第7回防災まちづくり大賞(平成14年度)

【総務大臣賞】ラジオ震災番組「ネットワーク1・17」を中心とした地震防災放送活動

【総務大臣賞】ラジオ震災番組「ネットワーク1・17」を中心とした地震防災放送活動

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毎日放送(大阪府)

事例の概要

■経緯

 阪神・淡路大震災はメディアにとっても大きな衝撃だった。毎日放送は、地震報道の体制を整えるため定期的な会議を開き始めた矢先で、ほとんど何の準備もなく震災報道に突入した。
 被災者に必要な情報を提供し、被災者の心の支えになるような番組をめざして誕生したのが「ネットワーク1・17」である。平成14年で8年目を迎え、「阪神・淡路大震災の記憶を語り継ぐこと」と「防災の基礎知識を伝えること」を2本の柱に継続している。

■内容

  • 1.ネットワーク1・17
     阪神・淡路大震災から3ヶ月が経過した平成7年4月15日にスタートした。当初は毎週土曜日午後5時10分~43分で、現在は放送時間を拡大して午後5時から放送している。被災地の今を記録しながら問題点・課題を探り、復興の現実を見つめるもので、「被災地に向けた、被災者のための、被災者の支えとなる番組」を目指したものである。住居・仕事・福祉・まちづくり・ボランティア・行政・法律など様々なテーマを取り上げ、テーマに関するゲストに出演してもらっている。また、新たな災害による被災者を1人でも少なくしたいと考え、平成10年頃から「防災」のテーマを積極的に取り入れている。
  • 2.タクシー防災リポーター制度
     平成9年1月17日に、毎日放送と大阪タクシー協会が協力して、仙台・東京に続き全国3番目に大阪でスタートした。タクシー防災リポート車は、大阪タクシー協会会員の20社20車両を使用し、リポーター乗務員は約50人で、任期は2年となっている。大地震、風水害、大事故(大火災)等が発生した場合、タクシー防災リポーターが毎日放送ラジオに情報を提供する仕組みで、毎日放送ラジオ報道デスクに専用の電話回線を設置している。日常的には、ネットワーク1・17でリポーターとして活躍しており、2年に1度研修会を開き南海地震などについて基礎知識を学んでもらっている。
  • 3.コーナー企画「週刊地震概況」とホームページの連動
     防災意識を持ち続ける、そして地震をむやみにおそれないための基礎知識を身につける、という2つの目的で、ネットワーク1・17のコーナー企画として平成10年10月にスタートした。京都大学防災研究所地震予知研究センターの梅田教授の協力を得て、1週間に近畿周辺で起きた地震を解説し、地震や災害の基礎知識をパーソナリティーの会話で親しみやすく伝える、2部構成となっている。また、平成11年1月17日から毎日放送のホームページに掲載されており、情報の蓄積と常時の閲覧、放送エリア外での情報の発信が可能となった。
  • 4.その他
    • (1) 地震防災キャンペーンスポット
       平成11年1月17日から「地震防災キャンペーンスポット」の放送を開始し、1日1~2回程度放送している。地震防災に関する提言・教訓等を数秒程度で伝えている。
    • (2) 地震防災メモ
       平成13年1月17日から「地震防災メモ」の放送を開始している。「地震防災キャンペーン」を補完するもので、地震や防災の基礎知識を伝えている。
    • (3) 企画「シリーズ・人々の震災」
       平成13年1月からスタートしたもので、震災の遺族を含め、一般の人がどんな震災を経験したのかを聞き、そこから震災の教訓を学ぼうとするもの。テーマの1つとして取り上げている。

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防災リポート車概要

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防災タクシー外観

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ネットワーク1.17 H.P

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ネットワーク1.17 (地震概況の記事例)

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防災タクシートランク内部

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ネットワーク1.17 H.P (楽屋話)

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FMわいわいとの合同放送(新長田駅特設ステージ)

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FMわいわいとの合同放送(小学生へのインビュー)

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FMわいわいとの合同放送(追悼のろうそく点灯直前)

苦労した点

  • 1.聴取率やコマーシャル収入を重視する民間放送にあって、震災だけをテーマにした番組を継続するのは難しい。また、一般の人からも「もう震災は終わったのでは」という声さえ聞かれる中、震災の経験を語る必要性や備える必要性をラジオを通じて訴え、なんとか理解を得てきた。
  • 2.震災直後に「予防のための放送」をするのは不可能である。例えば家を失った人に「こんな家が弱い」とは言えない。防災放送は平時から続けることを心がけている。

特徴

  • 1.震災後、関西の様々な放送局が震災を伝える番組を制作した。だが、現在も「定期的な震災番組」として生き残っているのは「ネットワーク1・17」だけである。
  • 2.震災の記憶を語り継ぐだけでなく、地震の活動期に入ったことをふまえ、防災意識と知識の向上を目的としている。

委員のコメント (防災まちづくり大賞選定委員長 澤井安勇(総合研究開発機構理事))

 「ネットワーク1・17」は、95年の阪神・淡路大震災直後に、被災者の心のケアを目的に開始された番組で、そのため、一定期間後に自然に終了することが、むしろ望ましいと考えられていたという。しかしながら、番組を重ねるうちに、東海地震・東南海地震・南海地震などさらに大規模な地震災害の危機が生じうることに番組関係者が注目し、防災タクシーレポートや週間地震概況などの関連番組を充実させ、現在では、FM局ともタイアップして、阪神・淡路大地震の記憶の継承と防災基礎知識の普及を目的とした幅広い活動を展開している。制約の多い民放局で、このような防災番組を継続する原動力が、局関係者の地震防災への深い理解と熱い情熱であることが、番組担当者の話から感じ取ることができた。今後、こうした地域メディアの防災活動が各地に展開され、そのネットワークが拡がることを期待したい。

団体概要

 毎日放送社員数:678名
 ラジオ局社員数:44名
 「ネットワーク1・17」スタッフ:出演者(2名)、ディレクター(1名)、アシスタントディレクター(1名)、技術(1名)

実施期間

 平成7年~