20-010-03

国分寺市総合防災訓練における救出訓練の状況

h20-010-04

視察研修(立川防災館)

h20-010-05

D級ポンプによる放水訓練

h20-010-06

D級ポンプ等の整備

h20-010-07

国分寺市総合防災訓練における避難訓練の状況

h20-010-08

審査会形式の防災コンクール(応急救護)

苦労した点

  • 1. 住民の多様なニーズの把握とそれを踏まえた実効性のある地域防災活動の継続に苦労した。
  • 2. 地域の事業所、商店会、PTA等の参画意識を高め、積極的な訓練等への参加のための調整に苦労した。

特徴

  • 1. 国の研修への協力等、情報発信により多大な社会貢献をしている。
  • 2. 「災害時要救出者名簿」の作成により(毎年更新)、安否確認と救出救護の独自システムが整備されている。
  • 3. 防災訓練、行事に広い年齢層と地元事業所等の参加に向けた工夫がなされている。
  • 4. 各種地域防災活動の取り組みが、25年余の長期に亘り継続し展開されている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

 東京都国分寺市は防災意識の高い街である。市では28年前から「防災まちづくり学校」を開校、この学校を修了した者を「防災推進員」に認定し、地区の防災活動の核となる人材の養成制度を設けている。各地区には、地区の実情に合った防災対応のバイブルともいえる「地区防災計画書」が作られており、推進員はそれに沿ってさまざまな活動を展開している。今回受賞した泉町三丁目地区連合自治防災会もその一つで、防災会には10自治会の931戸が加入して昭和58年に設立された。翌年には国分寺市と「防災まちづくり推進協定」を締結し、「防災まちづくり学校」を卒業した54名の防災推進員が中心となって、25年の永きにわたり着実な活動を展開してきた。防災会はよく組織化されており、全体を統括する「総務部」、危険箇所の点検と環境改善を進める「環境改善部」、防災情報の収集、情報交換、すでに262号になる防災ニュースの発行、親子防災映画会の実施などを担当する「情報連絡部」、地震発生当初から安全な搬送、避難までの一連の活動の時間を競う防災コンクールの開催、防災設備の点検、消火器の共同購入など、住民の自主防災体制の強化に努める「防火対策部」、応急手当講習会の開催、献血活動の推進、災害時の救出・救護・応急手当などにあたる「救出救護部」の5つの専門部が設けられている。各部の活動は年間計画に基づいて行われ、活動報告にみるように確実に機能しており、地に着いた活動になっている。また、災害に即した物品の整備、災害時行動マニュアルの作成、希望者の申請方式による災害時要救出者名簿の作成などの工夫もなされている。この防災会のすぐれた活動は有名で、何度も他の自治体が視察に訪れているし、JICAが招聘した外国の消防関係者にも積極的に情報を提供し、国際貢献にも一役買っている。この防災会の活動は、長い活動の歴史を反映して、組織的で幅広い展開が組み立てられており、随所にきめ細かい独自の工夫がなされている。それらが確実に動いているのが最大の特徴であり、活動全体がそっくり他の模範となる取り組みである。この防災会の活動について現地調査に集まって頂いた役員の方々は、野口誠一会長をはじめとしてみな明るく、自分たちの街は自分たちで守るという自信に満ち、はつらつとしていたことが強く印象に残った。

団体概要

泉町三丁目地区連合自治防災会

世帯数
1645世帯
住 民
3,394名

10の町会、自治会が連合し構成している。
(親和会自治会・西自治会・都営若葉会・長月会・さつき会・三七和会・JRアパート・西国分寺史跡通り住宅・いずみ自治会・西国分寺レガ管理組合)

実施期間

 昭和58年9月~