第11回防災まちづくり大賞(平成18年度)

【消防科学総合センター理事長賞】地域行事に防災の智恵…丸亀土器川の災害と来たるべき大地震に備えて

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川西地区地域づくり推進協議会
(香川県丸亀市)

事例の概要

■経緯

 H7年3月に「地域自立」と「協働の精神」を基本理念として立ち上げた”地域づくり推進協議会”(以下、「コミュニティ」と呼ぶ。)の活動は、総務、人権、環境、保健、福祉、体育の6部会1事務局でスタートした。メディアを通じて防災・減災に関する情報も多くなり、H12年、総務部会に防災担当を配置。H13.8月に兵庫県の北淡町役場へ防災研修として50名参加。その際、あれほどの大規模災害に遭遇しながら北淡町では亡くなられた方が異常に少なかった。それは、消防団の何倍規模での自警団の活躍があったと聞かされた。この時に、「我命、我地域は、我々の手で守るしかない。」という強い決心で同年自主防災会を立ち上げ、更にH16年コミュニティ組織に防災部会を立ち上げ本格的な自主防災活動を開始した。

■内容

  • 1.ウォーキング大会(8回連続)と連動して「防災フェア」を開催。(4月第3日曜日本年度で4回目)
  • 2.防災会議を開催。1年間取り組んできた施策の住民周知と意見交換。併せて防災に関する記念講演会を開催。(8月第1日曜日平成18年度で3回目)
  • 3.各自治会がテーマをもって自主的に開催する防災訓練を実施。(9月第1日曜日 平成18年度で5回日)
  • 4.避難生活を予想して、大鍋による汁等作成訓練となぞえ土器川芋だき大会を開催、平成18年度で3回目。
  • 5.地元香川大学工学部並びに企業チームと連携して”防災の手引書”を作成、3,000部印刷し全戸配布
  • 6.ふれあい防災ネットワークを構築して、災害発生時には情報伝達用に、平常時には防犯パトロール用に使用。(専用無線機による)
  • 7.防災リーダーの認定証制度の発足。

■特色

  • 1.身近な活動の中に、さりげなく防災意識の高揚をはかるべく、「防災クイズ」を防災フェア、防災訓練に取り入れた。
  • 2.自主防災会、防災部員全員に名刺を持たせ、各種資料を自治会長(47名)と防災関係者へ配達する際、必ず名刺を提示し、防災部門のPRと、人と人とのコミュニケーションとコミュニティの基盤を確立させた。
  • 3.小学生から長寿会までの幅広い層を巻き込んでの活動。防災によって地域の和と元気な街づくりが図られた。

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災害時支援車両

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民間避難所

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防災教室(小学校)

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川西地区避難訓練

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防災無線機を使った下校時の安全パトロール

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防災訓練(家具倒壊による救出模様)

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災害時支援用井戸

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防災備品

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おにぎり1000個訓練

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大規模情報伝達訓練

苦労した点

  • 1.四国の中でも災害の少ない香川県。なぜ“防災”なの、という声が多く、H14,15の防災訓練は参加数も少なく、訓練を見るスタイル(非参加型)、やらされているという雰囲気。一級河川土器川の大洪水、更にため池の堤防決壊を訴えたが(高知・徳島県山間部並みに雨量が降ると大変なことになると何度も言った。)地区民は皆平気だった。ところが、H16台風豪雨によって顔色が変わった。また、防災訓練も各自治会、各グループに自立型の訓練として導いた。訓練終了後にそれぞれのグループでもって、成果発表の場を設定、また、早朝の避難訓練にも、撮影班を必ずつけて、あえてカメラを意識させることによって、緊張感のある充実した訓練となった。
     このように、訓練主体を参加者にシフト、更にカメラという道具の使い方、また、H16の台風災害がキッカケとなって防災に対する違和感がなくなり、何事にも積極的となった。
  • 2.とにかく、静かな田園の街。防災意識の高揚とまちづくりの活気を高めるため、防災に関するテーマとまちづくりテーマに関するフォーラム・シンポジウム・セミナーについて、日帰り可能な場所であれば徹底して自治会長・コミュニティ代議員に参加させた。(H15年から延ベ20回 約400名参加。)
  • 3.更に、「人と防災・未来センター」視祭と神戸市内のまちづくり協議会との意見交換は、3~4年周期で実施し、防災とまちづくりの重要性を肌で感じ取って取り組みを風化させない工夫をしている。

特徴

  • 1.香川県並びに丸亀市の”安心・安全モデル事業”として、地区内全域をカバーする防災用無線機を導入
  • 2.防災を核にした地域コミュニティの形成、まちづくり
  • 3.地域の親睦行事を通した楽しい防災訓線(土器川芋だき大会1,000人食作り他)
  • 4.防災リーダー認定制度による人材育成
  • 5.各自治会による自立型防災訓線の成果を香川県の総合防災訓練で披露
  • 6.行政、地元企業との連携による、きめ細かな避難対策
  • 7.香川マルチメディアビジネスフォーラム、香川大学工学部の専門家との連携による「防災の手引き」と「ふれあい防災ネットワーク運用マニュアル」の作成
  • 8.異業種で、かつ小学生から青年会・婦人会・老人会まで幅広い層を巻き込んだまちづくりと防災の和

委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授)】

 丸亀市川西地区は戸数2,468戸、人口6,910人のコミュニティで、土器川の左岸に広がっている。地区の中心にコミュニティセンターがあり、そこを拠点として川西地区地域づくり推進協議会の活動が展開されている。川西地区での防災への取り組みの中には、特筆すべき多くの取り組みがある。神戸市や北淡町などの被災地視察や、防災に関するフォーラム、セミナーに積極的に人を派遣して、防災に明るい「人材養成」に力を入れている。勉強してきたことを会員が共有するという、研修システムも確立されている。また、地区内の民間施設と契約を交わして11カ所の「民間避難場所」を配置した取り組みも新しい。しかも、そこには、災害弱者のための優先スペースを設けているという配慮深さもある。さらに、防災に関するイベントとは別に、芋だき大会、校区夏まつり、町民体育大会、餅つき大会など、地区で催されるイベントの中に防災企画を取り込むことで、機会あるごとに住民に防災意識を啓発している。また、頼まれれば、他の地区へ協議会員が出張して地区での取り組みを紹介し、救出活動の訓練の実演まで行っている。自分たちが構築したノウハウを外に向かって積極的に発信することで、広範な地域の防災力の向上にも大きく貢献している。設備面では、防災倉庫の充実に加え、地区内5カ所に水害に備えた土嚢センターを配置していること、災害時の支援車両として軽自動車23台、トラック3台、食料専用ワゴン車2台を配置するなどして、すぐに緊急時に対応できる体制ができている。訪問しての最大の印象は、学びながら取り組み、1つ1つの機能を高めながらそれを組織的に整理し、実践的な行動へと結びつけていることである。岩崎会長を中心として、活動的で明るい人々からなる団体であることも特記すべきであろう。このように、川西地区の多くの活動は示唆に富むものであり、他への模範となるものである。

団体概要

  • ・県内唯一である1級河川「土器川」の左岸に位置
  • ・世帯数:2,468世帯
  • ・人 口:6,910人
    ※H18.9.1.現在
  • ・丸亀市川西地区地域づくり推進協議会:代議員50名
    (なお、代議員の内訳として、サラリーマン、自営業(商店主・工業主)、農業、大工並びに左官職人、公務員(行政マン・教師)と多種多様。全員ボランティア精神で頑張っている。)

実施期間

平成12年~