6.本能寺の「火伏せのイチョウ」(京都府京都市)
18万の家屋が焼失した歴史的大火災、天明の大火(1788年)のときのこと、本能寺境内の大きなイチョウの木の下には、逃げ場を失った数十人が身を寄せ合っていました。無慈悲にも炎は、寺全体を呑み込む勢いで迫ってきます。全員がまぶたを閉じて「もはやここまで」と観念したその瞬間、大きな木が勢いよく水を噴き上げるではありませんか。信じられないことに数十人は、この水のおかげでやけど1つ負わずに助かったとか。以来、この木は「火伏せのイチョウ」として大切に奉られるようになりました。
「水を噴く」ことの真偽はさておき、実際に、イチョウ、サンゴジュ、シイ、カシ、ナラ、モチノキ、ツバキ、サザンカ等の樹木は枝葉に含む豊富な水分で火を防ぐことはよく知られています。木々の緑は美しいだけでなく防火の役割も果たしてくれていたのです。