第6回防災まちづくり大賞(平成13年度)

【消防科学総合センター理事長賞】「中学生等への防災教育」と「地元企業との災害時応援協定の締結」

【消防科学総合センター理事長賞】「中学生等への防災教育」と「地元企業との災害時応援協定の締結」

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明親校区防災福祉コミュニティ(兵庫県)

事例の概要

■概要

神戸市では、阪神・淡路大震災の教訓をもとに福祉活動と防災活動を進める防災福祉コミュニティの結成に力を入れており、明親校区防災福祉コミュニティは神戸市兵庫区ではじめて結成された組織である。

明親校区防災福祉コミュニティでは、住民を主体として地域内の7つの企業と「大規模災害時における地域協力についての覚書」を締結している。締結後、協定企業と協力して防災訓練を実施するとともに、事業所訪問や防災交流会を開催してきた。また、活動内容を防火防災面から「健全な地域づくり」へと課題を広げた。その結果、地域内の小中学校の子ども達に地域への関心と防火防災への関心を持ってもらい、地域のふれあいを広げ、子ども達の健全な育成に寄与しようと防災訓練等を実施している。

■内容

  • 1.大規模災害時における地域協力についての覚書

    大規模災害発生時に地域の企業が協力して被害を軽減し、地域福祉に寄与することを目的として覚書を締結している。

    • (1) 対象となる災害

      <1>地震災害、<2>大規模風水害、<3>その他大規模な災害
    • (2) 協力の内容

      <1>災害防御活動の支援、<2>資機材の提供、<3>施設開放及び給水等の福祉救援活動
    • (3) 協力企業締結時7事業所(現在6事業所)

      <1>医療法人一輝会荻原みさき病院、<2>川崎重工業株式会社兵庫工場、<3>日清製粉株式会社神戸工場、<4>バンドー化学株式会社神戸工場、<5>富士通テン株式会社、<6>松村石油株式会社神戸工場、<7>カネテツデリカフーズ株式会社神戸工場(移転)
  • 2.中学校における防災教育

    地域内の神戸市立須佐野中学校の1年生に対して、地域と中学校が一体となって防災教育を行っている。

    • (1) 放水体験訓練

      <1>小型動力ポンプを使用しての放水訓練、<2>消火器取扱訓練、<3>バケツリレーによる消火訓練
    • (2) 市民救命士資格取得講習

      <1>心肺蘇生法のコース、<2>ケガの手当コース
  • 3.小学校における防災教育

    地域内の神戸市立明親小学校の避難訓練時に児童に対して防災教育を行っている。

    <1>バケツリレーによる消火訓練、<2>小型動力ポンプを使用しての放水体験

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コミュニティ安全マップ

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負傷者への救護活動

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仮設トイレの組立

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地元企業との合同放水訓練

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バケツリレー訓練

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小学校での防火指導

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救命講習

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消火器の取扱訓練(中学生)

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中学校への防火指導

苦労・成功のポイント

■苦労した点

  • 1. 大規模災害時における地域協力についての覚書
    阪神・淡路大震災時には、企業の体育館を避難所として開放したり、風呂等を地域住民に開放してもらったが、日頃の交流もなく締結までは何回もの打ち合わせや会議を開き、意志の疎通を図った。また、締結後は、各企業の訪間や意見交換会を開催するとともに、防災訓練時には相互参加して交流を図っている。
  • 2. 中学校における防災教育
    中学校の授業時間の中から数時間を防災教育に充てることについて学校側と調整した。また、平日に行うため、防災福祉コミュニティの組織員の確保に苦労した。

■成功した点

会議等を重ねる毎に企業と地域住民との交流が図れ、住民どうしのふれあいも深まり、防災福祉コミュニティの組織づくりに大変役に立った。
地域住民が小中学生に対して防災教育を行うことによって、子ども達が防災や地域に対して関心を持ち、地域の一員としての自覚が芽生え、子ども達の健全な成長に寄与することができた。

成果・展望

■成果

地域住民と地域内企業との信頼関係が深まり、子ども達とふれあうことにより、防火防災だけでなく非行の防止などにもつながり、安全で安心して暮らせるまちづくりが進められている。

■展望

現在、凶悪犯罪の低年齢化などが大きな社会問題となっている。家庭や学校と協力して、防火防災活動を推進することにより子ども達と顔見知りになり、地域全体で子ども達の健全な育成と安心して誰でも暮らせる町づくりが期待できる。

委員のコメント(中林委員)

現地調査では、阪神大震災の被災者である高齢者が多数入居している兵庫カナルタウンでの地域の防災訓練を見学した。この事例の特色は「小中学生への地域ぐるみの防災教育」と「地元企業との災害時応援協定の締結」であるが、防災訓練では、避難してきた高齢者に中学生が日頃の救急訓練を生かして救急措置を施す訓練があった。防災教育として、小学校で地域と一緒に開催する避難訓練や、中学校の地域の防災オリエンテーリング(防災地図作り)や消防団から借用の消防服を着てプールの水を使った放水訓練などの他、地元企業との協定を締結したことから各企業で毎年発生する詰め替え期の消火器を使った実物消火訓練などユニークな地域ぐるみの防災活動を展開している。さらに、各企業への小中学生の見学授業が増えたため企業の防災への取り組みも強化されたという。地域関係の希薄化が指摘されている中で、高齢者への福祉活動とリンクしたユニークで貴重な防災活動への取り組みが展開されていた。

団体概要

明親校区防災福祉コミュニティ:平成8年3月7日結成、3,197世帯、7,490人、委員46名

実施期間

平成8年~