平成2年6月22日イラン地震災害

イランの建物の構造について

イラン地震災害

はじめに イラン地震被害の状況
国際消防救助隊の構成と携行資機材
行動日程 救助活動 各国救助隊の様子
イランの建物の構造について
総括官日誌による補足(1) (2) (3) (4) (5)

6 イランの建物の構造について

イランの建物が地震に弱いのは、一言で言えば「大部分の建物がレンガでできているから」であるが、建物の構法を良く観察するとそう単純ではない。

  • (1) H型鋼で柱、梁に相当する部分に枠を造ってその間に一重にレンガを積んでいき、これによって2~5階建て(筆者の見た中では7階のものもあった)くらい平気で造ってしまう都市型の構法

  • (2) 世界各地で見られる典型的な(無筋の)レンガ造
  • (3) 公共建物などに見られるRC造とレンガ造の混合構造
  • (4) 山岳地帯などで見られる乾燥地帯の伝統的な構法で、質の悪いレンガをモルタルや粘土でつないで分厚い壁を造り、床や屋根も重い粘土で造る構法

など様々であり、都市化の程度や気候条件、材料の手に入りやすさなどに従ってこれらの構法が様々な比率をとっているのである。
(3)を除くこれらのどの構法も、地震による水平力を考慮していないだけでなく粘りのある構造になっていないので、震度4~5程度で相当程度壊れてしまうし、一部分が壊れただけで建物全体の崩壊につながってしまう。崖崩れの状況等から震度6~7程度はあったのではないかと推定されるルードバールやマンジールおよびその近辺の町の建物がほとんど完全に潰れてしまっているのも当然といえようか。
(3)の構法は、耐震壁を入れ、十分な太さの柱や梁と十分な量の鉄筋を入れれば耐震構造になりうるし、レンガで造る壁の部分にも鉄筋を入れれば文句のない耐震構法である。現に無傷の公共建物もあり、そのような造り方をしているのではないかと思われるが、全体としては、耐震壁もなく、柱・梁も細く鉄筋の量も少ないものが大半で、大きな被害を出していた。