第11回防災まちづくり大賞(平成18年度)

【消防科学総合センター理事長賞】みなと防災まちづくり~人と人との輪、出会い、ふれあい、学びあいの精神で10周年

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湊地区自主防災会連絡協議会
(福井県福井市)

事例の概要

 阪神・淡路大震災を契機として、湊地区では平成8年2月に丹鳥防災会が発足し、これに呼応するように照手、中挟、花月、日光の各防災会が発足、同年11月に5防災会が団結し、湊地区自主防災会連絡協議会を発足させた。
 以来毎年1回は、必ず5つの防災会が合同で地元消防団、公民館、学校、事業所と一体となり約2,000人が参加しての防災訓練を継続的に実施している。
 また、過去の事業としては、地区の防災マップ作りにもいち早く取り組み全戸に配布し、自ら購入した小型動力消防ポンプも配備されている。更に春と秋の火災予防運動期間中には、湊防災連女性部による普通救命講習会の開催や一人暮らし老人宅の防火訪問などを毎年実施している。
 特に平成17年6月12日に実施した防災訓練は10周年の活動の集大成として、「湊地区自主防災会設立10周年記念大会」と位置づけ、各種団体に協力を呼びかけ、自衛隊、消防、病院の医師、看護師、小、中学校の協力参加をいただき、更に初の試みである地元の救助犬2頭及び訓練士が参加しての検索訓練と、平成16年の福井豪雨から得た教訓として土のう積み訓練を取り入れた。
 平成18年も6月18日に防災訓練を行い、更に9月3日には小学校の体育館で「救急・救命フェア」を開催し、地区住民350名がAEDの取り扱い方法を学んだ。
 夢、創造事業、みなとまちづくりの一環として行なわれている防災訓練も、「人と人との輪、出合い、ふれあい、学びあい、たすけあいの精神」で平成17年に湊地区自主防災会設立10周年を迎え、記念大会を行えたことにより、今後もますます地区住民の連携感を強めるとともに、防災意識の高揚を図り、会員の資質と熱意を保ち、地域活動の為、全力で励んでいる。

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住民の避難状況

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応急救護所内の状況

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土のう積み訓練状況

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倒壊家屋救出訓練

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バケツリレー訓練

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女子三角バケツ消火訓練

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起震車による地震体験

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てんぷらハウス初期消火訓練

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煙中体験状況

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第4分団ポンプ車操法

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応急手当訓練

苦労した点

  • ・自主防災組織の会員の防災意識の高揚を図り、危機感を持たせること。
  • ・仕事の合間を縫って時間を作り、小型ポンプ操法の訓練を行ったり、各行事に参加することの督励や呼びかけをして、住民の意識改革を10年間かけて行ってきたこと。

特徴

  • 1.市民参加型街づくりの事業として、自主防災会を結成し、以来、人づくり「人と人との輪、出合い、ふれあい、学びあい、助け合いの精神」で10年間地道に活動し、県都、福井市の防災モデルに位置づけられている。
  • 2.消防署・消防団・病院・学校・公民館・自衛隊・災害救助犬との協力、連携体制を確立し、毎年の訓練により防災意識の高揚を図っている。
  • 3.老人会により、非常用梅干作りを行い、避難所(公民館)に100キロ備蓄。
  • 4.火災予防運動期間中、女性部により普通救命講習会の開催や一人暮らし老人宅の防火訪問を実施している。
  • 5.住民を対象とした救急行事を開催し、救命率の向上を目指した。

委員のコメント【防災まちづくり大賞選定委員 中林 一樹(首都大学東京大学院都市科学研究科教授)】

 福井市は、空襲(1945)と福井地震(1948)によって大きな被災を経験した都市である。とくに福井地震は直下地震で、その激しい振動被害から日本の震度階に「震度7」が作られた。しかしその復興後は、比較的災害の少ない都市であった。この湊地区は、福井市の西部に位置し、1960年代半ばから都市化が進んだ住宅地域で決してコミュニティ活動が活発ではなかった。1995年の阪神大震災が大きな衝撃を与えるなか、湊地区内の公園に100トン耐震型貯水槽が設置されたことが大きなきっかけとなり、防災組織づくりの気運が盛り上がった。湊地区には大小80もの自治会が存在していたが、1996年の丹鳥防災会を皮切りに5つの自主防災会が相次いで結成され、「湊地区自主防災会連絡協議会」が設立され、地域が「防災」を通じてまとまったのである。この協議会を中心に、持ち回りで幹事会をおいて、ポンプやチェーンソーなどの防災資機材及びその格納庫の整備を進め、1997年にその資機材を使って合同訓練大会、さらに当地区で全市の防災訓練大会を開催するなど、一気に活動が活発化した。2001年には防災女性部が発足、この間に自営消防隊消防操法競技大会にも参加し2002年には小型ポンプで6位入賞、2005年には女性部がバケツ消火で4位入賞、女子部の独居老人宅訪問など、毎年の合同訓練大会も活発に開催されてきた。2005年に、自主防災会設立10周年を記念して2000名の参加による総合防災訓練を開催し、地元テレビでも大きく取り上げられ、福井市の地域防災活動の牽引車となっている。高齢化が進展するなかで、壮年層の参加、女性の参加によって年々活動が活性化している様子は、日本の地方都市の防災活動にとってもモデルとなるものである。現地を訪問して、心からその思いを強くした。

団体概要

  • ・福井市湊地区
    世帯数:3,850世帯
    人 口:9,426人
  • ・湊地区防災会員総数 約170名
    ※数字は平成18年8月30日現在

実施期間

平成8年~