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チリ地震津波40周年事業「防災シンポジウム」津波対策はどこまで進んでいるか




大船渡市(岩手県)



事例の内容

<経緯>
 昭和35年5月24日、南米チリ沖を震源とするマグニチュード8.3の地震による津波が日本沿岸に到達し、国内では、三陸沿岸を中心に死者、行方不明者合わせて142人という大災害となった。
 このチリ地震津波により、大船渡市は、死者・行方不明者あわせて53名、被害額が当時の金額で約80億円にのぼり、全国最大の被災地となったところである。
 その後、津波に対する国際的な津波警報組織が確立されるとともに、日本沿岸でも海底地震観測システムや津波の監視・観測体制の整備が進んでいる。
 一方、三陸沿岸被災地では、防波堤や防潮堤の建設、防災無線の整備、地域防災計画の策定、地域ぐるみでの避難訓練の実施、自主防災組織の結成等、ハード・ソフト両面での防災対策を推進している。
 しかし、40年の経過とともに、津波体験の風化や避難訓練参加者の伸び悩みなどが見られるようになってきている。
 こうしたことから、シンポジウムを開催することにより、津波予知に向けた監視観測体制の現状と課題、防災意識の風化を防ぐための対策等について広く討論し、三陸沿岸の津波防災のあり方を考えようとしたものである。参加対象は一般市民、自主防災組織、防災関係機関及び三陸沿岸自治体関係者等とし、運輸省第二港湾建設局及び岩手県を始めとする国・県関係機関と新聞社等報道機関の後援により、開催に至った。さらに、シンポジウムの模様を全国放映するため、運営にはNHK関連会社の協力を得て、5月24日のチリ地震津波来襲日に合わせて事業を実施した。

<内容>
 当日(平成12年5月24日)は、午後1時30分に開会し、甘竹勝郎大船渡市長のあいさつの後、首藤伸夫岩手県立大学教授が「津波研究の現状と市民防災の課題」と題して基調講演を行った。引き続き、伊藤和明文教大学教授をコーディネーターに、甘竹市長、首藤教授の他、高梨成子防災&情報研究所代表、前田憲二仙台管区気象台地震情報官、作家・津波研究家の山下文男氏の5名がパネリストとなり、1時間40分にわたりパネルディスカッションが行われ、午後4時10分に閉会した。
 基調講演による首藤教授の「早くから防災教育を徹底し、津波に強いまちづくりに取り組むべきだ」との呼びかけやパネルディスカッションを通じて、参加者は世界の最先端を歩む日本の津波防災体制に理解を深めた。さらに、予知技術だけでは防ぐことができない津波被害の恐怖を再認識した。
 なお、当日は会場内で「チリ地震津波被災写真展」を開催するとともに、入場者には「大船渡市津波浸水図」を配布し、防災意識の高揚を図った。
 このシンポジウムの模様は、NHKテレビを通じて、平成12年5月26日と6月24日に東北及び全国向けに放映され反響を呼んだ。

<特色>
 今回のシンポジウムは、大船渡市がチリ地震津波40周年事業として計画した「防災・津波訓練」、「津波犠牲者追悼式」、「チリ地震津波写真展」等関連の主要事業として実施したものである。
 企画の段階から一般市民及び消防等防災関係機関、さらには三陸沿岸関係自治体等からも関心が寄せられ、320名の参加者となった。また、テレビ放映によって、当市の防災対策に関する問い合わせが寄せられたり、関係自治体からの行政視察や、自主防災組織結成促進の機運が高まるなど、様々な面から津波防災の現状と課題について理解を深める機会となった。



基調講演

パネルディスカッション



写真展

当時の被害状況



大船渡市津波浸水図



苦労・成功のポイント

<苦労した点>
 このシンポジウムは、チリ地震津波40周年の節目に相応しい事業、さらに全国最大の被災地である当市からの情報発信に繋がる事業を企画するということからはじまったものである。平成12年5月21日(日)早朝の「防災・津波訓練」、5月24日(水)の「津波犠牲者追悼式」などとの開催日程の調整や関係者が重複することに伴う参加者の確保が心配された。これらに対して、市の広報や報道機関等を活用したPR活動の徹底を図り、消防団や自主防災組織に対しては節目の年の事業であるため協力と参加を強く働きかけた。

<成功した点>
 事前の対応と各関係者の協力により、300名を超える参加者があった。40年前を思い起こしながら、今後の津波防災への備えを固めるに当たっての課題等について、市民はもとより、広く三陸沿岸自治体関係者等と共有できる機会となった。



成果・展望

<成果>
 第一線の津波研究者等の発言を通して、最新の国際的な津波対策の現状が認識された。また、津波防災対策に終わりはなく、津波情報の共有化を図るための三陸沿岸自治体間のネットワーク化の必要性などについても認識されることとなった。

<展望>
 今回のシンポジウムを契機に、当市内沿岸部の津波避難場所に通じる案内標識の増設、防潮堤や防災無線などの施設整備の重要性が広く認識された。あわせて、住民の隣保協同の精神による自主防災活動の推進が求められたことから、当市においては自主防災組織の結成拡大の機運が高まっている。



実施期間

 平成12年5月24日



事業費

 2,730,000円