第4回防災まちづくり大賞(平成11年度)

【消防科学センター理事長賞】「自主防災組織の育成」及び「防災ボランティアの育成」

【消防科学センター理事長賞】「自主防災組織の育成」及び「防災ボランティアの育成」

vol.4 026-029 MapLayer1

鶴岡市(山形県)

事例の概要

■経緯

 平成7年度末、市内21の全小学校区単位で自主防災組織が結成され、その組織の育成強化を図ってきた。自主防災組織員の防災意識の高揚や、知識・技術の普及を図ることが目的である。平成10年度からは、小学校区単位の自主防災組織はある程度充実したと考え、さらに末端までの浸透を図るため、防災活動の主体となる町内会単位組織の結成、並びに育成強化に重点をおいて取り組んでいる。
 また、大規模災害発生時にボランティアの協力が得られるように、ボランティアの育成にも取り組んでいる。

■内容

  • (1)自主防災組織指導者講習会(平成7年度~9年度)
     小学校区単位の自主防災組織のリーダーを対象に、年10日間、計44時間の講習会を実施した。全課程修了者には、市が独自に設けている「自主防災組織指導者」の資格を付与している。
  • (2)自主防災組織準指導者講習会(平成10年度~)
     災害時、防災活動の中心となるのは若い人材である。そのような方から講習に参加していただきたく、従来の講習会について、時間の短縮(年5日間・18時間)・休日の講習会開催等の見直しを行ない、参加しやすい内容にした。
  • (3)自主防災組織標旗交付事業(平成9年度~)
     町内会単位の自主防災組織にのぼり旗を交付し、組織の活性化を図っている。有事の際、住民がこののぼり旗を目印に安全かつ迅速に避難できるように、また、日頃の防災訓練を含めた防災活動に使用していただき、防災意識の高揚を図る。現在132の組織に交付している。
  • (4)自主防災組織育成検討委員会の設置(平成9年度・委員会7回)
     自主防災組織の育成を目的に、住民や消防関係の代表者に集まっていただいた。広く防災体制のあり方を検討するため、市民対象のアンケート調査を実施するなどして課題を見出し、協議、検討した。最終的に、自主防災組織のあり方や訓練活動計画に関すること、広く市民の防災意識の啓発高揚に関すること、行政支援に関すること等の提言をいただいた。市では、この提言を受けて、防災体制の強化を進めていきたい。
  • (5)防災資機材の整備
     大規模災害に備え、小学校区単位の自主防災組織には、避難誘導や救出救助の資機材等を市で整備し、年に一回点検をしている。
  • (6)防災訓練の実施
     大規模災害が発生した場合、その被害は全市に及ぶ。そのため、市の訓練は同一の災害想定の下、全市一斉で実施している。市ではモデル地区を選定するが、他にも小学校区単位の自主防災組織を中心に、町内会単位組織にも訓練の実施を呼び掛けている。
  • (7)防災シンポジウムの開催
     災害の記憶は時間の経過と共に忘れられてしまうことが多いため、全市民を対象とした啓蒙啓発活動の一端として平成6年度より実施している。講師には大学教授や被災した地域の方、市民代表の方等をお迎えしている。自主防災組織や日頃防災活動に協力を頂いている団体には、別途に参加の呼びかけている。
  • (8)防災ボランティア講習会
     平成8年度から、講習会と講習会受講者の防災ボランティア登録を行なっている。これまで講習会では阪神・淡路大震災の際に現地でボランティア活動を行なった方や市のボランティア連絡協議会の方を講師にお迎えし、災害時のボランティアの有効性を学んだ。また、普通救命講習や防災資機材の取扱実務等を行なった。
  • (9)消防ボランティア登録制度
     大規模災害発生時には、高度な知識と技術を有する専門分野のボランティアの必要性が高くなる。このため鶴岡地区消防事務組合のOBを対象として、平成8年12月17日に「消防ボランティア」が組織された。

■特色

  • (1) 平成10年度からは「自主防災組織準指導者講習会」を実施している。全課程終了後、希望者には「指導者講習会」と比べて不足している防火管理講習や上級救命講習等を受講することにより「指導者」の資格を得ることが可能である。
  • (2) 災害時は元より防災訓練時にも「指導者」は腕章を着用して住民の先頭に立ち、指揮をとっている。また、標旗交付申請や準指導者講習会の受講申請時にも「指導者」の推薦を必要とする等、日頃から地域住民との連携を密にしている。
  • (3) 防災ボランティア講習会の参加は、日頃から地域の災害特性を理解し、コミュニティ活動をはじめとするネットワークを利用して活動している組織・団体である。日常生活の中で、地域の実情に即したきめ細やかな情報を活かし、防災活動について考え、更に「想像力」「バランス感覚」を養っていただけるような講習会内容としている。
  • (4) 消防ボランティアには、活動時、住民から識別してもらえるように、帽子・腕章・ヘルメット等を貸与し、平成9年度山形県総合防災訓練に参加している。

vol.4 026-029 P1Layer1

自主防災組織指導者講習会

vol.4 026-029 P2Layer1

初期消火訓練

vol.4 026-029 P3Layer1

上級救命訓練

vol.4 026-029 P4Layer1

消火器利用体験

vol.4 026-029 P5Layer1

市長より標旗が手渡される

vol.4 026-029 P6Layer1

地震体験コーナー

vol.4 026-029 P7Layer1

防災資機材の点検

vol.4 026-029 P8Layer1

倒壊家屋からの救出救助訓練

苦労・成功のポイント

 大規模災害時、防災活動の一端を担うのは地域住民である。まちの防災活動を進める上でコミユニティづくりは欠かせない。その推進力となるリーダーを育成しているが、リーダーが防災訓練や災害時に住民の先頭に立って指揮をとれるよう、自主性を尊重した講習会等を運営するなど工夫をこらしている。
 また、ボランティア活動は日常性・密着性という自主防災組織と同様な特徴を持つ他に、柔軟性、広域性といった特徴も併せて持つため、特徴を活かしたボランティア活動が行なわれるように講習会等に力を入れている。

成果・展望

  • 1.自主防災組織の育成
     平成7年度末に21の小学校区単位で自主防災組織が結成されたことは上述した通りであり、現在は町内会単位の組織化を図っているところである。町内会単位自主防災組織は、平成8年度末には僅か30組織であったにもかかわらず、平成9年度末には73組織、現在は132組織と全体の4割を超えており、町内会等の防災に対する意識が年々高まっていることの顕れであると考えている。今後、更なる組織化と各組織に1人以上の指導者がいて組織を育成強化できるような防災体制の充実を進めていきたい。
  • 2.防災ボランティアの育成
     本事業の取組みはまだ浅いが、先のナホトカ号重油流出事故の際には漂着油回収に協力をいただいている。
     また、当市と災害支援協定を締結しており、防災訓練にも参加している「アマチュア無線クラブ」や「鶴岡災害バイク協力隊」も防災ボランティア講習会に参加している。
     災害時、各人の特技を活かしたボランティア活動が行なわれることを期待している。
  • ~自主防災組織~
    • 実施期間
    •  平成7年~終了予定年度未定
    • 事業費
    •  1,720,000円
    • 団体の概要
    •  指導者講習会   平成7年度 28名修了
         〃   平成8年度 26名峰了
         〃   平成9年度 23名修了
       準指導者講習会 平成10年度 50名修了
         〃   平成11年度 33名受講
       小学校区単位自主防災組織 21組織(組織率100%)
       町内会単位自主防災組織 132組織( 〃 46%)
  • ~防災ボランティア~
    • 実施期間
    •  平成8年~終了予定年度未定
    • 事業費
    •  140,O00円
    • 団体の概要
    •  防災ボランティア登録者数 120名(平成11年4月1日現在)
       消防ボランティア登録者数 23名(平成11年8月1日現在)