第9回防災まちづくり大賞(平成16年度)

【総務大臣賞】~だれにも優しいまちづくり~ 緊急時要援護者支援システムの展開

【総務大臣賞】~だれにも優しいまちづくり~ 緊急時要援護者支援システムの展開

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舞鶴自治会・舞鶴自主防災委員会
(埼玉県坂戸市)

事例の概要

■経緯

 鶴舞自治会は創立30年を経過し、当初の入居世代も70歳前後が多数を占めるところとなり、緊急時の高齢者への支援が地域の重要な課題になってきた。こうした状況のもと、障害者も含め、大地震等の災害発生時に支援が必要な要援護者に対し、平常時の支援と緊急時の支援を両立させたシステムづくりが必要であると考え、緊急時要援護者支援システムを構築した。

■内容

 平成13年4月、自主防災組織を立ち上げるにあたり、最初に上がったテーマは、災害発生時における要援護者の支援問題だった。そのために、

  • ① 要援護者支援活動の仕組みをつくり、地域への定着向上を図り、継続維持すること
  • ② 平常時の支援活動と緊急事態にも備え得る体制を整えること
  • ③ 要援護者世帯と支援意思を有する世帯各々の情報を更新する機能を持つこと

 以上の3点に配慮して、鶴舞自主防災委員会独自の「緊急時要援護者支援システム」を構築した。毎年度1回実施する「防災調査」により、要援護者情報と近隣支援者情報を把握して機能している。現在では、要援護者数約50名に対し、80世帯が支援者となりサポートを実施している。現在ではこのシステムも定着し、要援護世帯から感謝の言葉が聞かれるようになり、要援護世帯が持たれる心労を癒す支えとしても価値のあるものとなっている。要援護者支援は、日常の支援活動を発展させるものであり、緊急時における民生児童委員の活動をサポートするシステムともいえる。自主防災組織・自治会組織・民生児童委員・地区支援者が、要援護者支援活動や地域の安全・安心に貢献できるよう、なお一層のシステムの充実に努め、他の地域においても広く発展することを念願するものである。

※ 緊急時要援護者支援システムについて

  • 1.情報の収集方法
     以下の方法で情報を収集。要援護希望世帯・支援可能世帯の情報は、民生児童委員と自主防災委員会が共有。

    • (1)防災調査/年一回(全約1000世帯・回答率85%)
    • (2)民生児童委員の日常活動
    • (3)地域住民からの情報及び要援護者世帯からの直接の申出
  • 2.情報の確認
     防災調査票に要援護者が同居し、緊急時に支援が必要と記入された世帯を自主防災委員と民生児童委員が戸別に確認する。
  • 3.支援者の確定
     要援護世帯が、近隣支援者として指名する方(世帯)があるか聞き取りする。特定の支援依頼先が無いときは、自主防災委員会が実施する「防災調査票」に支援協力の意志ありと記載された世帯を尋ね、援護を依頼する。近隣支援者2世帯に支援を依頼。
  • 4.防災調査票について
     鶴舞地区居住世帯の全てに配布し回収に努力した。回収率は概ね85%程度であった。調査票に記載された要援護支援を希望する方々には、自主防災役員と民生児童委員が一緒に家庭訪問の上、支援について説明し、要援護者と家族の現況を調査把握した。
     防災調査票の内容は、年度毎に内容が変更されるが、家族調査項目(世帯員年齢・性別構成)と要援護者調査は、基本的事項として継続した調査を実施している。
     緊急時には、家族構成などのデータは、消防本部・消防団活動の支援資料としても活用される。

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被害状況報告訓練

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防災調査票の集計

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防災フェスティバル(市長挨拶)

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防災バイク隊発足式

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防災バイク隊

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緊急時要援護者システムの概要

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防災フェスティバル

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要援護者システムの紹介

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要援護者の家族訪問

苦労した点

 要援護者のプライバシーに関する情報提供を必要とする支援活動のため、システムの信頼性確保の向上に努めた。また、情報収集活動に対する自治会組織機能の動員が得られるよう自治会運営への配慮もした。近隣支援者への支援依頼並びに要援護者から近隣支援者への情報提供に対し承諾を得ることは大変だった。支援情報カードヘの記載作業と支援者の守秘義務確認同意手続きの徹底にも苦労した。調査事項の集計作業やコンピュータへのデータ化も、時間がかかり大変な作業だった。

特徴

  • 1.平常時支援活動との相乗効果を生かしていくために、民生児童委員が参加し、有効に機能している。防災調査から得られた情報が、民生委員活動への大きな支援要素となり、また、民生委員が持つ独自情報と防災調査から得られる多くの情報を結合することによって、平常時にも手厚い援護ができるようになっている。
  • 2.高齢化杜会に対応できるよう、毎年情報を更新している。
  • 3.現在では地域の多くの方々が、要援護者支援の理解者になった。
  • 4.支援者が要援護者の状況を緊急時だけでなく日常生活の中でも意識するようになった。→ どうしているかな?日頃、それとなく気遣いする心の温かさが醸成された。
  • 5.防災調査票の記載事項は、住宅火災発生時の居住者確認データとしても活用。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 浦野 正樹(早稲田大学文学部教授))

 鶴舞地区は、東京駅から50キロ圏内にある坂戸市の1970年代に開発された宅地分譲型住宅団地で、開発当初は居住世帯の多くが東京に通うサラリーマン世帯であったという。それが、30年を経過して当初の入居世代は70歳前後に達する高齢型社会に移行した。この地区では、こうした30年以上に及ぶ地域での生活体験の蓄積が、活発な文化サークル活動や花いっぱい運動、夏祭り、文化展、運動会、ふれあい交流会など多彩な地域活動を育んできた。今回の防災まちづくり大賞の対象となった自主防災活動や夜回り防犯パトロールは、それら地域活動の一つの側面であり、同時に高齢化に直面した地域の危機意識のあらわれでもある。

 従来、都市的な高齢型コミュニティにおいては、自立自尊的な家庭生活の尊重ゆえに、互いのプライバシーにある程度踏み込まざるを得ぬ災害弱者対策をとることは難しいとされてきた。この鶴舞地区自治会・鶴舞自主防災委員会では、世帯事情と災害時のケア・ニーズを探る「防災調査」を毎年実施することと、徹底したプライバシーや人間関係への気遣いによって、この問題を克服しており、今後同じような問題を抱える他の地区でも参考になる優れた実践例だといえよう。その他にも、防災バイク隊と無線機の導入による災害時情報連絡システムの構築、日ごろのイベントに組み込み楽しみながら行う炊き出し訓練、近隣企業や施設との災害時の連携など、さまざまな工夫が多彩に取り入れられており、裾野の広い豊かなコミュニティの力量を感じさせる活動であるといえよう。

団体概要

■鶴舞自治会

 およそ1,000世帯、3,000人で構成する戸建て住居地区である。自治会創立30年を経過し、当初の入居世代も70歳前後が多数を占めるところとなり、高齢者対策が地域の重要な課題になってきた。

■鶴舞自主防災委員会

 平成13年4月に設立し、初年度から防災訓練・防災調査・その他、特に住宅防火活動を推進している(住宅火災警報機を自治会員全戸配付)。自主防災委員会には、約90名の自治会員世帯が参加し活動中。防災バイク隊を編成し情報収集活動を行うなど、ユニークな活動を実施している。

【要援護者と支援者の現況】

 要援護者数約50名に対し、80世帯が支援者となりサポートを実施中。65歳以上の高齢者は、およそ500名近く居住。

実施期間

 平成13年~