第5回防災まちづくり大賞(平成12年度)

【消防科学総合センター理事長賞】小学4年生に「防災博士」

【消防科学総合センター理事長賞】小学4年生に「防災博士」

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那賀郡消防組合(和歌山県那賀郡岩出町)

事例の概要

■経緯

和歌山県北部に位置する那賀郡は、面積267.04km2、6町(岩出町・打田町・粉河町・那賀町、桃山町、貴志川町)からなる。粉河町には靹渕八幡宮の神輿と西国3番杜所粉河寺の縁起絵巻、岩出町は根来寺の多宝塔など貴重な国宝があり歴史ある地であるとともに、関西国際空港の25km圏として企業や大型店舗などの進出がめざましく、人口も119,267人(平成12年4月末)に急増した。それに伴い小学生の数も増え、現在郡内の小学校は22校生徒数8,391名で、しかも一校建設中であり、益々生徒数の増加が予想される。
このように郡内の人口が急増し、都市化が進むなかで、災害に強いまちづくりの一環として、子供の時から防災意識を植えつけようと考えた。

■内容

幼年期の防火指導については、管内の保育園(所)及び幼稚園の34ヵ所すべてに幼年消防クラブ(クラブ員4,617名)に結成され、園児、指導者、保護者が防火防災の啓蒙啓発活動を積極的に取り組んでいる。そのような中で、小学生に対しては、防火防災意識の向上を目的とした「防災博士」を実施した。
主な対象は、小学4年生で、社会科の校外授業に位置づけられている消防署見学の中で、防災博士チャレンジ講座として開催している。
内容は「わかりやすい消防のしごと」のしおりを作り消防署の仕事を理解してもらうとともに、那賀郡防災センターの体験施設を利用し地震体験、煙体験、消防車両、救助訓練等の見学を行っている(平成12年までに管内の小学4年生1,375人に実施した)。
本講座終了後、夏休み期間中に、更なるステップアップとして「防災博士初級認定講座」も実施している。
この防災博士初級認定講座は、地震や台風、火事、交通事故などの災害から身を守るために必要な防災知識や技術、心構えなどを教え、防災対応力のある子供を育てることを目的としている。
内容は、防災学習テキストを用いて台風や地震、火事の怖さや災害予防について学習し、その後、防災博士初級認定問題を解いてもらっている。そして、防災体験として、応急手当、119番通報、消火シュミレーション、煙の中での避難、地震、消防車両の乗車の体験なども行っている。
小学4年生を対象にしたが、兄弟姉妹などでも受講したいとの要望がある時は受け入れることにしている、また、同伴の保護者にも受講してもらい、受講者には修了証及び認定カードを交付している。
初級認定講座は、那賀郡の小学校合同で実施するため、他の小学校の交流も兼ね、夏休みの楽しい思い出作りにもなると好評を得ている。

■特色

本講座は防災センターを最大限に活用して、「体験」することにより防火防災の重要性を強く植えつけている。また、講座終了後の感想文を大切な情報源として、世代のニーズに合った講座を常に考案して、「小学生の目線に合った」をスローガンに次回の講座に備えている。

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修了証書

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煙シミュレーション室

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梯子車乗車体験

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防災博士認定講座

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修了証授与

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消火体験

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地震体験

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「わかりやすい消防のしごと」(表紙)

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「わかりやすい消防のしごと」(本文)

苦労・成功のポイント

■苦労した点

学校の校外授業の一環としての「防災博士チャレンジ講座」は先生が引率してくれるため、生徒の整理や安全面に協力してもらえる。しかし、「防災博士初級認定講座」は個人単位での参加であるので安全面に細心の注意をした。特に、自転車や徒歩での参加であるため、交通事故等の心配があったが、無事故で講座を終えることができた。

■成功した点

防災博士初級認定問題の実施結果の差がでるか心配であったが、楽しく受講してもらった結果、すべての生徒がよくできた。これにより、防火防災意識の向上を図ることができた。

成果・展望

■成果

兄弟である幼稚園児等も受講していたため、内容が難しいか心配したが、幼稚園で「僕も、私も早く小学生になり消防署に見学にいきたい」との声があった。また、同行した保護者が他の保護者に広めてくれた。講座終了後の感想文には、楽しい講座だったというものがあったり、講座が終っても、再度防災センターに遊びに来てくれる子もいた。本講座を通じて、少年・少女における防災意識の向上が図られた。

■展望

本講座を通じ、大人になっていく過程で、忘れてはならない防火防災意識を高めるため、年齢に応じた活動をより効果的に行っていきたい。

まちづくり事例の実施期間

平成8年~

事例の経費(円)

489,440円

団体の概要

那賀郡内小学校:22校、生徒数:8,391名、4年生生徒数:1,375名