第12回防災まちづくり大賞(平成19年度)

【消防科学総合センター理事長賞】迅速かつ的確な情報収集伝達体制の確立に向けて

消防科学総合センター理事長賞(防災情報部門)
迅速かつ的確な情報収集伝達体制の確立に向けて

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村松町自主防災会
(新潟県長岡市)

事例の概要

■経緯

 長岡市村松町は、長岡市東山連峰の太田川水系上流に位置し、中越大震災による被害が甚大であった地域のひとつで、東に太田地区、南東に山古志地域が隣接している。
 村松町は、平成10年に自主防災会を発足、消防団の活動にも町ぐるみで参加するなど防災に対する住民意識が高い町内会である。
 しかし、平成16年の7.13水害や中越大震災では、ライフラインの断絶や電話の輻輳などの影響で、地域の安否確認や被害状況などの情報収集伝達において大きな混乱が生じた。
 こうした災害経験を活かし、村松町では平成16年の災害後、以下のような取組を行った。

■内容

  • 1. 自主防災会のアマチュア無線の愛好家がボランティアで自前機材を持ち寄り無線班を組織し、災害時の情報収集、伝達体制の整備を図った。
  • 2. 合わせて、時報用の屋外スピーカーに防災サイレンを新たに設置し、また地域住民の家族調査も行い、詳細な連絡体制名簿の作成を行った。
  • 3. 平成17年6月、8月及び平成18年6月の集中豪雨時には、これらを活用し、自主防災会や町内会の情報収集伝達に大きな効果を発揮した。
  • 4. 平成18年度には、(財)自治総合センターが行なうコミュニティ助成事業を活用し、拠点基地となる集落開発センターに放送設備と屋外拡声器をそれぞれ1台増設、地域の小学校と公民館にも屋外拡声器を設置し、開発センターから発信する災害情報をそれぞれのスピーカーに一斉に放送できる体制(簡易無線局 信K第47618号)を整備した。併せて、簡易無線ハンディ機も購入した。
  • 5. 今後は隣接する太田地区や山古志地区との連携も視野に入れ、情報伝達体制のさらなる整備を図っていく予定である。

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村松公民館無線設備基地局

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村松公民館屋上サイレン及び放送拡声機

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村松公民館屋上サイレン及び放送拡声機

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基地局停電時発電機

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市立石坂小学校屋上拡声器

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市立石坂小学校屋上拡声器

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市立石坂小学校屋上拡声器アンテナ

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小山公民館制御板

苦労した点

 村松地域は、「土砂災害警戒情報」発表時の危険箇所地域「急傾斜地崩壊危険箇所」の一部をかかえるとともに、氾濫危険のある中小河川も多くかかえている地域である。また、公園など一次避難所となるべきスペースもない。そのため、避難行動を迅速に進めるためには、的確な情報伝達体制の整備が急務である。こうした体制を構築するために、町内会費から多額の支出を行なうなど、資金面での苦労が多かった。

特徴

  • ・ 通常の無線機は、免許所有者のみ取り扱い可能であるが、平成18年度に導入した簡易無線機は、免許所有の有無に関わらず、誰でも使用することが可能である。これにより、災害時の危険箇所や災害情報をいち早くキャッチし、屋外拡声器を通じた地域住民への情報伝達が可能である。
  • ・ 地域が行政からの災害情報(公助)を、地域内に漏れなく伝達する(自助、共助)ことが重要。屋外拡声器からの情報や、地域で作成した家族名簿などを活用することで、漏れのない情報伝達体制が確立されている。
  • ・ 地区の公民館には、停電時にも使用可能な自家発電設備(切り替え式)を完備しており、これを活用し、屋外スピーカーへの一斉放送を行うなど、災害時の迅速な対応が可能である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 重川 希志依(富士常葉大学環境防災学部教授))

 村松地区は、新潟県中越地震時に全世帯の73%以上が全半壊するなど、きわめて大きな被害を受けた。また地区への道路寸断、ライフラインの途絶により、地震後孤立を余儀なくされ、情報がまったく入ってこない中で、自助・共助で地震から数日間にわたり、住民の生命を守っている。村松町はもとより、土砂災害や河川氾濫などの水害が多発する地域であり、このような厳しい自然条件と共生しながら存続してきた地区である。このため平成10年に自主防災会を立ち上げていたが、新潟県中越地震では全住民が被災したため自主防災会が機動的に動けず、自主防災会、消防団、アマチュア無線家が一体となり、今回受賞の対象となった情報システムを導入するに至った。
 以前から自らが水害や雪害に備え、また消防団と一体となった防災活動を展開してきた延長線上に、情報システムの整備があり、また新潟県中越地震での被災体験に基づいて計画を立ててきたため、単に機器の整備のみならず、それを効果的に運用し、地区住民の安全を守るための工夫が多く見られることが特徴と考えられる。地区公民館に無線の基地を置き、またここがいざという時の災害対策本部となる。災害発生が予測されると、町内会長・副会長、消防団員等が本部に集合し、わが家のことを省みずに情報収集と、全住民に対する情報伝達を行っている。住民がCADで作成したオリジナルな防災マップの整備や、防災会の役員名簿を全住民に配布するなど、個人情報保護よりも、いざという時の安全のために日ごろの情報共有を優先しているところに、自主防災のあり方の原点を見るような気がした。

団体概要

  • 【村松町自主防災会】
  • ・ 地震、水害や土砂崩壊などの災害が発生したときに、「自分たちの地域は自分たちで守る」という精神に基づき、初期消火活動、避難誘導や救護活動等を行い、被害の防止や軽減を図り、地域住民の福祉の増進に寄与することを目的に平成10年8月に発足。
  • ・ 平成19年度加入世帯数244

実施期間

 平成17年~