第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【消防庁長官賞】大規模災害時のアマチュア無線による地区内災害情報連絡網の整備

消防庁長官賞(防災情報部門)
大規模災害時のアマチュア無線による地区内災害情報連絡網の整備

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福井市「社南地区や(しろみなみちく)防災アマ無線クラブ」
(福井県福井市)

事例の概要

■経緯

 地震等の大規模な災害が発生した場合、当地区(世帯数4,160戸、自主防災会数35、面積9.5km2)の自主防災会連絡協議会組織は、地区中心の広域避難所にいち早く災害対策本部を設置し、各自治会避難所の避難状況や地区内の災害情報の収集に充たることになっている。年1回の防災訓練では携帯電話を利用し情報の収集を行っているが、実際に大規模災害が発生するとライフラインは遮断され、当然、携帯電話は通信不能が想定される。この状態に至った時、災害情報は途絶え、対策本部の機能は麻痺し暗中模索状態になると考えられる。
 そこで、この通信不能状態の時、アマチュア無線が電波法第52条を適用して災害情報伝達の手段として活躍できると考え、地区内アマチュア無線愛好家に声をかけ取り組みを開始した。

■内容

  • 1. 地区の自主防災連絡協議会の広報誌に「アマチュア無線愛好家に災害時非常通信ボランティアの募集」を行った結果、地区内アマチュア無線愛好家19名から協力の意思表示があった。その後、自主防災会役員を始めとする15名から、アマチュア無線従事者免許取得に挑戦しこの取組みに参加したいとの申し出があり、免許既得者は無線従事者免許取得を支援し見事全員15人が資格を取得した。その後も地区住民からこの取り組みに賛同して入会する者も現われ、現在の会員数は39名にも達している。
  • 2. 総務省総合通信局に名称「社南地区防災アマ無線クラブ」社団局を申請し、呼出符号「JH9YWA」が付与され基地局としての社団局が開局し、ハンディ無線機との交信は全地区内をカバーしている。
  • 3. 災害時は住宅固定無線局、モービル無線局の利用は禁止。会員38名がハンディ無線機(防災会一部購入費用補助)を携帯行動し、災害非常通信時のフットワーク性を重視している。
  • 4. 公民館の基地局にはバッテリー電源による移動可能アマ無線機とアンテナが常設されている。
  • 5. 日頃から(毎月第二木曜日)基地局からのロールコールによる通信訓練が実施されている。
  • 6. 発災時には、各自の「発災時行動マニュアル」での行動が確立されている。
  • 7. 災害現場の位置情報は住所や番地では無く、独自マップ「社南地区災害時情報マップ」を用いて縦横の座標で地点を特定する方法を用いている。

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クラブ発会式集合写真

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アマ無線技術講習会

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情報伝達防災訓練

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非常通信運用研修

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公民館まつりクラブ公開

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情報伝達防災訓練

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クラブ総会集合写真

苦労した点

  • 1. 総合通信局に申請した「防災アマ無線クラブ」の名称は、電波法の例外として認められる「目的外(非常)通信」を目的にしているアマチュア局と受け取られ、「防災」用語を用いた名称は「アマチュア無線本来の趣旨に反している」ということでこの名称承認には困難を極めた。
     総合通信局には本局はあくまでアマチュア業務を行う目的の局であることを強調し、今日のアマチュア無線の災害時の対応に対しては社会から大きな期待が寄せられている現状を鑑み考慮願いたいと再三の申し入れの折衝でようやく当初の名称が認可された。
  • 2. 住所・地番の知らない者が災害現場の位置情報をどのように連絡するか。そこで、地区内地図に縦横に100m間隔に罫線を引き、縦軸数字、横軸英字の位置座標にて目標地点を簡単、的確に特定し連絡する方法を考えた。

特徴

  • 1.私たちの活動は、大規模災害が発生した時、総務省が中心となって活動している地区非常通信協議会の広域非常通信網とは活動を異にし(必要に応じ連携)、小さな1地区内の地区自主防災会災害対策本部に対して、災害情報、救援要請等の通信伝達網の確立を目指している。大規模災害の場合、発災時から行政等の救助が来るまでの72時間内の地域住民の初期救助等が最も減災に繋がるといわれている。これらの災害初期情報伝達をアマチュア無線家のボランティア活動によって減災に繋がることを信じ日々活動している。
  • 2. 現場からの災害対策本部への災害情報の位置情報は、住所では一切報告せず、各自が所持している「地区災害時情報マップ」に記載された縦横座標軸の英字と数字を用いた交点座標で、その地点を特定し報告することになっている。また、その訓練を毎月定期的に行っている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男((株)マヌ都市建築研究所所長))

 電波というメディアを使って交信を楽しむアマチュア無線には、機材の操作に加えてロマンやファンタジーといった何か人を魅了するものが存在するようだ。アマチュア無線は仲間同志の交信だけでなく、海難事故や自然災害などの際にも活躍し、社会貢献するケースが少なくない。先年の岩手・宮城内陸地震では、中山間地域のアマチュア無線が活躍し、避難・救助に役立ったことは記憶に新しい。アマチュア無線は、本来的に趣味と社会貢献がセットとなっている活動のようだ。福井市、社南地区の「防災アマ無線クラブ」は、アマチュア無線の新しいスタイルをつくり出した。町に住む無線愛好家が集まって、アマチュア無線を災害時の情報伝達手段としてより積極的に活用しようとグループを立ち上げ、組織化したのである。このグループのユニークなところは、①無線の楽しさと災害時の非常通信の重要性をアピールし、同好の士を募ったこと。②必ずしも広域的な通信を行うのではなく、自分たちの住む地域(社南地区)に限定して交信ネットワークをつくったこと、③位置情報を確実にするために100メートルグリットの専用の災害時情報マップを作成し活用していること、④発災時の行動マニュアルを整備し、毎月、ロールコールという通信訓練を行っていることなどである。電波法の制約もあり、新しい取り組みには様々な創意工夫が求められたようである。このような民間組織による地区防災的な無線ネットワークづくりは、全国でも初めての画期的な試みではないだろうか。
 社南地区は福井市の西南に位置し、世帯数4,170、人口12,600人が住む農村と住宅が広がる新興住宅地である。基地局は災害時には避難所となる地区公民館の一室に置かれ、全域に居住するメンバー38名と交信できるようになっている。地震など、携帯電話が使えないような災害時には、アマ無線による情報通信は大きな威力を発揮するだろう。社南の町は心強い助っ人を得たことになる。福井市は戦災で焼かれ、昭和23年の福井地震、九頭竜川決壊、平成16年福井水害など、大きな災害を何度も経験している。防災に対する住民意識は風化していないように見受けられた。メンバーも徐々に増え、女性も含め様々な職業の人たちが参加しているが、月一回のロールコールとその後の交流会が楽しみのようだ。アマ無線を通した新しいコミュニティが育ちつつある。「近い将来、小中学生にも呼びかけ、仲間に入れて活動を盛り上げたい」とリーダーの山田さんは抱負を語ってくれた。まずは、独創的でしなやかな取り組みに敬意を表したい。

団体概要

構成人員
39名(38名:アマチュア無線従事者免許取得者)
福井市の1地区 社南地区(やしろみなみちく)
地区内のボランティアで募ったアマチュア無線愛好家で構成
名称「社南地区防災アマ無線クラブ」(呼出符号JH9YWA)

実施期間

 平成20年4月~