第5回防災まちづくり大賞(平成12年度)

【消防庁長官賞】ガソリンスタンドに「市民救命士」を配置

【消防庁長官賞】ガソリンスタンドに「市民救命士」を配置

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横須賀危険物安全協会、神奈川県石油商業組合横須賀支部(神奈川県横須賀市)

事例の概要

■経緯

 「横須賀危険物安全協会」は、ガソリン・灯油・軽油などを貯蔵し、または取り扱う企業が危険物による災害を防止するため、危険物の安全管理・知識及び技術の向上を目的として昭和48年に設立された。
 また、「神奈川県石油商業組合横須賀支部」は、石油製品を扱う企業として従業員教育及び企業間の情報提供・調査研究を目的として昭和38年に設立された。
 この両団体から「地域社会の安全に寄与する活動を積極的に推進していきたい」との申し出があり、消防局と検討を重ねたその結果、ガソリンスタンドに応急救急セットを配備し、この応急救急セットを活用できる「市民救命士」を配置し、スタンド内にステッカーで表示することとした。
(注)市民救命士とは、消防局が開催する応急手当の普及講習のうち、普通救命講習会以上を受講し、その修了証の交付を受け、応急救急セットを活用できる人達のことを命名したものである。

■内容

 心肺機能停止状態などの傷病者の救命のためには、一刻も早い応急救命処置を開始する必要があることから、救急隊が到着するまでの救護の空白を埋めるためには、バイスタンダーによる応急処置が求められている。そこで、ガソリンスタンドは市内の主要な場所で営業していることから、普通救命講習会以上を受講した危険物保安監督者などがガソリンスタンド周辺での事故発生時に一早く駆けつけ、応急救命処置を施し、救急隊に引継ぐ救命プレーで、市民生活の安全を確保しようとするものである。
 また、交通事故などにも自発的に現場に駆け付け、止血などの応急手当を行うとともに、配達車両にも救急セットを積載し、事故に遭遇した場合は、積極的に活動を行っている。
 さらに、大規模災害時には、避難者の救出救護、応急手当を積極的に実施し、必要があれば応急救急セットの貸し出しを行う。
 応急救急セットは、横須賀危険物安全協会が購入し、講習修了者に配備し、「市民救命士のいる店」の表示ステッカーは、神奈川県石油商業組合横須賀支部が作成し、講習修了者配置スタンドに配布している。

■特色

 本活動は、両団体の申し出により、応急救急セットの配備、表示ステッカーの作成・配布まで事業所主体で実施したことが最大の特色である。
 講習会を受講し、応急救急セットを配布された市民救命士は、市民のために「いざというときに」迅速な応急活動が必要であると認識している。
 本活動は各団体に認められ、特に市内の郵便局では講習会が開催され、集配のオートバイに救急セットを配備し、市民のための活動が開始されている。さらに、デパート、JA、金融関係(信用金庫)、マリーナ等多くの団体からの問い合せがあり、活動を開始する準備を進めている。
 この活動の趣旨が共感を呼び、問い合せ、激励等が多数寄せられ、多くの市民にバイスタンダーの早期活動の必要性が認識された。

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ガソリンスタンドで働く市民救命士

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ステッカー

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ガソリンスタンドでの応急処置訓練

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救急セット

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普通救命講習会(座学)

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普通救命講習会(実技)

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普通救命講習会での心肺蘇生法訓練

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三角巾取扱訓練

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出初式での心肺蘇生法演技

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市総合防災訓練での訓練風景

苦労・成功のポイント

■苦労した点

 ガソリンスタンドは営業形態・勤務体制がそれぞれ異なる上に、消防法上、保安監督者は常時1名スタンドに勤務していなければならないため、講習日の選定、講習時間を決める際、調整が難航した。また、1回の講習会では、1店舗で複数の職員の受講が難しかった。

■成功のポイント

 ガソリンスタンドの協力により、94名の「市民救命士」が誕生した。また、応急手当の重要性が再認識されただけでなく、災害時の協力体制の重要性が認識され、各スタンドの保安監督者のコミュニケーションの機会にもなった。

成果・展望

■成果

 各ガソリンスタンドが応急手当の必要性を認識して、防災面にも真剣に取り組み、防災訓練等にも積極的に参加し、市民の前で心肺蘇生法などの展示などを積極的に実施している。
 また、平成12年8月末現在、心肺蘇生の奏効事例はないが、交通事故での止血救護、車を運転中に気分が悪くなった人の介護などの奏効事例が5件あった。

■展望

 市内にはガソリンスタンドが68店舗あり、そのうち普通救命講習会の受講を修了した94名の「市民救命士」でスタートしたが、全てのガソリンスタンドに配置されるとともに、常時複数の「市民救命士」が配置されるよう体制を整えていきたい。
 また、「市民救命士」のアフターケアとして、定期的な再講習も検討するとともに、市民救命士に配備した応急救急セットの拡充についても検討していきたい。
 ガソリンスタンドだけではなく、多くの団体が実施することにより、より早く、より適確な救護活動が実施されることで、市民の安全を確保できるものと確信している。

実施期間

 平成12年~

事業費

 応急救急セットの購入:1,575円×150個=236,250円(横須賀危険物安全協会が負担)
 ステッカーの作成:1,680円×80枚=134,400円(神奈川県石油商業組合横須賀支部が負担)

団体の概要

 横須賀危険物安全協会:会長1、副会長3、会員事業所517
 神奈川県石油商業組合横須賀支部:支部長1 、副支部長3 、会員事業所78