第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【消防科学総合センター理事長賞】大山自治会の防災減災への取り組み「人を助け、人に助けられる自治会-人が人にやさしいまち-

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
大山自治会の防災減災への取り組み「人を助け、人に助けられる自治会」-人が人にやさしいまち

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大山自治会
(東京都立川市)

事例の概要

■経緯

 大山自治会は、広大な土地に自然とスポーツ施設が共存する国営昭和記念公園のすぐ近く、都営上砂町1丁目アパート=通称・大山団地の自治会組織である。
 自治会では、人が人に優しいまちづくりを目指し、いつかは、自分も助けられるときが来るけれども、自分が元気なときには、近所の人を助けていくことを自治会と会員が実践をしている。人を育てる、あるいはすでにそこにいる人材を地域の宝として活用し、日頃の自治会活動の中に、上手に(楽しく)防災の視点を取り入れて、会員の共助の精神を醸成している。

■内容

  • 1. 相談、連絡、広報体制の整備
     自治会事務所と相談窓口を設置し、日頃から住民の相談事は受けられる体制を整備している。前記窓口の開設時間外においても、自治会長の専用携帯電話で、24時間いつでも住民から緊急の相談や連絡がとれる体制を整えている。また、自治会活動の周知のために、広報誌を年12回発行するとともに、居住外国人ために、自治会の取り組みや安全対策などのパンフレットを外国語で作成した。
  • 2. 住民登録の義務
     緊急時に備えて、住民の情報を収集登録し、必要に応じて民生委員、高齢福祉課、社会福祉協議会、包括支援センターと連携し活用するとともに、非常時に住民の安全確保するため、住民名簿を消防署、民生員に提出している。

    • 【登録情報】
    • ・ 全住民の名簿の登録(家族構成を含む)
    • ・ 車輌の登録
    • ・ 動物飼育者の登録
    • ・ 高齢者(65歳以上)連絡先の登録
  • 3. 防災組織の強化
     自主防災組織を結成、各係を決め、災害時の各自の役割を認識させ、防災訓練を通じて、組織充実改善を図っている。また、女性防火の会の設置や各区への連絡員の配置(26名)、救命講習の受講費を自治会負担とするなど、防災リーダーを育成している。また、施設の非常ベルの点検と高齢者の出火防止のための講習会(年3回)や消火器の点検を実施している。
  • 4. 路上違法車両の撲滅(路上の確保)
     非常時に緊急車両の活動の妨げにならないように、立川警察と連携し、路上駐車撲滅運動を月4回実施し、パトロール中に見つけた路上駐車に対しては、空いている駐車場の案内をするステッカーを貼っている。パトロール前に比べ、路上駐車は98%なくなった。また、路上駐車を排除するだけでなく外来者専用駐車場(120台)を用意している。
  • 5. イベントを通した防災活動
     クイズやゲームを行いながら地域内の防火用水、消火設備、備蓄倉庫、避難経路、避難場所、危険箇所を確認できるよう工夫をして、ウォークラリー大会を実施した。また同時に、協力員90名を募り、釜戸づくり(豚汁や焼きソバづくり)やテント設営(住民の休憩所)を行い、避難所運営について擬似体験した。
  • 6. 企業等との連携
     電気・ガス・水道・新聞配達員と協定し、使用量などから不審な場合は、自治会事務所へ連絡する体制を構築している。

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24時間対応の自治会専用携帯

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消火訓練の様子

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災害時には竈(かまど)にもなる駐車禁止ベンチ

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地域内の主な公共施設(大山小学校)

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地域内の主な公共施設(包括支援センター)

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自治会事務所

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大山公園

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自治会名簿

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外国語によるチラシ

苦労した点

  • 1. 自治会活動を行うための共助の精神を醸成するために、広報やネットワークづくりなど住民の意識啓発を行った。それだけでは、なかなか全住民に伝わらないので、月1回の区長会議を行うとともに、清掃活動などで直接、参加者へ自治会活動の周知を図り、住民の連絡、困りごとなどに自治会が迅速に対応することなどで信頼を得ていった。
  • 2. 防災につながる楽しいイベントで意識を高めること。⇒団地内ウォークラリーの開催
  • 3. 住民情報の登録の必要性の説明や情報管理について信頼してもらうことに苦労した。

特徴

  • 1. 市内の自治会加入率の平均が50%程度といわれているところ、大山自治会では、会員数約1,200世帯(人口約3,000人)を擁し、自治会加入率は100%となっている。
  • 2. 活動の基盤は「市能工商」である。
    「市」・・住民主体の自治会
    「能」・・各種技術を持つ人材の登録や発掘
    「工」・・創意工夫と多くの住民からアイディアを募る
    「商」・・コミュニティビジネスにより得た利益を住民へ還元する
  • 3. 各種登録制度により、住民の生活状況を把握するとともに、高齢者や子育てを支援するため、ママさんサポートセンターを設置。また、高齢者世帯については、非常時に備え親類等の連絡先の登録も行っている。⇒最近6年間孤独死はない。
  • 4. 東京都住宅供給公社により、全世帯全室に火災報知機を設置した。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 野村 歡(国際医療福祉大学大学院教授))

 都営住宅内にある当自治会は約1,200世帯(約3,000人)で構成されている。全世帯が自治会に加入し、月400円の会費を納入している。この会費を元に、専従職員を置き、住民の立場に立ったあらゆる相談(緊急時の子どもの預かり、役所への書類提出)や防犯見回りパトロール、日常の安否確認、悪徳商法追放策、災害時に備えた違法駐車のパトロールといった活動を行っているが、その一環に防災まちづくりが位置づけられている。
 会長の下に5人の副会長がおり、各副会長の下に5-6人の区長がいて、災害発生時に備えて「情報連絡班」「消火連絡班」「救出救護班」「避難誘導班」「給食給水班(炊き出しも担当)」といった役割を担っている。
 当団地にはシルバーハウジング(高齢者住宅)165戸が建設されていることもあって、高齢者780人(うちひとり暮らし190人)が生活し、この他にも障がい者がいるので、団地管理者に依頼して1階ないし上階であってもエレベータの直近の部屋に住み替えを行った。
 各世帯には「防災計画マニュアル~あなたの大切な人を守るために~」を配布している。また、災害発生に備え、ドラム缶を利用した竈(かまど)、U字溝を逆さにして緑色に塗って災害時には竈にもなる駐車禁止ベンチ等にすると言う。U字溝は平常時には自動車も進入禁止柵(ボラード)として日頃から住民の目に触れさせている工夫が見られる。
 防災訓練には、300~500人の住民が集まるが、このほかにもウォークラリーと称してゲーム感覚で消火設備、備蓄倉庫、避難経路、避難場所、危険箇所の確認を行っている。さらに特筆すべきは防災活動を始めとするさまざまな自治体活動に参加する住民全員に傷害保険(年27万円)を掛けている。

団体概要

名称
大山自治会
所在
東京都立川市上砂町1丁目13番地
規模
会員数約1,220世帯(人口約3,000人)
加入率100%
その他
自主防災組織あり

実施期間

 平成8年~