第9回防災まちづくり大賞(平成16年度)

【消防科学総合センタ-理事長賞】世代継続する地震に強いまちづくり

【消防科学総合センタ-理事長賞】世代継続する地震に強いまちづくり

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松島町
(宮城県)

事例の概要

■背景

 一日に震度6弱・強の揺れが3度も生じた宮城県北部地震から1年2ヶ月を迎えようとしている。幸いにも死者は出なかったが、松島町においても公共施設や住宅などに大きな被害を受けた。宮城県沖地震が20年以内に88%の確率で発生するとされており、この地震で明らかとなった課題を早急に解消し、地震に強いまちづくりを進めていかなければならない。

■内容

 松島町は、過去の地震災害の教訓を生かし、地震に強いまちづくりを継続していくためには地域の自主防災組織への若者の参加が必須であると考え、「大人が運営する従来型の自主防災組織」を「若者との協働による組織」へと変換させることとした。これまでの取り組みを紹介する。

  • 1.松島町「世代継続する地震に強いまちづくり」検討委員会
     若者参加型の自主防災組織づくりを推進するため、町内の自主防災会、建築業界、教育委員会及び宮城県既存建築物耐震改修促進協議会(宮城県事務局)会員などをメンバーとする検討委員を設置している。
  • 2.松島町「世代継続する地震に強いまちづくり」実施計画
     若者参加型の自主防災組織の構成を提示するとともに組織が進める「世代継続する地震に強いまちづくり」を実現するための手順(実施計画)を明らかにした。
  • 3.地震防災講師の育成
     学校での授業や町内会などの講習会における地震防災教育の担い手を育成するため「地震防災講師養成マニュアル」を作成し、これに従い第1回地震防災講師育成講習会(延べ3日間)を開催したところ8人の講師が誕生している。
  • 4.松島中学校における耐震診断授業
     町内唯一の中学校である松島中学校において、2年生全員を対象に木造住宅の耐震診断授業を実施した。授業終了後に行ったアンケート調査では、97%の生徒が理解でき、57%が実際に自宅や近所の耐震診断をしてみたいと答えている。
  • 5.自主防災会における耐震診断講習会
     自主防災組織の一つである手樽(テダル)行政区において、地区内の中学生、高校生と大人が一緒に学ぶ木造住宅の耐震診断講習会を実施した。講習会終了後に行ったアンケート調査では、89%の参加者が理解でき、71%が実際に自宅の耐震診断をしてみたいと答えている。今後、他の行政区においても同様の講習会を逐次開催する予定でいる。

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地震防災講師育成講習会

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耐震診断講習会(模型の活用)

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耐震診断講習会

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耐震診断講習会(子供たちの参加)

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耐震診断講習会

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松島中学校での耐震診断の実習

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松島中学校での耐震診断の実習

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松島中学校における耐震診断授業

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松島中学校での耐震診断の実習

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松島中学校における耐震診断授業
(模型の活用)

苦労した点

 平成15年7月26日に発生した宮城県北部地震では、隣接する鹿島台町や鳴瀬町などを中心に、住宅の全壊1,200棟、半壊2,400棟ほかの甚大な被害が発生した。昭和53年の宮城県沖地震から26年を経過し、地震災害に対する防災意識が風化しつつあった今日、震度6強の揺れは全町民の大地震に対する恐怖心を目覚めさせるに十分だった。
 「鉄は熱いうちに打て」の格言に則り、来るべき大地震に対する備えを、如何にして町を挙げて早くスタートさせるかがポイントになった。講師育成講習会及び中学校授業の講師並びに町内会講習会の中心的な講師は、宮城県既存建築物耐震改修促進協議会WGのメンバーが務めた。講義で使用したテキスト、映像資料、掲示資料、模型資料などはいずれも手作りによるもので、仕事や休日を返上してのボランティア参加であったため、個人的な負担は相当なものであったと思われる。

特徴

  • 1.木造住宅の耐震化促進
     人身災害の多くをなす住宅の破損や倒壊を1軒でも減らすことができれば、避難や救助もその分容易になり、さらに被害を小さくすることができる。地震防災の基本は予防対策であり、その予防対策の中心となるのが阪神・淡路大震災でも大きな被害があった木造住宅の耐震化である。住民の殆どが居住するこの木造住宅の改善に、全町民で取り組もうとしている。
  • 2.若者を巻き込む戦略-耐震診断-
     少子高齢化が進む中、若者を自主防災組織に取り込むことが地域防災力の強化・確保に不可欠であるため、若者が参加できる(技術的な知識の取得能力が高く、それを地域のために生かせる)仕掛けが必要であり、それは住宅の耐震診断であった。
  • 3.耐震診断を促す自助、共助、公助
     地震防災対策も自助、共助、公助の連携が重要になる。住宅の耐震化は、自助によるべきものとされているが、その前提となる耐震診断さえ遅々として進まない現状を見るにつけ、直接的な支援でなくとも共助と公助による何らかの支援策は必要である。若者を混じえたボランティアによる耐震診断の代行が「共助」で、その人材育成は「公助」と言える。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 高野 公男(東北芸術工科大学デザイン工学部教授))

 松島町では、地域防災の担い手として中学生が活躍している。学校で防災講習を受けた中学生たちが、授業から得た知識を活用して、地元建築専門家と一緒に地域の木造住宅の簡易耐震診断を行っているのだ。中学生だからといって侮れない。大学の専門教育で習うような防災知識や診断技術を短期間に習得し、大人と混じって実地ボランティアをつとめているというのだから驚きだ。中学生にとって、家屋の耐震設計や診断技術は、興味を呼ぶテーマだったのだろう。厳選されたカリキュラムの内容や模型を使い木造家屋の耐震構造をわかりやすく説明する授業の方法が魅力的だったのかもしれない。このような企画が生まれた背景には、大きな発想の転換があった。地震に強いまちづくりを進めていくためには、地域の自主防災組織への若者の参加が必要である。また、将来の地域防災の担い手として人材を育成するためには子供のうちから防災教育を進めることが大切であろう。そこで、「世代継続する地震に強いまちづくり」という理念の基に、「大人が運営する従来型の自主防災組織」から「若者との協働による組織」への自主防災組織の再構築が試みられた。そして、地元の防災指導者を育成するために、中学生や高校生、自主防災組織を対象にした「地震防災講師育成マニュアル」が作られ、実施プログラムが試行された。社会人の防災講習会では、中学生も混じって講習を受け、中には講師のアシスタントの役割を担う生徒もいるという。このように、中学生が防災学習や耐震診断に参加することで、地域の防災に対する関心は一挙に高まっているようだ。新しい試みは「新しい常識」をつくり出している。「防災教育」は、かつて寺田寅彦(物理学者)が提唱して以来、様々な展開を見ているが、松島町の取り組みは、その歴史に新たな彩りを添えることになるだろう。初心を忘れずに、災害に強い地域文化を育てていって欲しいと願う。

団体概要

  • ・ 松島町行政区数:12行政区
  • ・ 松島町人口:16,653人(65歳以上の人口比22%)
  • ・ 松島町世帯数:5,538世帯
  • ・ 松島町立松島中学校生徒数:469人
      (数字は平成16年9月10日現在)

実施期間

 平成15年~