第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【消防科学総合センター理事長賞】忘れない 阪神・淡路大震災 ~安全・安心のまちづくり~

消防科学総合センター理事長賞(一般部門)
忘れない 阪神・淡路大震災 ~安全・安心のまちづくり~

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愛宕一之部防災会
(東京都港区)

事例の概要

■経緯

 愛宕一之部防災会は、東京の中心地域に位置する新橋駅周辺の事業所及び飲食店街で構成する発展著しい典型的なビジネス街と、全国的に有名な繁華街とが混在する街区を活動範囲としている。そのため、昼間の就業人口に比べて、夜間人口は著しく減少する特異な地区である。
 その反面、昔からのビジネス街として駅周辺に小さな店舗や住居が密集している地域が残っており、災害発生時における人命危険は極めて高い。
 また、この地域でも少子高齢化の影響は大きく、住民の高齢化が年々進んでいる。このことから、地域の防災行動力を高める必要性を認識し、「自分たちの町は自分たちで守る」をモットーに、平成12年4月26日に、17町会・自治会から構成される「愛宕一之部防災会」を結成し、地域と密着した「災害に強いまちづくり」を目指し日々活動している。

■内容

 防災会を結成以来、地域と密着した「災害に強いまちづくり」を目指して、防災会主催の防災訓練を消防署、消防団と連携して毎年発災対応型訓練から、初期消火訓練、自動体外式除細動器(AED)を活用した心肺蘇生法、震災用救助資器材取扱訓練等を行っており、防災行動力の向上が図られている。
 また、多くの住民、事業所の関係者が参加し、昨年度の参加者は約700名に及ぶ大規模な訓練となっている。本年度も10月に防災訓練を予定している。
 その他、下記のとおり多岐にわたる活動を行っている。

  • 1. 平成17年、JR新橋駅西口駅前広場の改修工事をする際に、消防水利の不足地区であることを知り、震災時の水利確保のため近隣事業所に積極的に働きかけ、区と連携して雨水貯留槽(60t)の設置をし、震災時等の水利を確保した。
  • 2. 災害発生時には、消防団との密接な連携による効果的な活動を実践するために、平成17年9月に、消防団に3台の可搬ポンプ積載車を寄贈し、消防団の機動能力の向上を図り、地域の防災行動力の向上にも大きく寄与した。
  • 3. 平成18年4月から、JR新橋駅西口駅前広場にある大型スクリーン広告「新橋ファロビジョン」の放映権を一部買い取り、毎日9時から18時まで、毎時1回ずつ、火災予防及び火災による死者防止、消防団員募集、住宅用火災警報器設置促進、震災時の家具類の転倒・落下防止、救急車の適正利用等の広報を消防署、消防団と連携して継続的に年間を通じて365日行っており、多大な広報効果を挙げている。
  • 4. 平成18年7月に、防災会の構成町会である3町会と近隣の福祉施設「福祉プラザさくら川」が、災害時応援協定を締結し、有事の事態に備えた地域の広域的かつ密接な協力体制を構築した。
  • 5. 各地で発生した各種災害からの教訓を得るため、毎年、防災研修を実施しており、阪神・淡路大震災の神戸震災記念センター、淡路島北淡町の震源地の視察をはじめ、雲仙普賢岳の火砕流災害現場、福島の第二原子力発電所等を視察し、地震の恐ろしさや備えの必要性について、防災会員の防災意識の向上に反映させた。また、震災時の災害対応の重要性を学び、災害時支援ボランティアに多くの町会員が登録している。
  • 6. 地域的に事業所と飲食店が多い地域であることから、毎年開かれる地元最大のお祭り「新橋こいちまつり」(参加者延16万人)では、地域、町会・自治会との防災コミュニティの場として、町会員と事業所が一体となって消防署、消防団と連携し、防災PRコーナーを設けるなど、地域の防災コミュニティの醸成に努めている。

■成果

 多岐にわたる活動を経て、各町会、自治会、地元事業所また、消防署、消防団と緊密な協力体制を確保でき、日本有数の繁華街の安全・安心を守っている。

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大型スクリーン広告「新橋ファロビジョン」

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大型スクリ-ン広告による広報

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JR新橋駅西口駅前広場 雨水貯留槽

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発災型防災訓練

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震災対策用救助資器材の取扱訓練

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大型スクリーン広告と雨水貯留槽設置広場

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初期消火訓練

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救助訓練

苦労した点

 東京の中心地域に位置する発展著しい典型的なビジネス街と、全国的に有名な繁華街とが混在するなかに、昔からの小さな店舗や住居が密集している地域も抱える地区であるとともに高齢者も多い。また、事業所は昼間業務中であることから、防災訓練の参加者を集める事にも苦慮する状況であった。
 防災会が毎年訓練項目を変える等、工夫を重ねた結果、今では参加者は年々増加している。

特徴

  • 1. 阪神・淡路大震災から13年が経過したが、記憶を風化させる事のないように、各地の災害現場への防災研修を継続して実施している。
  • 2. 地元消防団との緊密な連携、活動能力の向上のために可搬ポンプ積載車を寄贈した。
  • 3. 防災会には、東京消防庁災害時支援ボランティアの立ち上げの中心となった町会長がおり、長年の経験を生かして、各種訓練、行事の運営、関係機関等との調整等に大きな力を発揮している。
  • 4. 各町会、自治会長を中心にまとまりが良く、月例で会合を持ち、常に新しい情報を収集し、活動へ反映させている。また、町会・自治会、事業所、消防団、愛宕母の会、消防団友の会等との連携を密にし、相互の協力体制を作り上げている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 中林 一樹(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授))

 東京JR新橋駅前の繁華街は、居住人口よりも来街人口が圧倒的に多い地域である。この地域は芝消防団の第1分団の区域でもあるこの地域には、17の町内会・自治会団体がある。この町内会・自治会の防災部が連携して愛宕一之部防災会が組織されたのは1999年のことである。鉄道発祥の地であり、機関車のモニュメントで有名な新橋駅前広場を東京のヒートアイランド対策として雨水浸透・貯水・循環型の都市冷却装置化に改造するというプロジェクトが持ち上がった時、かねて阪神・淡路大震災の教訓から「地域防災の要は人の輪」と考えてきた地域の皆さんが立ち上がったのである。不燃化が進んでいるものの、飲食店の多い繁華街である。出火の可能性が高いが、都心の一角を占める新橋駅前地区では地価が高く、震災時に不足するといわれていた消防水利が整備されていないことを知って地域から提案し、駅前広場の散水用の雨水貯留施設を60トンの耐震貯水槽に拡張することになった。これが大きなきっかけとなり、それまでも親睦会として交流していた17町内会・自治会で「愛宕一之部防災会」を結成したのである。
 繁華街の地域防災の取り組みは、居住者だけの問題ではなく、地域の事業者とくに中小規模の事業者と連携することが重要だ。そこで、多様な地域における防災の企画をきめ細かく通知して事業所の参加を呼びかけ、多様な防災訓練への参加はもちろん、今では地域の消防分団の団員は定員を満たしているが、その過半が事業所の従業員団員なのである。防災会では、軽可搬ポンプ積載車を3台寄贈し、消防団活動を地域と一体的に進めており、発災対応型防災訓練も各町会防災班・地域の人々と消防団が一緒になって毎年工夫しながら実践しているのだ。
 都心地域であり、少子高齢化で廃校となった小学校を活用した桜田公園と生涯学習センターは、この地域にとって防災活動の拠点である。そこを会場に700人もの居住者・事業所従業員が参加して繰り広げる防災訓練は、会場に入りきれないほどの熱気に溢れる。また、多くの来街者にも、駅前広場のどこからも見通せる大型ビジョンの放映権を買い取り、定時にさまざまな地域活動メッセージを映像とともに発信している。「消防団員募集中」のメッセージも流れている。地域の福祉施設と近隣の3町内会が災害時支援協定を結んだり、さまざまな先進地域に出かけて、更なる防災学習を「楽しみながら」展開し、地域のお祭りを通して事業所との連携を深めるなど、「居住者と事業所が力を合わせ、みんなで進める安全まちづくり」が、世界都市東京の都心で繰り広げられている。

団体概要

世帯数
2,104世帯
住 民
3,555名
役 員
9名
班 員
19名

実施期間

 平成12年10月~