事業所と地方公共団体との防災協力

2.事業所と地方公共団体間の連携方策(1)


●事業所と地方公共団体間の連携方策
災害時の応急対応が迅速かつ的確に行われるには、事前の準備や情報の共有、緊急時の連絡体制の整備など、事業所と地方公共団体間の日常からの協力関係の構築が不可欠です。
これらの具体的方策として、「防災協力事業所登録制度」や「防災協力協定の締結」などがあります。 イメージ図:事業所と地方公共団体間の連携の具体的方策
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●防災協力事業所登録制度
防災協力事業所登録制度とは、一部の地方公共団体ですでに導入されている制度で、地方公共団体が広く呼びかけ、事前に様々な業種の事業所に「防災協力事業所」として登録してもらい、災害や事故が発生した場合、必要に応じて地方公共団体が事業所に協力を要請するものです。
防災協力事業所の登録は、手続きが煩雑な防災協力協定の締結と比べて、手続きが簡単なことから、小規模な事業所でも比較的取り組みやすく、一方、行政は対応能力を超える分野での災害対応力の向上が期待できます。また、この制度は、あらかじめ事業所の持つ防災対応力を行政が把握できるため、様々なニーズへの迅速かつきめ細かい対応を促進できます。
この制度は、すでに複数の地方公共団体で導入されており、事業所との連携強化のための情報共有システムの整備や、緊急時の連絡体制の整備が図られています。


防災協力事業所登録制度の具体例
○松山市の取り組み
松山市では、非常時に事業所と災害対策本部が連携し、迅速かつ的確な救援活動を展開することを目的として、平成16年度から「災害時協力企業情報構築事業」に取り組んでいる。
発生が懸念されている「南海地震」など広域的な災害発生時には、様々な機能が麻痺・寸断され、迅速な救助・救援活動が困難になることが想定される。
そこで、松山市では、地域ごとに事業所と自主防災組織などが一体となった防災活動が展開できるよう、協力可能な企業を募ったところ、約5,000社以上の企業の登録があった。
登録企業のうち、企業名掲載の希望のあった企業について、松山市のホームページに掲載している。
○宮城県の取り組み 宮城県では、食料や防災資機材等の物資をスムーズに調達できるよう、災害時に企業が提供可能な支援項目を事前に把握し、「災害支援目録」を作成している。
災害発生時には、作成した「災害支援目録」を利用し、緊急調達を行うこととしている。
○横浜市の取り組み 横浜市では大震災などの災害発生時に一時避難地や仮設住宅の建設用地等として農地を活用するため、温室が設置されていない平坦地で水田、果樹園以外の農地を対象として、災害時に農地を提供してもよいと言う農家を登録する「防災協力登録農地」制度を実施している。
同制度は、全国に先駆けて平成7年度に創設され、登録は、翌年度より行われている。
平常時は地主に対する代償はなく、災害が発生した際は、損失補償(耕作地の場合)を行うとともに、別に土地使用料が定められている。また、使用が終了したときは、市長は速やかに農地として原形に復旧し、所有者に返還しなければならない。