第10回防災まちづくり大賞(平成17年度)

【消防科学総合センター理事長賞】高齢化社会を先取りし、高齢者自らが防災グループを作り、安全安心な町づくりを推進

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春日台シルバー消防隊
(神奈川県愛川町)

事例の概要

■経緯

 春日台シルバー消防隊のある地域は、昭和40年代前半に内陸工業団地の従業員向け住宅団地として造成された新興住宅地域であり、昭和44年10月に春日台自治会が誕生した。愛川町にある自治会としては、最後にできた自治会である。この自治会の役員=自主防災組織となっており、専門部活動が位置付けられ、防犯部や消防部があり、消火栓などの取扱い訓練等を実施していた。
 しかし、平成7年に自治会長の諮間機関として春日台21世紀ビジョン諮問会が設置され、「防災と福祉に強い町づくり」が諮問された。おりしも、阪神・淡路大震災が発生し、この貴重な教訓を生かそうと、公助の手が入るまで自分たちで地域を守る考え方が必要であるという強い認識と昼間人口が極めて少なくなること、また、継続して防災力の向上が期待できるようにするため地域の防災インストラクター的存在が必要であること等から平成7年7月に春日台シルバー消防隊が結成され、地域住民の防災意識の高揚と防災行動力に努めている。

■内容

  • 1.年間活動計画に基づき計画的に活動を実施している。
  • 2.隊員の防災行動力向上のための各種訓練の実施
    • ・ 小型動力ポンプ取扱い訓練
    • ・ 町主催の防災講演会への参加
    • ・ 普通救命講習会への参加
    • ・ 体力強化訓練(地元の山への登山)
    • ・ 消防署宿泊体験を伴う訓練
    • ・ 毎月1回定期訓練
  • 3.住民防災意識の高揚、防災行動力向上のための指導
    • ・ 町主催の防災講演会においての活動発表を行い、他の自治会への模範として活動の広がりに貢献している。
    • ・ 春日台自治会の防災訓練における消火訓練や応急手当訓練における指導による連帯意識の高揚と自助、共助意識の醸成に貢献している。
    • ・ 救急の日における消防職員と一緒に応急手当の普及啓発に努め、「応急手当普及推進の町」の推進者としても活躍している。
  • 4.消防庁の「地域安全安心ステーション整備モデル事業」に選ばれ、さらに活動を推進している。
  • 5.町行事への積極的参加
    • ・ 平成8年から町消防出初め式に継続参加
    • ・ 平成9年から隔年で行なわれている町総合防災訓練に参加
  • 6.火災予防意識啓発活動
    • ・ 火災予防運動における夜間広報の実施
    • ・ 少年消防クラブが行なう夜回り広報への参加
    • ・ 年末火災特別警戒活動(12月28日から30日の3日間)
  • 7.その他夏祭り防犯パトロールの実施など

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ポンプ配属式

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ポンプ配属式

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ポンプ配属式

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ポンプ配属式

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チェーンソー取扱訓練

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ポンプ取扱訓練

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器具点検

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消火栓取扱指導

苦労した点

  • ・ 結成時の人員の確保
  • ・ シルバー消防隊員自身の防災意識の高揚、これがないと継続して活動を実施することが困難となることから。

特徴

  • 1.世界に類をみない高齢化の進展の中で、「高齢者は助けられる存在」というイメージが一人歩きしているが、実は地域の大きな防災戦力であることを示している。
  • 2.自主防災組織が必要とされる予防活動、初期消火活動、救護活動など十分な活動能力を備えることができ、また、職場を離れて地域の防災リーダーとしての社会参加により生き甲斐を持って活動している。したがって地域住民の信頼が高い。
  • 3.自主防災活動の活性化の見本となっておりまた、他の地域で婦人防火クラブの誕生を誘発している。
  • 4.現在、自治会活動と連携し、安全安心な地域連帯感あふれる地域、災害時要援護者を守るという3つの視点で活動を推進している。
  • 5.昼間の災害時、シルバーパワー(平均年齢63歳)の活用を図る。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 長澤純一(独立行政法人消防研究所理事))

 春日台自治会は、昭和44年、内陸工業団地の従業員向け住宅地として誕生した新興住宅地である。平成7年、阪神淡路大震災が発生した当時の自治会長深沢さんが親戚のいる神戸の被災地を訪れたことが、シルバー消防隊の結成を呼びかけるきっかけとなる。以来10年以上「自分たちの街は自分達で守ろう!」を合言葉に、熱心にたゆまぬ活動を続けている。
 主な活動は、毎月一回の定時訓練、地域防災パトロール、講演会・研修会への参加等だ。なかには体力強化訓練としての登山や消防署宿泊体験というユニークなものもある。住民の防災意識の高揚、応急手当の普及、地域の防災訓練の指導等約1300世帯・3300人の地区住民のリーダーとしての活動も大切な役割だ。消防職・団員や行政とも良好な役割分担や協力関係を保っている。
 現在の隊員は、発足当時とほぼ変わらない14人。うち60歳以上が11人。ここでは、高齢者は、助けられる存在ではなく、勤めに忙しい世代に替って地域の大きな防災戦力になっている。17年度は地区内に火災が1件もなかったこと、「シアトルを追い越せ」という掛け声も勇ましく応急手当の受講者の比率が高いことや他の地域での婦人防火クラブの誕生の誘発など、着実に成果も挙げている。定年退職後のシルバー世代の生き方や新興住宅地の住民相互の結束を強める一つのモデルになる点も評価したい。
 加藤副隊長は、一例として防火水槽の蓋を開けるにも怪我をしないように技術を磨く必要があると語るなど、ますます向上心旺盛だ。今後は、大規模地震のけが人の救出など防災対策に一層力を入れたいと熱っぽく語る。
 「永遠のマンネリ」(牧野自治会長)、「偉大なるマンネリ」(深沢さん)という言葉は、10年以上も活動を続けてきた人の口から出ると重い響きがある。是非「意気に感じる」後継者を養成して、今後も活動が永続することを期待したい。

団体概要

  • ・ 愛川町春日台区
    世帯数:1,307世帯
    人 口:3,320人
  • ・ 春日台シルバー消防隊:14人
  • ・ 春日台自治会=自主防災組織(構成員55人)

実施期間

平成7年7月~