第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

災害に備える!病院・特別養護老人ホーム等の施設がある地区の自主防災会の取り組み

優良事例(一般部門)
災害に備える!病院・特別養護老人ホーム等の施設がある地区の自主防災会の取り組み

向町地区自主防災会
(山形県最上町)

事例の内容

■経緯

 向町地区は町人口の約2割を占める町の中心地域である。地区内には町役場のほかに町立病院などの総合施設『ウエルネスプラザ』や特別養護老人ホーム、ショートステイ施設等があり福祉の町「ウエルネスタウン構想」の中心地でもある。このような環境のため、災害時にはこれらの施設から災害時要援護者と呼ばれる方々が多く発生することが考えられる。
 このため向町地区では、ウエルネスプラザ建設前は、町立病院の近隣住民からなる施設災害協力会を組織し、病院や特別養護老人ホームに災害が発生した際の避難協力や避難訓練などに協力をしてきた。しかし、ウエルネスプラザ建設後には、病院機能の他に介護施設やグループホームなどが併設されて施設規模が拡大し、施設災害協力会では人手も少なく責任者も不明確であったため、充分な対応が困難な状況となった。平成12年頃は三宅島の噴火や鳥取県西部地震など全国で自然災害による被害が重なり、行政も自主防災会の設立促進を図っている時期でもあったため、3年をかけて地域住民の防災への関心・理解を深め、施設災害協力会から向町地区自主防災会へ移行することで実効性ある防災活動を実施できる体制を整えた。
 防災にも強い福祉の町を目指し、地域住民の「自助」に止まらず、自主防災会が中心となって地域の災害時要援護者支援という「共助」に力を入れ活動している。

■内容

  • 1. 町立病院、特別養護老人ホーム等の施設との合同避難訓練を実施
     毎年1回、各施設の入院患者や入所者が迅速かつ安全に避難できるよう合同避難訓練を実施する。その際に、施設職員や家族会との事前打ち合わせ会を実施したり、ベッドや車イスでの避難方法を予め学習することで、要援護者の方が安全に避難できるような体制を構築している。訓練終了後も施設内での反省会を通じ更なる対応能力の向上を図っている。
     また、訓練以外でも地区や施設のお祭りに際しては相互に交流活動を実施し、日頃から顔の見える関係を築くことで、緊急時でも円滑な活動ができるよう配慮している。
  • 2. 各種研修を通じたスキルアップ活動
     町主催の防災訓練に参加し地区住民の先頭に立って活動している。また、自助・共助の観点から、自主防災会独自に消防署から講師を招き、救急実技訓練を行っている。(人工呼吸法・AED使用法等)
     県や消防学校等が主催する研修会や講習会に積極的に参加し会員のレベルアップを図っている。
     2年に1回、代表者が他県の自主防災活動先進地域を訪れて防災学習館や防災センター等での研修を受けることで、活動充実のための研鑽を積んでいる。
     地区内に8区ある行政区の中で区独自の防災訓練を行う場合は、向町自主防災会が準備・指導・反省を担当し、地域の防災力の向上を図っている。
  • 3. 冬季防災活動
     冬季においての独自活動として、公民館周辺の除雪を兼ねた排雪救助訓練(雪崩に巻き込まれた場合の人命救助を想定)を地元の小学生も交えて行っている。訓練終了後は公民館において炊き出し訓練を行って終了する。

ストレッチャーの操作確認の模様

居室からの避難の模様

玄関前のスロープを後向きに降り避難する模様

避難口よりスロープを後向きに降り避難する模様

コミュニティ助成事業を使用して整備した防災倉庫

苦労した点

 向町の8行政区で1つの自主防災会を組織するにあたり、地区全域の住民から充分な理解を得るため3年という月日を要したこと。
 地区住民の中には災害は他人事と思っている人もいるため、自主防災会の活動に苦労する場面もある。(地区内の平成21年9月末人口2,149名)

特徴

 現役の町職員や消防団員は防災委員にはなっていないが、訓練では応急救護に力を入れ、全員にヘルメットを貸与して活動するとともに、消防署の指導のもと人工呼吸法・心臓マッサージ・止血法のスキルアップを重点的に行なっている。
 隔年で自主防災活動の先進地域(新潟県小千谷市・岩手県矢巾町・福島県郡山市)を訪れて研修を実施し、自主防災会体制の充実強化につなげている。

団体概要

 自主防災会防災委員として64名が活動している。
 向町地区は1区から8区までの区長が個々の区の代表を務めている中で、向町地区の統括として町内会を組織し、町内会長が自主防災会の会長として全体の指揮を執っている。

実施期間

 平成15年~