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【総務大臣賞】ラジオ放送活動「17日は節目の日」〜いのちを守るラジオ防災!〜

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山口放送株式会社
(山口県周南市)

事例の概要

 阪神淡路大震災から丸10年。山ロ放送ラジオ「朝ワイド・おはようKRY」の防災への取り組みも10年が経過、まもなく11年の歳月を刻む。
 今から10年前「阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)」は起こった。震災直後から、山口放送ラジオでは災害への取り組みを開始。そして、毎月17日を「大震災の節目の日」として「震災と防災」に焦点を当てた放送活動を継続してきた。
 まず「活動」は、地震発生2日後から。朝ワイド内で『神戸に毛布を送ろう!』と呼びかけ、リスナーから寄せられた「2000枚の毛布」及び「水や食料」を、2台の大型トラックで神戸に送り届けたのが契機となった。
 一方、「防災の取り組み」は、毎月17日放送の「震災コラム」が柱となってきた。「震災コラム」は、地震発生3日目に被災した神戸に徒歩で入り、現地取材の内容をコラム化したのを機に始まった。特集で放送したコラムは反響を呼び継続へ。スタッフの防災意識向上のきっかけとなる……。
 また、毎月17日に必ず放送する「阪神淡路大震災17日は節目の日」の取り組みは、地震発生3ヶ月後の平成7年4月17日からスタ−トさせた。日本の防災神話が崩れた1月17日を重く受け止め、この「17日」を「震災の教訓の日」とし、丸10年余り、「災害の地の取材」と「震災と防災のコラム」を紹介し続けている。月に一度、リスナーとの双方向で、「被災とは?」「これからの防災とは?」を考え、情報交換する番組となった。
 コラムの内容は、当初「仮設住宅・消防の態勢・公的支援・救急医療・在日外国人高齢者孤独死……」等の問題から、「助け合い・あいさつ・家族・地域・住宅・時として起こる被災者同士のいさかいやボランティアの悩み・PTSD……」まで、政治的問題に加え、美談や苦悩の「人間ドラマ」が中心だったが、取材を重ね、そしてリスナーの防災意識向上と共に、専門家の意見も積極的に伝える中、後にこのコラムは、地震以外の「自然災害(台風・集中豪雨・高潮等)」に関する情報と備えを伝える役割も担うようになる。
 放送した「震災と防災のコラム」の数は10年余りで200本を数え、17日以外で放送した「自然災害と防災のコラム」を合わせると300本を超える。取材した人々の数は2000人に上り、寄せられた反響は、電話・ファックス・メ−ルで3500件に至る。被災者ネットワ−ク、ボランティア団体、消防、病院、役場関係者等、多くの機関に協力頂き「独自アンケ−ト調査」や「追跡リポ−ト」も可能とさせて頂いた。神戸・淡路との防災ネットワ−クづくりも、年を重ねるにつれ、より密なる関係確立へ。リスナ−は自ら「防災に強い、やまぐちのリスナ−」を目指し始め、自主防災への意識を開花させた。
 尚、この10年の「17日の節目の日」は、山口放送ラジオの「ラジオ災害報道」の基礎づくりともなり、「ラジオ災害報道マニュアル」の見直しを促した。県内はもちろん、県外の防災機関及び関係者との日常的な連絡・連携は、日々の災害報道への瞬発力となっている。
 10年目の活動では、山ロ放送本社に消防・防災・医療関係者や専門家が集い、リスナーを募った「いのちを守る!ラジオ防災スペシャル」を開催した。柱のひとつはラジオ公開生放送。ラジオで体験「大地震・ビル火災・津波…等」の恐怖音で災害シミュレーション。専門家たちによる「防災の知識」と「心の備えの徹底」を伝えた。2つ目の柱は「防災訓練」。山口放送前庭を「防災訓練会場」とし、社屋も開放しての、この「防災イベント」は、民間放送局としては初めての試みとなった。一般リスナーの来場者と、消防・救急医療関係者とのふれあいを大切にしたこのイベントには、山口放送アナウンサーも全員参加で取り組んだ。子供も大人も若者も高齢者も障害者も「共に防災訓練する!学ぶ!備える!命を守り合う!」をテーマとした。

<経過>
 ・ 平成7年1月17日、阪神淡路大震災発生。「毛布を神戸に!」及び「震災・防災コラム」スタート。
 ・ 3か月後、毎月放送「阪神淡路大震災17日は節目の日」始まる。双方向で震災と防災を考える場として反響。
 ・ 1年後、平成8年1月17日からは「阪神淡路大震災1・17特集」開始。年に1度『大きな節目』の特別コラム週間や地震特集、専門家の意見発表等。さらに「9・1防災の日コラム」や「9・9救急の日コラム」での取材と防災PR開始。毎年放送、継続へ。
 ・ 3年後から、阪神・淡路の関係機関とのネットワーク確立へ。県内外の防災関係者との繋がり強化。阪神・淡路大震災の1年前に起こった「ロサンゼルス大地震」の検証など、海外の防災情報も伝え始め、ローカルの枠を越えて、必要な防災知識を伝えることを徹底。
 ・ 平成12年、山口県「芸予地震」に見舞われる(震度3〜5)。震源地・広島の県消防防災課やボランティアセンターの協力を得て、現地密着。耐震住宅の専門家たちが放送に加わる。
 ・ 神戸の新聞記者や淡路震災公園職員らの生出演がスタート。震災の風化を恐れる声が高まる。
 ・ 平成13年、台風大型化か?温暖化による台風の大型化を懸念。地震の他あらゆる自然災害への備えを促す放送を開始。
 ・ 平成13年、県内108か所のガソリンスタンドとの情報ネットワーク作り。地震に強いガソリンスタンドの情報収集シミュレーションでマニュアル作成。
 ・ 平成14年、神戸新聞に活動が紹介され、地元神戸から反響。神戸「FMわいわい」からアプローチを受け、「神戸のFMと山口のAM」初の生放送でのクロストーク、「おはようKRY」が神戸に流れる。これを機にイギリスBBC等海外のメディアとの関係が生まれ、県内外・国内外の枠を越えて防災ネットワーク築く。
 ・ 平成15年「1・17特番」丸9年の夜……被災経験を持つ中谷アナの「神戸入り生リポート」開始。恒例に。今なお存在する悲しみの声、一方元気な声の伝え手となる。
 ・ 平成16年「新潟県中越地震」「スマトラ沖地震」発生。現地を結ぶ放送。山口のリスナー、山間部地震と津波に恐怖。山間住民、沿岸住民への備え促す放送強化。町や村との防災安全課との連携。自主防災組織との情報交換に努める……等。

玄海島取材(海に出ることのない漁船) 防災グッズコーナー
「防災スペシャル」会場挨拶 「防災スペシャル」会場(山口放送前庭)
AED講習を受ける家族 玄海島取材(家の倒壊)
玄海島取材(地割れの様子) 玄海島取材(被災した島の様子)
会場に訪れたちびっ子

苦労した点

 当初「17日」の放送を重ねていく中、「山口県に地震は来ない」「被災者の声や防災論議に飽きた!」「来もしない地震への恐怖をあおるな!」「地震発生に根拠なし!」との声に悩んだ。また、「精神的にも物理的にも」遠く離れた神戸や淡路の復興を追うには「無理がないか?」との声や「日本の災害」を山口県の「地元のラジオ」が扱うのは「テ−マが大きすぎないか」との声もあった。しかし、「大地震は必ず来る!」「地球温暖化で台風は大型化する!」という懸念を捨てずに活動を続けた。更に、「マスコミは行政を批判するもの」という指摘もある。放送の専門家たちには、今なお、マスコミが行政に協力し、消防や医療を支援・協力するスタンスを嫌う傾向がある。マスコミと行政の位置付けや関係を根底から変えて、人々にとって何が必要な情報で行動かを見定めるために、行政との新しい関係は不可欠だ。県消防防災課や県防災専門部会、消防学校との協力体制を築くまでに、内外の理解を求め続けなければならなかった。

委員のコメント(防災まちづくり大賞選定委員 福嶋 司(東京農工大学農学部教授))

 住民の安全を守る防災情報は正確さときめ細かさが大切である。災害時にラジオ放送の果たす役割は特に大きいことをしっかりと認識し、息長く防災の備えの大切さを訴え続けている番組が山口放送にある。これはラジオ朝ワイド「おはようKRY」であり、その番組中の「コラム」でキャンペーンを続けている。この番組では平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災に因んで、毎月17日を「17日は節目の日」として、震災の教訓を考える1日としている。これは新たな毎月の「防災の日」の制定である。
 番組プロテューサーの清水さんは、毎月神戸へ足を運び、さまざまな角度からの取材を続けている。氏によれば、震災を受けた神戸には多くの問題が凝縮しており、それは地震発生後にどこにでも起こる問題であるという。問題の一つひとつを解きながら、山口にも必ず地震はやってくる。その時に防災の知識があれば命を守れることを番組は熱心に訴え続けている。訪問した当日、録音放送を聞くことができ、アナウンス部の勝津氏に放送を再現していただいた。その臨場感はラジオでしか表現できない迫力のあるものであった。プロデューサー・編成・パーソナリティーの方々にも話を伺うことができた。全員が防災全般についての深い知識と情報を豊富に持っていること、チームワークの良いことを感じた。防災という一つの目的でお互いの信頼関係が築かれた結果であろう。
 スタートから11年になる息の長いこの活動によって、自治体や消防署との協力関係もしっかりと構築されている。特筆したいのは、その関係を生かして消防・市民・放送が連携した訓練・イベントを放送局主導で行っていることである。訓練当日は、ラジオ防災スペシャルとして特別番組を編成し、公開生放送と山口放送の社屋を中心として訓練を行っているという。赤尾社長も防災の取り組みについては熱心で、「おはようKRY」の取り組みとスタッフの努力を高く評価し、県民が安心できる報道を今後も提供し続けたいと熱っぽく話された。
 このように、山口放送は地元の放送局としての使命と責任を意識して、構成員が一丸となって地域に密着した防災活動を展開している。その取り組みはすばらしく、他の都道府県の放送局への見本となるものである。今後の、「おはようKRY」の息の長い活動を期待したい。

団体概要

・ 民間放送事業者、ラジオ・テレビ兼営局
・ ラジオ開局昭和31年、テレビ開局昭和34年
・ 従業員数131名(うちラジオ局員22名)

実施期間

 平成7年〜