第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【日本防火・危機管理促進協会理事長賞】地域総合力の発揮による安全安心な町づくりの構築

日本防火・危機管理促進協会理事長賞(住宅防火部門)
地域総合力の発揮による安全安心な町づくりの構築

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東寺方自治会
(東京都多摩市)

事例の概要

■経緯

 東寺方地区とその近隣区域で、平成12年から18年の間に25件の放火が連続発生した。そこで、平成15年に自治会で緊急放火対策会議を開き、「自分たちの町は自分たちで守る」をキーワードとして、毎週日曜日に夜警を実施することになり、現在も継続している。また、住警器の費用を自治会費で一部負担して共同購入による設置促進を現在進めている。
 平成20年は、広域災害での対応力を自治会の自律的な力でアップさせ、その経験を蓄積し有事に対応するため、関係防災機関、関係団体など38団体が参加する大規模な訓練を企画し、実戦的な総合防災訓練を実施した。なお、この訓練を企画、実施するにあたり、多摩市全体にこのような地域の災害対応力が芽生え、強まることを願って、多摩市の「市民提案型まちづくり事業補助金制度」に応募し、プレゼンテーションの結果非常に高い評価を得て、市の補助対象となった。

■内容

  • 1. 活動期間や活動の頻度
     平成12年から連続して放火が発生したことを受け、平成15年に自治会で緊急放火対策会議を開き、ボランティアパトロール員を広く募集し、毎週日曜日の夜7時から9時まで交替でパトロールを実施している。
  • 2. 取組の規模
    • ①地域住民67名のボランティアパトロールの登録があり、交替で夜警を実施するとともに夏休み期間中には子供会による拍子木を使ったパトロールも実施している。
    • ②平成20年11月に行われた総合防災訓練では、近隣の自治会、管轄の消防団、多摩市役所、多摩消防署、多摩中央警察をはじめ社会福祉協議会等38団体と連携した訓練や、地元サッカー少年団による炊き出し訓練を実施し、550名が参加した。
  • 3. 地域の防災や社会への貢献度、実施効果
    • ①夜警を6年間にわたって毎週実施していることで、「自分たちの町は自分たちで守る」という防災意識が向上し、平成12年から18年まで25件あった放火が、平成18年以降は0件になり、地域の高齢者の方から「これで安心して眠れる。ありがとう」との感謝の手紙が多数あった。
    • ②総合防災訓練では、災害時要援護者の避難訓練を実施し、要援護者に対して役員の中から介護の資格のある者を付けるとともに、社会福祉協議会から車椅子を借用することで防災訓練に参加しやすい環境作りをし、要援護者に対する地域のサポート体制を向上させた。
  • 4. 団体が中心となって、主体的に取り組んでいる内容
     住民による毎週の夜警に加え、平成21年7月には住警器の費用を自治会費で一部負担して共同購入を行い、設置促進を推進している。
  • 5. 署や他の行政機関、事業所等との連携の状況
    • ①放火対策のため、多摩市や都に働きかけて暗い道路に街路灯を20ヶ所以上設置し、放火されにくい環境を作り地域の防災力向上を図った。
    • ②平成20年に行われた総合防災訓練では、社会福祉協議会や障害者施設と連携し災害時要援護者の避難訓練、地元大学のボランティアサークルに協力しAEDの取扱訓練、近隣の料理学校に協力し緊急避難用料理作りを行った。

■経緯

  • 1. 6年間にわたる毎週の夜警や定期的な各種の見回り、市や都に積極的に働きかけて街路灯を設置したことにより、平成12年から18年まで25件あった放火が、平成18年以降は0件となった。また、夜警を通して地域の防災意識が向上した。
  • 2. 要援護者に対して積極的に防災訓練への参加を呼びかけるとともに、参加しやすい環境作りをし、地域住民の要援護者に対するサポート体制を向上させた。
  • 3. 自治会による住警器の設置促進により41世帯、140個の申し込みがあった。

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子供に対する放水体験

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家具転倒防止普及啓発

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初期消火訓練

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AED取扱訓練

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防災マップを作成し会場に掲示

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災害時要援護者対策について掲示

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災害時要援護者対策について掲示

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関係機関と水災現場視察

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関係機関と水災現場視察

苦労した点

  • 1. 平成20年に実施された総合防災訓練を企画立案する際、実戦的な訓練にする為できる限りの動員を得ようと各種団体との交渉を重ね、連絡調整に苦労した。
  • 2. 多くの災害時要援護者に防災訓練に参加してもらおうとサポート体制を整えたが、個人情報保護法の関係から直接行政から情報が得られず、勧誘に苦労した。

特徴

  • 1. 「自分たちの町は自分で守る」をキーワードに、6年間にわたり多くの住民が交替で毎週夜警を実施したことを積極的に行政に働きかけ、街路灯の設置につなげた他、連続放火に対する情報提供を得た結果、放火が現在まで0件となった。また、子供会によるパトロール、サッカー少年団による炊き出し訓練等子供の防災意識の向上に積極的に取り組み、更に住警器の設置促進を進めており、地域全体の防災力向上が図られている。
  • 2. 情報共有が進まない中、自治会役員や地域の住民が災害時要援護者に対して積極的に防災訓練への参加を呼びかけるとともに、介護の資格のある住民の募集、車椅子の借用等地域が一体となって防災訓練へ参加しやすい環境を整え、地域住民の要援護者に対するサポート体制の意識の向上が図られた。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 吉田 忠((財)日本防火・危機管理促進協会常務理事))

 市民提案型のまちづくりを積極的に、かつ、実践的に展開して住宅防火の防災対策を向上させている事例と言える。
 自治会員を中心として、盆踊りや祭礼に力を発揮する地域の団体に協力を仰ぐとともに、保育園、小学校、中学校、福祉施設をはじめとして、近隣大学のボランティアサークル、調理製菓専門学校、電力・ガス会社、防災グッズ販売関係者など、積極的に多くの方々に働きかけをしたものである。自治会が主催した防災訓練としては、市役所、消防、警察などの防災関係機関も参加して大規模な防災訓練がされている。
 活動の発端は放火が連続的に発生したことであるが、消防署の協力を受けつつ緊急雇用対策事業の助成などを活用して、定期的にパトロールを開始している。子供たちの通学途上の安全にも活動を広げて、地域の安全・安心に積極的に係わってきた日頃の地道な取り組みの賜物と言える。
 最近では、絵を小学生から、作文を中学生から募集した“笑顔の挨拶の推進”運動、わんわんパトロールマップ作成などによる“こどもをより多くの大人の目で見守る”運動、ジョギング、散歩グループを強化する“パトロールメンバーの増強”運動、自然と慈しむ心を育む“ホタルを楽しみたい”運動、道路の清掃、花植えによる“きれいな町づくり”運動など、より住みやすく、安心安全な町づくりに関して、自主的で自律した活動を積極的に展開されている。
 皆さん方が自ら考案されて、地道な活動であるがそのレベルは高く、その地域に居住できる幸せを感じる取り組みに、深く感銘した次第である。

団体概要

東寺方自治会
世帯数
700世帯
住民
2,100人
役員数
25人

実施期間

 平成15年7月~