第6回防災まちづくり大賞(平成13年度)

【消防科学総合センター理事長賞】自らの街は自らで守る!活き活き活躍、東村山消防ボランティア

【消防科学総合センター理事長賞】自らの街は自らで守る!活き活き活躍、東村山消防ボランティア

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東京消防庁災害時支援ボランティア(東村山消防ボランティア)(東京都)

事例の概要

■経緯

 東村山消防署に登録している東京消防庁災害時支援ボランティアは、平成7年11月に発足し、166名(平成13年現在)の登録者で活動を行なっている。発足当初は、消防署の指導のもと、知識・技術の向上を図ってきたが、訓練に参加するきっかけを見いだすことができない登録者がおり、登録者内からボランティアの活性化を図らなければならないという意見が提示された。
 このため、平成10年にリーダー会を自主的に立ち上げ、組織体制を確立し、種々の活性化対策を打ち出した。リーダー会では継続的に会議を実施するとともに、東村山消防署管内を幾つかの地区に分け、全ての登録ボランティアに連絡もれがないように地区連絡網を作成した。これにより、継続的に情報の交換を実施することが可能となり、お互いが顔の見える相手となれるように仲間意識の醸成を図った。
 また、消防署で実施する消防演習、震災訓練等の各種防火・防災訓練に積極的に参加した。さらに、普通救命講習においても市内各商店会に受講を働きかけて、積極的に指導の補助を行ない、登録者個々の知識・技術の向上を図った。この他、地域のイベント会場等においても防災コーナーの一端を担当し、住民への防災ボランティアの認識と防災意識の向上を図ってきた。
 このように、東村山市における東京消防庁災害時支援ボランティアの活動は、自主性と創意工夫をもって、大いなる活性化を堅持しながら人づくりを推進している。

■内容

  • 1.リーダー会の結成
     平成10年4月にボランティアリーダー会を発足し、訓練の企画・立案・実行と結果の検証を自主的に行い、ボランティアの防災行動力の向上を図っている。
  • 2.訓練・演習への参加、支援
     積極的に市や消防署等の実施する訓練に参加するとともに、訓練の重要性を地域住民へ機会あるごとにアピールしている。
    • (1) 消防のふれあいネットワークづくりの一端を担うものとして、災害弱者等収容施設での夜間消防演習等に参加し、消防団、自主防災組織及び防火女性の会員等との連携を深めている。
    • (2) 春・秋の火災予防運動、防災週間、文化財防火デー及び防災ボランティア週間等で実施される消防演習に参加し、消防隊と連携した活動訓練を実施している。
    • (3) 市内22の自主防災組織が実施する訓練等に参加し、相互理解を深め、防災ネットワーク作りを図っている。
    • (4) 東村山消防署が定期的に開催している普通救命講習会に指導補助者として参加し、市民等へ応急救護手当等の方法を教示している。
  • 3.ボランティア組織の充実
     震災訓練に参加した際の感想文集や機関紙「ボランティア通信」を発行し、各登録者へ配付している。また、市役所広報コーナーや公共施設の窓口に配付コーナーを設置するなど、地域住民の防災意識の啓発も図っている。
  • 4.防災行動力の向上策
    • (1) 管内の社会福祉施設での消防演習等に積極的に参加し、消防団、自主防災組織等と連携した訓練を実施して、活動能力を向上させている。
    • (2) 各種イベントで防災コーナーを支援する等、東村山消防署と密接な連携を保ち、技術の向上を図っている。
    • (3) 火災予防運動、防災週間及び防災ボランティア週間等の期間中における講演会等に積極的に参加し、災害知識を蓄積しボランティア活動全体に反映させている。
  • 5.自主性の維持
    • (1) 訓練の際に計画の段階から参加し、実体的な活動内容としている。
    • (2) リーダー会議を積極的に開催し、その結果をボランティア全員に周知するなど、情報の共有化による意思の統一を図っている。
    • (3) 連絡網による周知を行い、強制ではなく自主的な参加意欲の向上を図っている。
    • (4) 消防署等からの呼びかけによる参加ではなく、各防災機関の年間事業計画等を事前に入手し、自主的に訓練に参加している。
    • (5) 市、消防署等で開催される各種会議・意見発表会等に委員、発表者として参加し、その存在感を高めている。
  • 6.資器材等の整備
    • (1) 東村山災害時支援ボランティア懇談室の設置
    • (2) 各参集場所(本署地区、本町地区、秋津地区)にボランティア任務分担表を作成
    • (3) 略帽及びボランティア旗の作製
    • (4) 機関誌「ボランティア通信」の発刊

■特色

 災害時支援ボランティアは、災害時という一時期だけに活動するボランティアとして位置づけされた組織であったため、日常における組織活動が停滞し、災害活動能力を維持することが困難になりがちであった。しかし、市と消防署等との訓練に積極的かつ継続的に参加するなどしてボランティア組織の活性化を図ることとしている。現在では、消防署の指導の下、自らボランティアの姿を積極的に住民に示し、ボランティア自身がお互いに士気の高揚を図るようになっている。

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救出救護訓練

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搬送訓練

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初期消火の指導

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心肺蘇生法の指導

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結索訓練

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心肺蘇生法の展示

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地域イベントでの支援

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災害時支援ボランティアの集い

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ノーモアー松寿園消防演習

苦労・成功のポイント

 一部のボランティア登録者には、「災害時のみのボランティアであるので災害時に活動するだけでよい」という考えがあった。しかし、普段から訓練を実施しなければ災害時に活動をすることができないという考えが、ボランティア登録者に醸成されてきた。これにより、自ら組織体制を確立し、各登録者のやる気と役割意識を維持し、単調な継続と精神的疲労による士気の低下防止を図るため、次のような事を中心に行ない成果を挙げている。

  • 1.相互の話し合いにより、独自に選出したトップコーディネーターを中心にリーダー会を設置した。これにより、組織作りが確立できた。
  • 2.地域の行事を自ら把握し、自分達で調整して積極的に参加することにより、ボランティア登録者の連帯と目的意識を醸成し、活動の主体性を持続することができた。
  • 3.消防署の訓練に積極的に参加することにより、知識・技術の向上を図り、自らの行動力に自信がもてるようになった。
  • 4.地域で行なう行事に積極的に参加し、ボランティアの社会的認知の向上を図った結果、良き理解者が多数生じた。

成果・展望

■成果

 災害時支援ボランティアが災害時に円滑かつ効率的に活動を行い、地域防災に大きく貢献するためには、ある程度組織化されたボランティアの活性化を図ることが大切である。そのため、多くの訓練に参加し、単に社会奉仕、社会連体の精神や熱意だけではなく、活動体制の組織化や訓練の充実を図ってきた。これにより、自分たちの街は自分たちで守るという考えを地域住民に強く意識づけることができ、年々地域住民との防災ネットワークが育成されている。

■展望

 ボランティア活動は特定の人が行う限定的な活動ではなく、誰もが自分の立場や状況に応じて自らの意志で参加できるものであるが、ある一定の専門的な知識・技術を要求される面もある。東村山消防ボランティアでは、消防署等で実施される訓練に参加して知識を身につけ、自主的に防災活動力を高めるための各種事業を自ら計画執行できるようにしている。このように、次世代のボランティアの誕生、育成、成熟へのプロセスがボランティア組織内で順調に押し進められているため、自主性を阻害しないよう防災ひとづぐりの一組織として支援、援助していきたい。

委員のコメント(古内委員)

 東京消防庁災害時支援ボランティアは、東京消防庁が募集したボランティアで災害時に消防隊の活動を支援することを目的として東京消防庁の各消防署に登録されている。
 東村山消防署のボランティアは現在166名であるが、本来の趣旨からは166名それぞれが個人の資格で登録されており、災害時に個人個人がボランティアとして東京消防庁の支援をするというものである。
 ところが、東村山消防署登録のボランティアの人たちは、そこからの発展を意欲的に指向し、個人登録のボランティアとしての性格は維持しつつも、自発的にボランティア同士の連絡網をつくり、ボランティア旗の作成や機関誌「ボランティア通信」の発刊まで手づくりで行って、お互いが顔の見える関係を構築してきた。さらに、共同して各種防火防災活動に参加するなど「集団的」「組織的」活動も展開している。
 このように、本来、個でありながら、共同で活動を活性化させ、組織的な色彩を帯びているようになっていること自体、大変ユニークであるし、また難しいことでもある。それを可能にしているのは、中心的な存在となっている、東村山消防ボランティアのリーダー、コーディネーター及びトップコーディネーターの方々たちの熱意と人間的魅力、それに東村山消防署の精神的支援であることを強く実感した。

団体概要

 災害時支援ボランティア(東村山)登録者:166名

実施期間

 平成7年~