第4回防災まちづくり大賞(平成11年度)

【消防科学総合センター理事長賞】自然と愛情あふれる福祉の町“おだ”をめざして

【消防科学総合センター理事長賞】自然と愛情あふれる福祉の町“おだ”をめざして

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おだPFWチーム(愛媛県小田町)

事例の概要

 愛媛県上浮穴郡は、愛媛県の中央南部、四国山脈の中腹に位置し、小田町を含む2町3村から構成され、723.5k㎡の広大な面積に1万7千余人が暮らす山間地域である。
 山村地域の例に漏れず、過疎化、高齢化の波が押し寄せ、人口はここ30年間で半減、65歳以上の割合は郡全体で35.56%、中には45.64%を占めるという村もある。(平成11年4月1日愛媛県高齢者福祉課調べ)
 従来、小田町内における高齢者の健康状況,防犯,防火,生活指導などの保護活動は、町社会福祉協議会と久万署(3駐在所)、上浮穴消防署(1分駐所)の三者が、各分野ごとに個別に展開していた。しかし、「著しく進展する過疎化、高齢化社会に対応するためには、互いが協力し合って、組織の枠を越え効果的な保護活動を展開しよう」との機運が高まり、平成6年4月1日に、三者が連携し高齢者などを保護し合う「おだPFWチーム」(Police,Fire,Welfareの頭文字)が発足、弱者に対する情報を共有化し、各々の職務に限定することなくボランティア的な対応も含めて共同で対処している。いくつか代表的な事例を以下に紹介する。

  • (1)「ふれあい広場~人生楽しく長生きしよう」
     家にこもりがちにならないようにと、お年寄りと駐在所員・消防署員・ホームヘルパー・ボランティアが一堂に会し、ふれあいを深めている。
     駐在所からは「交通事故から身を守るための交通安全クイズ」や「悪質な訪問販売などからお年寄りを守る防犯講話」、「愛媛県警音楽隊によるドリル演奏」など、消防からは「119番通報訓練」、「初期消火訓練」、「消防救助隊による救出実技披露」など、社会福祉協議会からは「血圧測定などの健康チェック」、「給食サービス」など、交流を深める中で安全で健康に暮らす方法を学んでいただいている。
  • (2)「粗大ゴミ収集」など、お年寄りの困りごとに対処
     高齢や一人暮らしであるために処分できずに困っていたお年寄り世帯の粗大ゴミを収集したり、ちょっとした大工仕事に対応するボランティア活動を繰り広げている。
     年末の大掃除シーズンに、軽トラックに分乗し、町内を巡回。物置や軒先に放置されたままの冷蔵庫や洗濯機、テレビなどを軽トラック数台分集め、町内の粗大ゴミ処分場まで運んで処分している。
     また、雨どいの修理や戸車の滑りが悪くなったなど、修理職人に頼んでも小さな仕事のため、なかなか対処してくれない大工仕事について、メンバーで修理可能なものについてはただちに対処している。
  • (3)「防火診断の実施」
     火気の使用が多くなってくる時期には、駐在所員1名、地区担当ホームヘルパー1名、消防署員2名の計4名が1組となって、一人暮らしのお年寄り世帯や夫婦ともに75歳以上の後期高齢者夫婦世帯を訪問し、愛の一声運動とともに防火診断を実施している。
     ガスコンロ周辺や風呂、かまどの焚き口、暖房器具などの防火チェックを行い、その場で改修可能な不備事項(ガスボンベ転倒防止チェーンの取り付け、ガスコンロ周辺に耐火ボードの設置,風呂の煙突掃除など)についてはただちに無償で対処している。
  • (4)「上級救命講習の受講」
     一人暮らしのお年寄り世帯などでは第三者が訪問するまで異変に気が付かないことが十分考えられる。そこで、日頃お年寄りに接する機会が多いホームヘルパーや駐在所員が、有事の際,救急車が到着するまでの間に適切な行動がとれるよう、平成5年7月から、郡内初の上級救命講習に取り組んでいる。5日間にわたり心肺蘇生法や止血法などの講習を受講するとともに、毎年再講習をし、救命技能の錬磨に努めている。
  • (5)「連絡協議会の開催」
     定期的に三者が一堂に会し、各々推進状況を報告している。また、情報交換を行い、保護対象者の実態把握に努めている。(統一した保護対象者台帳を作成し、三者が保管管理している。)

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ふれあい広場

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上級救命講習

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ふれあい広場

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粗大ゴミ収集

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お年寄り宅防火診断

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上級救命講習

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ふれあい広場

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ふれあい広場

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ふれあい広場

苦労・成功のポイント

 過疎高齢化が進む中、個別の機関のみでは対応に限界があり、縦割り意識の中ではどうしても活動に制約を受けがちである。警察、消防、社会福祉協議会が一体となることで、垣根を取り払い、職域にとらわれない融通のきく活動が行え、きめの細かい福祉サービスが具現化されている。

成果・展望

 活動については、地元の新聞紙や広報紙などでたびたび取り上げられるだけでなく、平成6年6月には参議院地方行政委員会において活動状況が紹介された。また、同9月10日付け「厚生福祉」(時事通信社発行)においてもチームの活動が詳細に報告されたところであり、画期的な取り組みの先進地として全国的な注目を浴びている。
 本事例が、全国に多数ある過疎化、高齢化に頭を抱える団体の活動指標になればと期待している。

実施期間

 平成6年4月1日~

事業費

 30万円

団体の概要

 小田町人口:4,126人(高齢化率:35.34%)、
 小田町世帯数:1,443世帯(いずれも平成11年4月1日現在)
 小田町面積:139.84平方キロメートル
 構 成 員:小田町内駐在所員3名、消防署小田分駐所員4名、社会福祉協議会6名