第15回防災まちづくり大賞(平成22年度)

【消防科学総合センター理事長賞】東藤島防火防災活動~自分たちの隣人、自分の地区を守るための組織作り~

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
東藤島防火防災活動 ~自分たちの隣人、自分の地区を守るための組織作り~

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東藤島地区自主防災組織連絡協議会
(福井県福井市)

事例の概要

■経緯

 東藤島地区は昭和20年7月「福井空襲」、昭和23年「福井地震」、「九頭竜川の決壊」、昭和38、56年の「福井豪雪」、更に平成16年7月の「福井豪雨」など幾多の大災害を経験しており、これらの災害に対処するには自助・共助の地域防災活動が、極めて重要であるとの認識を持ち、「自分たちのまちは自分たちで守る」を基本に災害に強い地域をめざして防火防災活動の普及に取り組んでいる。

■内容

  • 1. 自警隊の防火活動及び災害対応
     当地区は、昭和37年の福井市合併以前の旧吉田郡東藤島村の時代から地区内の各区に小型ポンプを所有した「自警隊」を組織して、災害の発生時には地元だけではなく地区内の全域からも応援出動して地区全体で防災と被害の軽減に努めていた。
     近年は郊外型の大型店舗が立ち並び第2の繁華街となっており、住民のコミュニケーションが年々希薄となり、自治会行事や自主防災組織の活動に際し多くの住民を参加させ活性化していくことが非常に難しくなってきていた。
     特に消火栓や道路整備により消防力が充実してきたことで、自警隊活動が低迷し小型ポンプの点検、訓練、災害出場に際し隊員の確保が困難となっていた。  そこで自主防災組織の結成を機に、自治会単位の自主防災組織ではなく、地区全体の消防組織として位置づけ、総合防災訓練、高齢者宅の住宅用火災警報器の設置や、消火栓の表示などの活動を通じて、防火防災意識の高揚を図った。  毎年、地区全域の自主防災組織を集めて放水訓練を実施し、点検・整備を含め常時災害対応可能な状態で維持管理に努め、郷土愛護の精神を鼓舞し災害出場に関しても他の自治会へ応援出場するなどの協力体制を構築した。  その成果として、平成18年9月に大和田町で発生した大規模火災でも、いち早く各防災会から11の自主防災組織が駆けつけて小型ポンプで消火・延焼防止の瞠目に値する活動を行っている。
  • 2. 自治会単位防火防災デー
     年1回開催の「地区連合総合防災訓練」に加え、昭和62年から自治会単位の「総合防火防災訓練」を企画し、地域での防火防災活動として住民に防火防災の啓発活動を本格的に実践している。東藤島地区ではこの活動が23年以上経過した現在でも自治会の重要な防火防災行事として定着している。
     連絡協議会が実施した主な内容
    • 1. 住民避難訓練
       各防災会員による避難誘導と、住民の避難訓練
    • 2. 情報収集・伝達訓練
       連絡協議会及び防災会員の情報収集及び伝達訓練
    • 3. 応急救護訓練
       避難住民による救護所設営訓練の後、地区内で開業の医師日赤奉仕団及び地区内在住の看護師によるトリアージと応急救護訓練
    • 4. 応急担架搬送訓練
       防災会員による応急担架作成と搬送訓練
    • 5. 倒壊建物救出訓練
       地元消防団員によりコミュニティ防災資機材を使用しての倒壊模擬ハウスからの救出訓練
    • 6. バケツリレー消火訓練
       避難住民が持参したバケツで、全員が参加して実施
    • 7. 小型ポンプ放水訓練
       各防災会員による小型消防ポンプの一斉放水訓練
    • 8. 炊出し訓練
       地区婦人会員による炊出し訓練
    • 9. その他
       土のう作り、スモーク、初期消火等体験訓練及び幼児の防災絵画と防災パネルの展示
  • 3. 住宅用火災警報器の全戸設置運動
     平成20年には東藤島地区自主防災組織連絡協議会が住宅用火災警報器を地区全域に設置するため、「住宅用火災警報器の全戸設置運動」を立ち上げ、専門委員会や説明会等を開催し、福井市で初めてとなる共同購入の先駆けとなり、高い設置率を実現している。この活動はその後の、共同購入の手本となり各地区からの要請でアドバイザーとしてノウハウを紹介し、福井市全域の設置率向上に一役を担っている。さらに、総務省消防庁企画の「平成20年度住宅防火対策シンポジウム」においてパネラーとして東藤島地区で実践した「住宅用火災警報器の全戸設置運動」を広く市民に紹介し、県内においても地区で行う設置活動の指針となった。
  • 4. 住宅用消火器の安心安全総点検
     平成22年には消火器の爆発事故が多発したことにいち早く着目し、地区内全家庭を対象として「住宅用消火器の安心安全総点検」事業を企画した。
     この企画は本来個人で実施すべき点検であるが、個人では手をつけないところを地区全体で実施することで、住民の安全を確保し、災害時に対応可能な消火器を地区全体で備蓄する効果がある。
     点検方法として自治会ごとに日時と集合場所を決め、そこで参加者に対して初期消火訓練を行い消火器の使い方や耐用年数、保管についての注意などを再認識させた後、各家庭から持ち寄った消火器を消防設備士の資格を持った業者が安全点検を実施する。これらの活動は各世帯が所有している消火器の正確な実態把握に繋がっている。

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住警器実演ハウス使用状況

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「住宅用消火器の安全安心総点検」の点検状況

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屈折車搭乗体験

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「火の用心」夜回り駅伝出発式

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コミュニティ倉庫の展示

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AED取り扱い訓練

苦労した点

 当地区は郊外型の大型店舗が立ち並び第2の繁華街となっており、住民のコミュニケーションが年々希薄となり、自治会行事や自主防災組織の活動に際し多くの住民を参加させ活性化していくことが非常に難しくなってきていた。
 防火防災意識の啓発を図るため、毎年より多くの住民が参加できるような総合防災訓練を企画および継続的に実施すること。特に、住宅用火災警報器の設置や消火器の安全点検など、本来個人で対応すべきものを「安心安全」の基礎と位置づけ、地区全体の大きな行事として実践し、地区住民の意識の高揚と普及設置を進めていくのに役員や関係者の献身的な努力を必要とした。

特徴

 防災に関する住民意識は低かったが、「福井豪雨」の災害を契機に、連絡協議会が主体となって住民参加型の訓練を毎年企画・実施し、地区全体で参加できるよう様々な活動を継続し、これに加え自治会毎でも防火防災訓練を実施する体制を築いた。
 個人で行う住宅用火災警報器の設置や消火器の点検を地区全体の行事として取り組むことで、常にひとり一人が防火防災の意識を絶やさないように事業展開している。
 これらの取り組みにより、他の地区ではない防災に対する高い意識が芽生え、あらゆる地区活動において活性化が図られた。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 濱田 省司(総務省消防庁予防課長))

 東藤島地区は福井市の最東部に位置し、約1,300世帯、4,200名が住む。近年は幹線道路網の整備とともに多くの商業施設も立地し、市内の副都心的な機能も備えてきているが、この地区で結成された自主防災組織の連絡協議会では、市内で他地域に先駆けて住宅用火災警報器の共同購入に取り組み、最近では約9割の普及率を達成しているという。
 東藤島地区内の各地域では、昭和37年の福井市との合併前の旧村時代から、小型ポンプを保有した自警隊が組織されていた。都市化の進展とともに自警隊の沈静化が進み、各自主防災組織の連携強化の必要性が痛感され、平成18年には自主防災組織を取りまとめる連絡協議会が組織された。
 この連絡協議会で、住宅用火災警報器の共同購入の取り組みを開始した頃には、地区内の17の自治会長の中にも反発や消極的な声が少なからずあったようだ。「義務化期限はまだまだ先なのに、なぜ自分たちだけが市内で一番に設置しないといけないのか・・・」云々と。しかし協議会幹部からの粘り強い説得と自治会長たちの間での話し合いが重ねられ、市当局や納入業者との調整や折衝を進めていく中で、「最初は義務感だけだったのが、だんだんと理解されていくに従い面白くてたまらなくなった」といわれるほど、共同購入の運動は盛り上がりを見せ、自治会長たちも自ら住民への説得や取り付け支援に足を運ぶまでになったという。
 そうした地域の盛り上がりは平成22年には新たな進展を見せた。住民からの発意により地域ぐるみで老朽化消火器の安全確認を行うことになり、各戸の消火器を持ち寄って専門家である消防設備士による集団点検が行われたのである。このように住民の間から自発的に活動が企画されるまでに至った背景には、連絡協議会と自治会連合会を束ねる北山会長や地域の公民館を預かる持田館長を中心としたリーダー達のたゆまぬ熱意の存在が大きい。今後も創意工夫に富んだ防火・防災活動で、安心・安全の地域づくりのモデルケースとして全国に発信し続けていただくよう、願ってやまない。

団体概要

東藤島地区自主防災組織連絡協議会
 福井豪雨の経験から19の自主防災組織が結成され、平成18年12月には自主防災会を取りまとめる「東藤島地区自主防災組織連絡協議会」を結成し毎月行われる地区自治会長会に合わせ、防災情報伝達方法や装備品についての勉強会などを実施し、市の担当者を講師に研修会を開催している。

実施期間

 平成18年12月~