第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

高齢者による防火意識の高揚と体制づくりー実践講習をとおしてー

優良事例
(一般部門)

高齢者による防火意識の高揚と体制づくり -実践講習をとおして-

川西町老人クラブ連合会中郡地区
西三老人クラブ「親笑会」
(山形県川西町)

事例の概要

■経緯

 私たちの集落(西三自治会)は、世帯数40戸で過疎化と少子高齢化により、人口に占める高齢者の割合は年々高くなっている。
 特に日中地域内に居住している大半は高齢者であることから、日ごろ各家庭の留守と地域の安全な生活を守っているのは、主にじいちゃんとばあちゃんたちである。
 ついては、突然の火災発生に対して、いつでも、直ちに対応できるような心構えと意識高揚のためには高齢者が積極的に地域防災にかかわっていくという姿勢が不可欠である。老人クラブが自治会と連携をはかり①「消火器の取扱い講習」と②「消火栓の操作使用訓練」を町消防署員と地区分団の消防団員を招聘して実施し、過疎化と少子化が進む地方の集落でも防災体制を充実させるとともに、地区の若妻会や交通安全母の会などと連携をとることで地域コミュニティの維持にも貢献している。

■内容

  • 1 「消火器の取扱い講習」
    • ① 自治会では以前は2年に1回ほど消火器講習を実施していたが、ここ10数年間行っていなかった。今年春に地域内の高齢者宅で火災が発生し、家庭内に消火器がありながら使用できず全焼となったことを機に、老人クラブが主体となって会員と地域の高齢者に参加を呼びかけ講習を開催している。
    • ② 町消防署員を講師に依頼して、消火器の取扱いと消火方法の説明をうけている。また、実際に消火器を手にして、参加者全員が初期消火行動を体験することで実践的な消火能力の向上を図っている。
  • 2 「消火栓の操作使用訓練」
    • ① 消火栓は、地区内に2ヶ所設置されており、自治会が管理している。それぞれ消防団を退団した団員の40~50代が中心となって20数年前から活動してきたが、隊員の就労形態により日中は不在になるため、地域の防火力低下を高齢者で補おうと老人クラブ会員有志が声がけして「老人クラブ消火栓消防隊」を編成した。
    • ② 消火栓の操作方法については、自治会消火栓消防隊と地域の消防団員から指導していただいている。春秋年2回の訓練を通じ、一人ひとりの隊員の作業分担と役割を確認して連携プレーによる操法ができるようになり、意識の向上と自信につながっている。

■今後の展望

 現在は消火栓1基を受け持つ1隊があるのみだが、自治会と話し合いながら老人クラブの組織強化とあわせて地区内のもう1基の消火栓を担当する隊の編成を実現したいと考えている。
 さらに、本老人クラブだけでなく町老人クラブ連合会の事業として消火器訓練の実施を提唱し、町全体の防火体制の充実と、平時からの住民の相互協力意識を高めていくことを計画している。

地域住民みんなで消火器使用訓練

訓練前の点呼と説明

消防署員から指導中

訓練後の交流会

消火栓取扱いの説明

苦労した点

  • 1 老人クラブ会員の年齢は高く、「消火栓消防隊」の結成について賛同を得ることは当初は困難であった。(結果的には心身ともに健康な方男性3名、女性3名が積極的志願してくれた。)
  • 2 隊員の平均年齢は、70歳代であることから、自分の安全を優先に考え、けがや事故等に配慮して行動する必要がある。

特徴

  • 1 安全・安心なまち(地域)づくりにとって、高齢者の果たす役割は大きく、地域住民からの期待も高い。
  • 2 火災に限らず、地震や風水害などの自然災害を含め有事の際に備え、日ごろの訓練や人付き合いが大切になることから、老人クラブの交流活動を通じて仲間づくりを推進している。
  • 3 地域との関わりの機会を多く持ちたいことから、「地域防犯部会」の活動方針にもいち早く老人クラブが協力体制を示して、子どもたちの登下校時の見守り活動に取り組み、地域からの信頼が一層高まった。
  • 4 高齢化と過疎化が進む地方において高齢者の能力を無理なく発揮することができる。とくに「消火栓使用訓練」は県内でも他に類例のない活動である。

団体概要

構成人員:老人クラブ会員38名(男8名・女30名)
 地区内の60歳以上の方の9割が加入して、年間を通じて健康と生きがいづくりをはじめ、環境美化や奉仕活動など地域に密着した活動に取り組んでいる。

実施期間

平成19年~