平成11年9月21日台湾地震災害

個別活動状況(1)

台湾地震災害

地震の概要 被害状況 派遣要請 派遣期間等
派遣隊員等 活動概要 主な救助活動資器材
検索活動状況 活動完了 派遣別の内訳
個別活動状況(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
今回の派遣の特徴

11. 個別活動状況

(1) 9月21日・22日 現地入りから台北県、南投県での活動

 第1及び第2中隊は、21日夕刻、羽田空港及び成田空港から相次いで出発し、台湾北西部の中正国際空港に現地時間20時50分及び22時09分(日本との時差は-1時間)にそれぞれ到着後、バス、トラックで台北県新荘市に向かった。すでに先遣隊が21日夕方に現地入りし、台湾政府から地震による各地の被害状況、日本救助チームによる救助活動を必要とする場所等について情報収集に当たっており、これらの情報と台湾政府からの要請に基づいて日本隊が救助活動を展開することとなった。

中正国際空港に到着した第1次派遣隊

移動に使用したバス

 日本を出発して同日の深夜23時には、台北県新荘市民安街マンション倒壊現場(耐火12/2)で第1中隊が早くも最初の救助活動を開始した。また、この現場から第1中隊の隊員10名が、台北市内の松山ホテル倒壊現場に転戦(耐火12/2)し、地元消防隊による消火活動の最中、目視検索等の活動を行った。
 22日1時30分、第2中隊も新荘市民安街に到着、第1中隊2・3小隊と合流し、深夜6時間に及ぶ検索活動を実施した。民安街マンションは1階から3階が座屈し、4階から上階が倒壊した現場であり、ボーカメ等による検索箇所10ヶ所、シリウスによる3ヶ所の人命探査を行ったが要救助者を発見、救出することはできなかった。
 この現場での活動中、22日深夜、台湾政府から「日本隊は震源に近く被害の大きい南投県へ全隊転戦されたい。」旨の要請を受けたことから、松山ホテルで活動中の第1中隊1小隊を本隊に帰着させ、5時10分民安街マンションでの救助活動を完了し、即刻、南投県に向かった。
 今回の地震は、建物倒壊等の被害が集中的に起こっているものではなく、広い地域に分散、かつ数多く点在していること、また、主要な道路にも大きな地割れや段差が生じており、橋が倒壊し寸断された場所も数多くあることなど、地震被害の甚大さが判明し今後の救助現場の困難性が強く認められた。隊員と資機材を乗せたバスとトラックは、大きな段差のできた場所を何ヶ所も超低速で車体を前後左右に大きく揺らせながら通過し、一路、南投県を目指した。この様な道路状況のため各所でひどい交通渋滞が発生し、県の災害対策本部のある草屯市に到着したのは22日の8時過ぎであった。
 同時期、日本では、第三次派遣隊(第3中隊)が成田空港を出発(22日9時04分)していた。第3中隊は現地時間11時20分に中正国際空港に到着し、1・2中隊が先行している同じ南投県を目指すこととなった。

被災現場に到着した第一次派遣隊(第1中隊)

第三次派遣隊(第3中隊)成田出発

 第1・2中隊は、南投県災害対策本部からの要請に基づき、南投県(プーリー)鎮内でマンションや共同住宅の倒壊現場において終日、救助活動を展開した。この活動の中で全ての階が座屈した耐火3階建て住宅、並びに1階が座屈し2階以上が倒壊しかかった耐火4階建て共同住宅から、それぞれ女性1名づつを発見、救出したが、いずれも死亡していた。夕方、(プーリー)鎮内での活動を終了し、再度、南投県災害対策本部に出向き、以降の救助活動について本部の要請を受けることとなった。
 一方、第3中隊は、現地時間20時に南投県中寮郷に入り、直ちに救助活動を開始した。2棟の倒壊した4階建て住宅を皮切りに、1、2階の座屈した4階建て住宅、1階が座屈した4階建て共同住宅等、計6ヶ所の建物倒壊現場で懸命な検索救助活動を行い、23日3時30分の活動終了までにおいて、男性2名、女性1名を発見・救出した(いずれも死亡)。本隊と未だ合流できていない第3中隊は、中隊単独での活動を余儀なくされたが、22日深夜1中隊2・3小隊からの応援出場を受けるまで、救助資機材が不足の中、地元レスキュー専門ボランティア等と連携し、資機材の現地調達を図りながら、小隊ごと、あるいはその半分ごとに転戦を繰り返すなど、極めて効率的な救助活動を展開した。現場引き揚げ後、第3中隊も宿泊場所となった「南投県職員研修センター」に到着し、ここで初めて全隊合流の形となった。

第三次派遣隊中正国際空港到着

全隊が合流した南投県職員研修センター

 21日、22日の活動現場は、いずれも耐火構造のマンション、共同住宅等で1、2階という下階が座屈し、上階が倒壊したものであり、下階の床と上階の床の隙間が数10cmという、逃げ遅れた者の生存の可能性は非常に厳しい状況であった。また、震災直後から地元ボランティアや当局の手により、多数の逃げ遅れ者の救出、避難誘導が積極果敢に行われたことから、残された手付かずの救助現場は、日本の救助チームにとっても非常に活動困難性の高い現場が多かった。

台北県新荘市内マンション倒壊現場での活動

台北市倒壊現場での地元消防隊の消火活動状況

(プーリー)鎮内マンション住宅倒壊現場

(プーリー)鎮内4階建て共同住宅倒壊現場で女性1名を発見・救出(死亡)