第13回防災まちづくり大賞(平成20年度)

【総務大臣賞】防災・減災啓発活動「笑って減災 なまず流」

総務大臣賞(一般部門)
防災・減災啓発活動「笑って減災 なまず流」

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たかしま災害支援ボランティアネットワーク「なまず」
(滋賀県高島市)

事例の概要

■経緯

 平成13年3月にグループを結成した。月に1度の定例会は何から始めていいのかわからず、立ち往生の連続であった。せっかく集まったメンバーが1人2人と減りはじめ、このまま自然解散かと思われた。何でもいいから行動しよういう意見でまとまり、チラシによる防災啓発と自分たちの力をつける活動(勉強会・研修会への参加・シュミレーションワークショップなど)から始まった。12回シリーズの全戸配布チラシが6回目となった時、それがほとんどの人の目に止まっていないことがわかった。次の手段として、活動の絞り込みの時点で出ていた劇や漫才に取り組むことになった。台本ができ、役者や漫才師が見つかり、練習と発表を繰り返すことで1つの形ができてきた。そしていざという時、1人ひとりが命を守ることが減災につながるということが認識でき、活動のテーマを災害の起こる前の『備えと構え』と決め、活動の3本柱に沿った取り組みを展開することになった。中でも「備え」の必要性と緊急性を伝えるための『備えと構え』で減災を目指す「笑って減災 なまず流」での地域出前講座は好評でニーズが多い。講演プログラムは全て手作りでしかも対象に合わせた内容を提供するため、今では18項目にもなった。出前講座は県内にとどまらず、近隣府県(大阪・京都・岐阜・福井・愛知)など年間50回に及ぶ。

■内容

 防災・減災啓発活動として『備えと構え』をテーマに対象に合せたプログラムで地域出前講座を行う。(プログラムは依頼者との相談で決める)最近では1回目を防災・減災へのきっかけ作りとして楽しく学ぶ「笑って減災 なまず流」2回目は地域防災力を意識したワークショップ、図上訓練「DIG」「HELP(なまずオリジナル)」3回目を災害発生後の避難時に向けた「いざという時役立つサバイバル術」(住・暖・食などを中心に訓練する)というようにシリーズでの依頼も増えてきた。

「なまず」講演・出前講座プログラム
  • ◇例 その1 90分
    • 1. 防災・減災啓発漫才「備えあれば憂いなし」(他3作品あり)
    • 2. 腹話術「しんちゃんといっしょに備えしような」
    • 3. クイズで防災「クイズで確認減災あれこれ」
    • 4. 大型ロール紙芝居「地震その時 時系列」
    • 5. 歌って確認地域防災力(4種)
      ※120分の場合はビデオで学ぶ地域の助け合い「北淡町の教訓」
  • ◇例 その2 120分
    • A 災害図上訓練「DIG」と応急手当
    • B 救出・救助図上訓練「HELP」とロープワーク
    • 自動体外式除細動器(AED)の使い方……トレーニング用マネキン人形2体、AEDトレーナー所有
  • ◇例 その3 120分
    非常時に役立つサバイバル術
    新聞紙、ごみ袋、牛乳パック等の活用法、サバイバルな食べ物
イベントの開催
災害時帰宅困難者対応「サバイバルウオーク」(5月開催)
阪神・淡路大震災、メモリアルイベント「私たちも1.17は忘れない」(1月開催)

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サバイバル術講習(テント)

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防災・減災啓発漫才

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クイズで防災駅伝

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サバイバル術講習(調理)

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AEDの使い方講座

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紙芝居「地震その時」

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クイズで確認減災あれこれ

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歌って確認地域防災力

苦労した点

 災害という堅く、重たいテーマ(分野)を対象に合せて、いかにわかりやすく伝え、「備えと構え」の実行につなげるかという点で工夫が必要になる。特に参加者がお年寄り、子供たち、男性が多い自治会等それぞれに内容や方法をアレンジしなければならないため、資料作りや道具の製作が大変である。
 また、メンバーは個々に仕事を持ち、「なまず」以外の活動にも参加している人が多く、講演依頼が増えていく中で調整が難しい場合がある。出前講座だけでなく、年間に開催するイベントや訓練に対する企画から準備、運営に向けての時間の確保もしなければならない。
 災害はいつ起こるかわからない、終結の時期が決まっていないことから、この活動を継続すること(特に気持ちの継続)の難しさを感じる。それに対して、自分たちがやっていて楽しいというクラブ活動的要素が必要となる。

特徴

 地域防災学習会、出前講座ではできるだけ対象者全員参加型を心がけている。防災・減災に対して一番大切で、いちばんできていないのが個人の「備え」であり、話を聞くだけの一方通行では、意識の向上や「備え」の実行に至らないことが多いと感じるからである。見る、聞くといった受身の「防災」ではなく参加することで、より災害を意識し、防災・減災への「備え」の実行ができると考える。今では災害といったイメージ通りの重さや暗さ、悲壮感を感じさせず、楽しく身近に受け止め、学び、行動につなげるというスタイルができた。この自治会単位の出前型の学習会や、講座はエプロンで手を拭きながらでも集まれるという気安さがあり、これこそがいざという時に機能する地域防災力を共有する場でもあると実感する。
 そして、災害の起こる前の「備えと構え」で減災を目指す活動においては「なまず」のメンバー一人ひとりが個性、特性を生かし、自分にできることをそれぞれのポジションでパートリーダー的役割を果たしながら、楽しく真剣に取り組んでいることが特徴なのかもしれない。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 室﨑 益輝(関西学院大学総合政策学部教授))

 身近なコミュニティの防災意識啓発のために、これほど多種多様な活動を展開している市民団体をみたことがない。その意識啓発の取り組みは、従来の防災教育の枠を打ち破った独創的なもので、サバイバルウォークなどの訓練イベントに加えて、演劇、腹話術、漫才、紙芝居などの舞台イベント、さらにはクイズやゲームなどの学習イベントなど、その内容は多彩である。ここで注目されるのは、それらのイベントのレベルがプロ級だということである。漫才はそのまま吉本の舞台に立てる、カードゲームはそのまま特許が取れるほどの腕前で、その企画力と演技力に敬服する。ところで、この素晴らしい活動は、市民に防災の大切さや防災の知恵を伝えたいという、メンバーの熱い思いが源泉となっている。その思いが、次々とアイディアを生みだすとともに、出前講座というかたちでの地域活動につながっているのである。その結果として、コミュニティの防災力向上という実績につながっているのが、何よりも素晴らしい。

団体概要

阪神・淡路大震災をきっかけにその後の鳥取県西部地震、芸予地震発生で「明日は我が身」との危機感を募らせた地域住民が集まって災害ボランティアグループを結成。活動のテーマを災害の起こる前の『備えと構え』と決め、防災啓発活動を行っている。

≪活動の3本柱≫

  • 1. 防災・減災啓発活動
  • 2. 災害ボランティアとしての力をつける活動
  • 3. 被災地への救援・支援活動
  • 会員28名(男性12名 女性16名) 平成13年3月~

実施期間

 平成14年~