語り部の体験紹介コーナー

東日本大震災の被災者からのメッセージです。

Tさん(夫婦)

母と四男の息子

 あの日、私達夫婦は浸水しなかった地区の会社にそれぞれいて、ここにいる子供達は学校に避難して無事でした。しかし母と四男は…。

「ちょっと行ってくるから」と

家に戻ったらしい


 阿武隈川の亘理大橋のたもとにある我が家にいた母も、2才だった四男をおぶって、早足で歩いて5分の荒浜小学校に避難していました。母は、停電で避難所も夜は暗くなる事を知り、懐中電灯と四男の食べ物を取りに「ちょっと行ってくるから」と知人に声をかけ、家に戻ったらしいのです。

 家は海岸からは2㎞ほど離れていたのですが、川を溯った津波が大橋の橋桁にぶつかり、溢れて堤防を越えた波が我が家を直撃し、一瞬で我が家を土台からもぎ取りました。

 引き波で戻されたのか、それとも必死に泳いだのか、母と四男の息子の遺体は避難所の近くで発見されました。


 (平成25年10月)