第8回防災まちづくり大賞(平成15年度)

【消防科学総合センター理事長賞】「防災と福祉のまちづくり」推進

【消防科学総合センター理事長賞】「防災と福祉のまちづくり」推進

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都市防災研究会 (神奈川県横浜市)

事例の概要

■経緯

 平成7年の阪神・淡路大震災を契機に発足した。市民に対する防災意識の啓発・普及、防災対策の推進、行政に対する提言、ニュースレター(会員主体)の発行、防災に関する調査・報告書作成の実行、シンポジウム、セミナー、パネルディスカッション、親子防災キャンプ、防災と福祉のつどいなどを実施している。

 阪神・淡路大震災では、高齢者を中心とする要援護者に犠牲が集中した。今後益々進展する少子高齢化社会に備えて(2020年には単独世帯が40%を超えて世帯類型のトップ、2006年には高齢者が5人に1人、2015年には4人に1人)、「防災と福祉のまちづくり」を中心に活動している。

■内容

  • 1.「防災福祉マニュアル」の刊行(平成14年5月)

     東海地震強化地域新指定域からの注目を浴び、平成15年は大田区出張所21ヶ所に各2冊配備し、日本障害者リハビリテーション協会から優秀な評価を得た。
  • 2.親子防災デイキャンプ(平成14年8月4日、関東学院大学金沢文庫キャンパスにて)

     各世代に呼び掛け、約600名余の参加があった。また、防災競技や防災サバイバルクイズなどを実施した。特に、小・中・高・大学生・社会人・高齢者・障害者・外国人からなるチームを編成し、競技を実施した。なお、本活動の記録として、「2002親子防災キャンプ・記録集」を発刊した。
  • 3. 防災と福祉のつどい(平成15年2月9日)

     JR根岸線、本郷台駅前広場で防災福祉関係の車輌を展示し、緊急時の要援護者搬送、隣接アースプラザホールでの防災紙芝居、神戸の語りべ、高校生の防災演劇、会議室での民生委員対象の防災福祉マニュアルセミナー等を実施した。)
  • 4.その他
    • (1)防災ギアザリングでのパネルディスカッション(県民センターにて)
    • (2)第7回震災対策技術展でセミナーシンポジウム(神戸国際展示場並びにパシフィコ横浜にて)
    • (3)サバイバルウオーク(毎年1月に実施)
    • (4)人と防災未来センターへ研究会関連著書を一括贈呈(平成14年4月)
    • (5)防災と福祉のまちづくりセミナー(平成14年度は3回実施、参加者75名)

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応急手当講習(2002親子防災デイキャンプ)

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防災と福祉のまちづくりセミナー

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消火=命のリレー(2002 親子防災デイキャンプ)

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トリアージ(2002 親子防災デイキャンプ)

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トリアージ(2002 親子防災デイキャンプ)

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高校生の防災演劇(防災と福祉のつどい)

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高校生の防災演劇(防災と福祉のつどい)

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要援護者搬送訓練(防災と福祉のつどい)

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神戸の語りべ(防災と福祉のつどい)

苦労した点

 活動案内はチラシ、HPなどで広報する他、新聞(マスコミ、ミニコミ紙)、情報誌等でも紹介しているが、イベントによっては人集めがうまくできていない。例えば、演劇鑑賞や防災紙芝居観覧に、小・中・高校生へのPRが行き届いていない。また、多数のスタッフを必要とするが人手不足の面もある。平成14年10月より横浜市の市民活動共同オフィスに入居したことにより、行政とのパイプは地理的条件も相まって強化されたが、事務所スタッフがほとんど事務局長1人に依存しているので、収入源の強化による事務スタッフの採用も課題である。

特徴

 横浜市の中区、西区では、平成14年に平均世帯人員が1.9人となったが、世帯人員の減少は全地域で進行する問題である。単に個人の問題で防災に取り組むのではなく、地域全体の問題として捉えなければならない。益々増加する介護保険認定者(すでに300万人超)の半数は痴呆症の方であることから、地域で支える防災と福祉のまちづくりが、これからの21世紀初頭の最大の課題である。そのため、全世代が交流する機会として、キャンプやつどいが重要である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 中林一樹(東京都立大学大学院都市科学研究科教授))

 阪神・淡路大震災(1995)から10年目を迎えようとしているが、ボランティア団体であるこの組織も、大震災をきっかけに「横浜防災都市懇話会」として発足した。呼びかけ人の急逝により中断したが、1996年に「都市防災研究会」として再出発し、現在では210名余の会員と約30名の役員によって神奈川県を中心に活発な活動が展開されている。最近の主要な活動では①防災と福祉のまちづくりセミナー(自主防災組織リーダー育成連続講座)、②防災・防犯・福祉のまちづくりフォーラム(共催)、③防災研究発表会(会員対象)、④地震と防災の旅(研修旅行)などであるが、それ以外に⑤親子防災デイキャンプ、⑥神奈川サバイバルウォーク(協力)、⑦安全・安心まちづくりワークショップ(協力)、⑧福祉と防災のつどい(実行委員会参加)⑨関東大震災から80年:市民の命をどう守るシンポジウムなどの他、市民の目線からの調査研究活動も実施されている。そうした調査研究の成果として地域における高齢者のための防災対策を中心に『防災福祉マニュアル』にまとめて刊行するなど、いくつかの刊行物については、全国各地から問い合わせが来ている。

 この研究会は、直接被害の軽減のための物づくりとしての防災街づくりよりも、災害対応や二次的な被害軽減のための防災人づくり・防災組織づくりに主眼をおいて活動してきた。いわば熱しやすく冷めやすいソフトな防災まちづくりであるが、その多彩な活動が継続し、むしろ徐々に発展しているところに感心する。現在、神戸に支部ができ、またNPOに申請中ということであるが、行政と協働して多彩な活動を展開して、全国における地域の人・組織による防災力の向上に向けて、都市防災研究会のいっそうの活性化が期待される。

団体概要

 都市防災研究会:主として神奈川県を中心に活動。会員205名(学生・主婦・社会人・大学教授・定年退職者などから構成)。平成7年12月に都市防災懇話会として発足した。提唱者の藤本一郎氏(関東学院大学学長)の急死を乗り越えて、平成8年に現在の組織に発展した。

実施期間

 平成8年~