第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【総務大臣賞】災害に強いまちづくりをめざして ~中越沖地震の教訓から~

総務大臣賞(一般部門)
災害に強いまちづくりをめざして ~中越沖地震の教訓から~

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松美町内会
(新潟県柏崎市)

事例の概要

■経緯

 松美町内会は、柏崎市の市街地である比角地区にあり、戦後砂山と水田の一角に市営住宅が建てられて以後、個人住宅が増えて、昭和42年に「松美」と町名が命名され、その頃から新興住宅地として栄え、現在440世帯、人口1,160人の比較的大きな町内会である。
 町内会では、平成19年4月1日に松美町自主防災組織を設立し、防災計画を立て、これから最後の役員会を開催して活動を周知徹底する矢先の7月16日午前10時13分に新潟県中越沖地震が発生。町内の建物被害は、全壊3棟、半壊25棟、一部損壊319棟となり、自主防災組織として避難訓練などの活動を行う前に、実際の災害対応に取り組むこととなった。

■内容

1. 松美町内会の初期対応
  • (1)地震発生直後の対応
    • ① 避難誘導(町内会指定避難所へ)
    • ② 安否確認
    • ③ 夜警巡視活動(3日目・役員、青年部)
    • ④ 高齢者、一人暮らし、障がい者の避難呼びかけと誘導支援(災害時要援護者名簿の活用)
  • (2)被災2日目以降の対応
    • ① 外部ボランティアの受入れ
      ・町内会長はコミセンでボランティアコーデネーター(10日間)
      ・町内役員は外部ボランティアを被災宅へ案内
    • ② 町内ボランティアの活動
      ・一人暮らし・高齢者・障がい者への支援サービス
       (飲料水、生活用水、食料支援物資等の配給)
    • ③ 市の資源ごみ特別収集日のボランティア活動
      ・ボランティア活動時間は9時~17時
    • ④ 7月18日第1回緊急被害状況調査(震災から3日目)
      ・安否確認のため
      ・保健師・ボランティアの派遣がスムーズに行えた。
      ※被害調査にてボランティア希望を募ったところ希望が無かったが、会長が被害状況を勘案し、ボランティア・保健師の派遣調整を行った。
    • ⑤ 8月20日第2回緊急被害状況調査(1ヵ月後)
      ・被害箇所の確認(デジカメを活用し行政への申請に効果)
      ・復旧状況の把握のため実施
    • ⑥ 町内だより「震災特集」を発行した。(2回)
    • ⑦ 「災害に強いまちづくり」~中越沖地震の教訓から~冊子編集
【アンケート(緊急被害状況調査)の効果】
  • a 緊急時の情報伝達に役立った。
  • b ケガ、又は身体の状況~外部の保健師の巡回訪問に役立った。
  • c 手伝いを希望するか・・・不要の答えが多かった。次の質問(主な被害状況)を見ると不要ではなく必要であると判断し、導入する。
2. 平時の活動
  • (1)実行委員会による町内行事
    • ①夜桜観桜会「琴&尺八の演奏」
    • ②七夕まつり
    • ③花いっぱい運動
    • ④まつみサロンの自主活動
    • ⑤敬老のお祝いとボランティアへの感謝の集い
    • ⑥「災害に強いまちづくり」冊子の作成
  • (2)町内だよりの発行(毎月1回)
  • (3)自主自立の環境づくり
  • (4)企業との協働
    • ①河川(よしやぶ川)の環境整備「川さらい」
    • ②企業の緑化(公害防止)の推進
    • ③震災時の支援活動
      ・体育館の開放 ・入浴施設の開放 ・物資の支援
3. 今後の課題
  • (1)ボランティアについての学習(先進地視察)・組織の立ち上げを行う。
  • (2)班戸数の適正化(緊急対応ができる戸数)
  • (3)自主防災計画の見直し
  • (4)冬季防災用具の検討
  • (5)地下水マップを作成する
  • (6)防災用用具保管場所の鍵は役員に配置しておく
  • (7)町内掲示板を伝言板とする
  • (8)班長の役割を明確にする
  • (9)集会所の増改築によるサークル活動の拡大を図る
  • (10)避難訓練の実施
  • (11)災害時、緊急時に対応できる主食・副食の試作研究

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町内ボランティアによる食料の配給活動

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住民安否・被害状況調査

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被害調査

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アンケート

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町内ボランティアによる資源物資収集活動

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災害時要援護者登録申請書

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災害に強いまちづくり~中越沖地震の教訓から~

苦労した点

 発災直後に、町内会長の指示で町内会役員と青年部員が手分けをして、町内を一軒一軒見回って住民の安否及び被害状況等を確認し、町内会長に報告をした。しかし、平時の町内行事になかなか参加されない者の安否確認がほとんど不可能であった。
 また、自主防災組織を設立し、これから防災設備を整える予定だったので、飲料水・生活用水を運ぶ用具(台車)がなくて困った。

特徴

 震災直後の混乱の中なのに、なぜ地域の力を結集できたのか?よく聞かれるが、それは日々の町内づくりによって地域コミュニティが培われていたからだと強く感じている。
 松美町内会では、関矢町内会長を中心に平時の町内会行事に真剣に取り組み、それを根っこにして自主自立のまちづくりを目指している。地域コミュニティを構築するためには、住民の顔が見え、仲間が出来る町内行事が必要で、より多くの者が参加するために特に重視したのは子供会、青年会、老人会、その他の役職など横のつながりを大切にして行事を展開したことである。他にも平時の取り組みとして、情報伝達及び情報の共有のための「町内会だより」の毎月発行、災害時要援護者の希望調査の実施などを行っており、今回の地震では避難支援に役立った。
 このような平時の取り組みが、自主防災組織を設立して間もない状況であっても、地域が協調性を発揮して災害復旧に努めることができた原動力になったと感じている。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 中林 一樹(首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授))

 柏崎市では、地域の町内会が地区コミュニティセンターに所属・連携し、さまざまな地域活動を展開している。「比角地区コミュニティセンター」に所属している松美町内会は、新潟県中越地震をきっかけに、柏崎市の呼びかけに呼応して自主防災会を立ち上げた。市の助成を得て防災倉庫に防災機材を整備し、平成19年4月には「松美町自主防災計画」を決定し、秋の柏崎市総合防災訓練の担当地区として準備を始めていた。その矢先7月16日朝、新潟県中越沖地震が発生した。柏崎市の被害は全壊1,114棟、大規模半壊675棟、半壊3,879棟、死者14人であった。松美町内会では重大な被害は少なかったものの全域被災した。自主防災計画はあったが一度もまだ訓練はしていなかったものの、ハンドマイク、ヘルメット、発電機と投光器などの「防災機材」と、町内会会員の自主申告で作成していた「要援護者登録票」を活用して、すぐさま災害対応活動が自発的に始まった。
 お祭り、川の清掃・緑化、デイケアセンターでのふれあい事業「松美サロン」など多彩な日常活動で蓄積されていた「地域力」を基礎に、「自分たちのまちは自分たちで守る」「地域でできることは行政や他人に頼らず自分たちでやる」という地域自立の考え方で、未曾有の経験である災害に取り組んだ。最もユニークで、今後の地域防災の教訓ともなるのは、震災3日目に地域の全戸対象に行ったアンケート「緊急被害状況調査」である。これによって外からは見えない住宅内部の被害状況や各世帯の支援の要否などを把握し、被害状況や外部からの支援が必要と思われる世帯を地図化した。この地域情報は、地域の人々にとっても外部からの支援ボランティアにとっても「誰が、どの順番で、誰を支援し、何をしていくのか」を一目で共有できる情報となった。1ヶ月後にも第二回被害状況調査を実施し、各世帯の現状と支援ニーズの把握とともに、各住戸周りの被災状況をきめ細かく把握した。それらの写真等を添えて、市に報告し、応急復旧の迅速な推進に協働で取り組んだのである。こうした経験を「教訓集」に整理して発行、さらに平成21年1月には第3回アンケートとして「災害体験をどのように活かすのか」を全戸対象に調査し、その成果をもとに「松美町自主防災計画」の改定に取り組んでいる。
 独居高齢者の家具固定、各家庭での防災品備蓄状況のチェックと整備の推進等、町内会員の「ボランティアとして何ができるか調査」など、さらにユニークな取り組みを積極的に取り組んでいる。こうした多様な取り組みは、地域イベントは役員以外のメンバーによる全て実行委員会方式で進めることによって、何十人もが地域活動に主体的にかかわっているという地域運営の工夫が大きな要因なのである。日常活動と防災活動が絡まって、災害に負けない「地域防災力育成」のモデルとなる地域の取り組みである。

団体概要

(1)世帯数
440世帯
(2)人 口
1,161名
(3)班の数
36班
(4)役員構成
会長、副会長3名、書記係、体育文化係、監事2名、青年部、松寿会、子供会コミュニティ委員、民生児童委員、健康推進委員、福祉協議委員、小中学校PTA

実施期間

 平成19年~