7.三宅区火の見やぐら、同火の見やぐら倉庫
福井県遠敷郡上中町三宅地区は、上中町の中心である市場地区から東に1kmの九里半街道(通称 若狭街道 鯖街道)沿いに位置し、早くから市が開かれるなど、中世以来栄えた地区です。同地区街道沿いの田んぼの中にそびえる火の見やぐらは、農家の点在する三宅地区のシンボルとなっています。
この火の見やぐらは愛宕地蔵を祭る地蔵堂の東側妻屋根上に、梵鐘を持った櫓をのせた独特の形が特徴です。地蔵堂は正側面とも三間(約5.5m)の切妻造桟瓦葺。正面に一間の向拝を持った小さなお堂です。建設年代は不詳ですが、地蔵堂は梁に描かれた絵などから江戸時代前期から中期と考えられています。
櫓は地蔵堂の屋根上に増築された簡素なもので、三宅の大火があった天保七(一八三六)年からほどなく造られたものと考えられます。櫓は地蔵堂の妻壁に沿って、直径十八センチから二十二センチの丸太を二本立てて梯子を造り、その丸太と地蔵堂の棟木と母屋上に立てられた二本の角柱で切妻造桟瓦葺の屋根を支え、目板羽目の袴腰を四周に廻したものです。この増築方法は地蔵堂を傷めることのないすばらしい建築法と評価されています。
この火の見やぐら東側は二度にわたって増築が行われ、祭事用具などの地区共有の倉庫となっております。南側の増築部は古材を転用して造られており、昭和初期のものと推定されています。曲がった形状をそのまま利用した木材で庇を支え、櫓の工法とともに工夫のあとが見られます。
このように、火の見やぐらは集落の信仰を集めた地蔵堂の上部に櫓をのせた独特の携帯を示し集落のシンボルともなっている建築として、他に類を見ない貴重な建物です。
参考文献「福井県の近代化遺産」福井県教育委員会 一九九九年
「グラフフクイ」2002年11月号「ふくいグラフ」より転載