第8回防災まちづくり大賞(平成15年度)

【消防科学総合センター理事長賞】無火災まちづくり駅伝大会

【消防科学総合センター理事長賞】無火災まちづくり駅伝大会

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久世町消防団 (岡山県久世町)

事例の概要

■経緯

 久世町は岡山県中北部に位置し、人口はおよそ1万1千6百人、面積は75.12平方キロメートルである。町の中心部を岡山県3大河川の清流旭川が流れている。また、久世町は昔から出雲街道と大山道が通っており、江戸時代は天領として、また明治時代からは牛市として栄えた。現在は中国自動車道と米子自動車道とのクロスポイントであり、久世インターチェンジを囲むように真庭産業団地が完成し、交通の要所となっている。また、内陸にあることから時折日本で一番暑くなることもあるが、田舎と都会が同居する極めて住みよい町である。

■内容

 久世町消防団は5分団19部で、団員数は425名から構成されている。無火災まちづくり駅伝大会は、昭和63年12月の久世町はじまって以来の大火の反省、並びに、その翌年にスタートした5分団制の周知がきっかけとなり、災害のない町は必ず発展するということをみんなで考えようということから開催された。現実に、平成元年10月22日から平成3年5月4日までの558日間は無火災で、人口1万人以上の町村では岡山県一の記録であった。

 第1回大会は平成元年3月に開催され、平成15年まで15回開催されている。この大会は消防団出初式の後に引き続き開催され、町の市街地を7区間9.8キロメートルに区切り、7人の走者が「火の用心」と書かれたゼッケンを付け、「無火災」と書かれたタスキをリレーしており、心を1つにして災害のない安全で明るいまちづくりを目指し、町をあげて防火意識の高揚を図っている。大会には小学生男女から一般男女、そして消防団員までを含め、毎年100チームを超える参加があり、総参加者数は800人を超えている。
 また、この大会の企画・立案から運営までの全てを町の消防団が取り仕切っており、今年の大会も町内およそ250の事業所から協賛を頂くと同時に、市街地を走るため毎年約2000人以上の方々から声援を頂いている。さらに、ゴール地点では、幼年防火クラブ員による鼓笛演奏で駅伝大会を盛り上げると同時に、参加選手や声援をいただいた方々には、婦人防火クラブの皆さんによる手作りの暖かいシチューを用意して、選手や応援の人々に大変喜ばれている。

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スタート地点

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ゴール

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開会式

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スタート地点

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駅伝コース

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幼年防火クラブ員による鼓笛演奏

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幼年防火クラブ員による鼓笛演奏

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中継所

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中継所

苦労した点

 駅伝コースは、交通量の多い県道や踏切を走る区間や中継所もあるため、一番には交通事故が起きないよう、前述のような場所には警備にあたる団員を増員するなどして、事故防止には特に気を使っている。
 また、駅伝大会は出初式終了後といいながら、チーム数が100チーム、参加者は800名を超えているので、出初式に参加せずに、スタート地点の飾り付け、チーム受付、参加者の整理などの準備を朝早くから行うのが大変である。

特徴

  • 1.この大会の企画・立案から運営までのすべてを消防団が取り仕切っている。
  • 2.参加選手は町内に限らず、郡内の消防団をはじめ、一般の小学生から社会人まで様々である。
  • 3.選手は「火の用心」と書かれたゼッケンを付け、「無火災」と書かれたタスキをリレーして、防火意識の高揚を図っている。
  • 4.ゴール地点では、幼年防火クラブ員による鼓笛演奏があり、婦人防火クラブの皆さんによる手作りの暖かいシチューを用意してもらい、選手や応援の人たちに好評である。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員長 澤井安勇(総合研究開発機構理事))

 岡山県久世町は、美しい山林に囲まれた旧出雲街道沿いの交通要衝の地であるが、昭和63年の大火災を教訓として、今日まで、火の用心、無火災を標語に防火意識の高揚を町民総参加で努力している。そのシンボルともいえる事業がこの「無火災まちづくり駅伝大会」だ。毎年3月初めに行われる出初式の後に行われている大会の模様をビデオで拝見し、街並みを眺めながらコースも辿ってみたが、この大会が、単なる出初式のアトラクションでなく、自分たちの愛する街を守り、住民相互のふれあいを深めていくというコミュニティー活動として定着していることがよくわかった。老若男女、大勢の人々が和気藹々と「無火災」と書かれた襷をかけて、ふるさとの町を駆け抜ける姿は、防災まちづくり運動が、自然な形で町民の人々の心の中に溶け込んでいることを示している。主催者が行政というより、町の消防団であることも嬉しい。久世町消防団は、若い団員も多く、住民のボランティア精神が健全であることを感じた。マスコットになっている昭和10年製造の味のあるシボレー型消防車共々、今後とも消防団と町民が一体となった防災まちづくり活動が承継されていくことを期待したい。

団体概要

 久世町消防団は、昭和23年に消防法が施行され発足し、昭和30年に久世町と美和村が合併して、2分団19部定数550人となった。現在(平成15年)は5分団19部、定員は425名で構成されている。

 消防施設整備状況は、自動車ポンプ車3台、小型動力ポンプ積載車17台、町防災行政無線は基地局1局、車載・携帯局ともに25局である。

 訓練状況は、町消防団主催のものとして部長・新入団員訓練会、非常呼集、放水訓練会が年に1回、その他のものとして火災予防期間中にパレード、毎月一日の防火の日、親睦ソフトボール大会などがある。