第14回防災まちづくり大賞(平成21年度)

【総務大臣賞】あらかわ防災ステーションで防災力アップ』 ~きのくに共育コミュニティー事業の活用~

総務大臣賞(防災情報部門)
『あらかわ防災ステーションで防災力アップ』 ~きのくに共育コミュニティー事業の活用~

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紀の川市立 荒川中学校
(和歌山県紀の川市)

事例の概要

■経緯

 平成20年度から、文部科学省が50億円をかけ全国1800市町村すべてを対象に実施した事業である学校支援地域本部事業について、和歌山県は非常にユニークで尚かつ本随を突く「きのくに共育コミュニティー推進事業」に包含し、特色ある独自の事業を展開し始めた。本校は、この指定を市教育委員会を通じ和歌山県から受け、学校も地域も子どもたちへの関わりを通して共に育っていく元気ある学校づくり・地域づくりを目指すことになった。ちょうどその頃、平成19年度から下準備をしていた荒川中学校防災教育3カ年計画(平成20年度~22年度)と期間が合致したのもあって、この「きのくに共育コミュニティー推進事業」の一つの柱に防災教育を置くことにした。
 そんな折、和歌山大学防災研究教育プロジェクトの今西武准教授のもと、紀の川市教育委員会・桃山地域共育コミュニティー本部・紀の川市防災危機管理消防課・荒川中学校からなる組織をもって、平成20年11月『あらかわ防災ステーション』を立ち上げた。

■内容

 『あらかわ防災ステーション』は、校内放送を活用し、生徒会安全委員会(18名)の生徒たちと共育コミュニティーコーディネーターが地域から選んで学校に紹介いただいた防災ボランティア(学校支援ボランティア)3名が和歌山大学防災研究教育プロジェクトの今西准教授の企画監修のもと、防災放送コンテンツ作りから録音・編集、そして、お昼の給食の時間の“いただきます”に合わせて約5分間程度、トーク番組風の防災教育放送を流すという取組である。平成20年度は、NHK出版「12歳からの被災者学」をベースにしたコンテンツ、平成21年度は、阪神・淡路大震災の被災地神戸市へ生徒と防災ボランティアが取材に出かけ、現地で震災に遭われた人にインタビューし、中学校と校区内2小学校校内放送した。今後は、地域の防災事情を取材し番組を作る予定である。また、平成20年度分の放送原稿を小冊子にし教材化する計画である。

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和歌山大学自主創造センターでの録音

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人と防災未来センター視察

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被災者から話を聞く

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被災者から話を聞く

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第1回収録分の読み合わせ

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被災者から話を聞く

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桃山IT親子センターでの録音

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第1回収録分の読み合わせ

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和歌山大学自主創造センターでの録音

苦労した点

  • 1. 今回の取り組みは、学校の従来からある校内放送を活用したトーク番組風の防災教育放送を目指していたため、既存の学校にある録音機を使用する予定であった。しかし、使用不能であったため職員の中でオーディオの趣味を持っている者から機材を借り、毎回、録音するのが大変であった。
  • 2. 平成20年11月から始まった第1弾『あらかわ防災ステーション』~12歳からの被災者学編~ の44回分の原稿は、すべて防災ボランティアの3名の方々が和歌山大学防災研究教育プロジェクトの今西准教授の指導のもと作成したが本当に大変であった。防災ボランティア3名の頑張りがあって初めて成功できたと感じている。

特徴

  • 1. 12歳からの被災者学(NHK出版)をベースにした第1弾の『あらかわ防災ステーション』の44回分の放送(平成21年1月19日~3月19日実施)は、放送に関わった生徒会安全委員会の子どもたちも、原稿作りから放送収録に関わった地域の大人の防災ボランティアも、そして、生徒の指導に当たった教師自身も番組作りを通して防災の大切さが骨身にしみるくらい理解できた。
  • 2. 従来の教師が教え、生徒が学ぶというどちらかというと一方的な防災教育から、校内放送を活用したトーク風の防災放送番組(あらかわ防災ステーション)を作るという取り組みを通して、番組作りをする側も昼の時間に流れる番組を聴く生徒も教師も共に学び防災力がアップできるという手軽さがこれからの防災教育にぴったりマッチしていると考える。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

今回受賞した荒川中学校は和歌山県紀の川市にあり、全校生徒233名、各学年3クラスの小規模な学校である。学校の周囲には水田も見られ、穏やかな田園都市といった環境の中にある。受賞の対象となった取り組みは、学校と生徒と地域の防災ボランティアが協力して防災に関する情報を収集・整理し、校内放送の番組として生徒の防災意識を高めた活動である。開発したプログラムは、生徒とボランティアが和歌山大学今西武准教授の指導を受けながら、放送原稿を何度も討論して練り直してQ&A形式の5分間のトーク番組を作成し、自らがパーソナリティとなって9週間にわたり計44回、毎昼食時に放送したものである。番組の内容をみると、地震はなぜ起こるのか、揺れているときにはどうするかなどの基本的な地震に関する情報、人が下敷きになったら、どうして火事がすぐに消せなかったのかなどの地震直後の対応、地震後にトイレは使えるか、食事はどうするか、ペットはどうするか、などの地震直後の生活に関する情報、家で準備しておくもの、非常時に頼りになるもの、寝る部屋で気をつけることなどの地震への対応策等が、短時間に完結するように明快に整理されている。台本を読んでみると、優しい会話の中で切迫感がある。この取り組みは中学校が計画していた「防災教育3ヶ年計画」の1年目の事業であり、翌年は地域の危険性のチェック「タウンウオッチング」として生徒50名、教員4名、地域自治会員15名が参加した活動へと発展している。今後は、放送原稿を小冊子にして教材化することや、地域の防災事情を取材して番組も製作する予定があるという。さらに、今後は和歌山放送と提携して、先生と生徒が参加してインターネット放送への取り組みも計画しているとのことである。地域と学校との関係が希薄になっていると言われる現在、この事例は学校と地域がそれぞれの立場で連携・協力し合い防災活動を発展させている事例として高く評価されるものである。

団体概要

構成人員
生徒会安全委員会18名(1年生~3年生)
地域防災ボランティア3名
担当教員3名
和歌山大学研究教育プロジェクト准教授1名
その他、紀の川市教育委員会の支援

全校生徒数233名(平成21年度)、教職員数21名、きのくに共育コミュニティー推進事業の校内コーディネーター1名配置(他2名は学校外に配置)

実施期間

 平成20年11月~